リサーチ

2021.12.27

2021年ビジネスパーソンが選んだ今年の漢字

コロナ禍2年目、昨年度との変化は?

日本漢字能力検定協会が毎年清水寺で発表する「今年の漢字」、2021年は東京オリンピックの開催もあり、『金』の文字が選ばれた。では、COVID-19感染拡大から2年目となる今年、ビジネスパーソンはどんな思いを抱いたのか。コクヨでは昨年に引き続きビジネスパーソン約300名に向けて「今年の自社を漢字1文字で表すと?」という質問を投げてみた。得られた結果について、ワークスタイルイノベーション部でコンサルタントを務める河内律子が解説する。

1位「変」、2位「耐」
それぞれに込められた複合的な意味

トップには昨年度と同じく『変』が選ばれました。ただ昨年度はCOVID-19に翻弄されて半強制的に『変』わらざるを得ない状況だったのに対し、今年は「合併や新部署の新設などいろいろと変化があった」「ペーパーレスやテレワークなどの変化が一気に進んだ」など、環境変化を受けて意識的に変革を進めたことを選定理由に挙げている声が見られました。

『耐』は「コロナの収束まで我慢が必要」「業績悪化もあったが耐え忍んだ」といった、会社も自分たちも引き続き我慢が求められたという声が大半でした。ただ、「コロナ禍で状況が日々変わる中、ある程度の結果を出せた」という声もあり、この状況の中でもなんとか耐えきれたことをポジティブに受け止めているビジネスパーソンいました。

そのほかに特徴的だった漢字を紹介します。『乱』(6位)が挙げられた背景には「いろいろと混乱した」「コロナ対策の影響で仕事の方針や方法が大きく変化し乱れた」など、会社が変化に対応しきれずに戸惑う様子が見られました。
また今年の象徴的なものとして『金』(3位)がこちらでも選ばれており、「東京オリンピックが強い印象」という声や、大谷翔平選手や藤井聡太竜王の活躍などの金字塔が印象に残る一方で、「お金がたくさん出て行った年だったから」と「お金」の意味で選んでいる声も多く見られました。

昨年度に比べてもう少しポジティブなワードが増えるのではないかと想定していましたが、 変化に対応できている会社・業界と、まだまだ忍耐の時期が続いている会社・業界が混在している状態なのだということが感じられる結果となりました。

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来年に期待する漢字は「変」「進」「金」
3つの「変」のニュアンスの変化

来年の自社に期待する漢字についても質問してみたところ、こちらでもトップに上がったのは『変』でした。

2020年の半強制的な『変』化から、2021年はギリギリのところで耐えしのぎ、ワクチン接種も進んで感染者数は大幅に減少。緊急事態宣言も解除され収束に向けた希望が少し見えてきたところで、この働き方が日常的になるよう『変』革が進められてきました。

そんな空気感の中で迎える2022年は「どのような状況変化にも柔軟に対応できるようになってほしい」「今以上に変革させてほしい」「働き方への変革を希望」など、さらに『変』革を進め、好転させていくことへの期待の声が多く見られました。
また、うまく変化に対応しきれていない会社の場合は「さすがに変わらないと」というビジネスパーソンの危機意識があるのかもしれません。

同様に『新』や『進』が挙げられた背景には、「コロナの苦しみから脱却して飛躍してほしい」「進化・前進してほしい」や、「新しいことへのチャレンジ」「新規事業開拓に期待」「先進的なことにも積極的に取り組む方向へシフトしてほしい」など、鬱積した状況を打破してさらに前進していきたい思いが読み取れます。

同じく多かったのが「金」。これは「給料が上がってほしい」「収益アップ」といった緊急事態の中で耐え忍んできたけれどそろそろ成果を出していきたい、日本経済を回していかないといけないという心情が見て取れました。

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アフターコロナも期待される
働き方改革のさらなる推進

「COVID-19感染防止策としての働き方の定着度とその期待」についての質問で、ZoomやMeet、Teamsといった「オンライン会議ツール」と「テレワーク」は恒常的な働き方として定着したと回答した割合が多く、また50%以上がその働き方の定着を好意的に受け取っていることがわかりました。
一方、「ペーパーレス会議」や「オンライン上の経理処理」は定着度が高くなく、業務プロセス改革は道半ばという状況のようです。きっかけはコロナ禍だったとしても、コロナ収束後においても元に戻すのではなく推進していく、変わらなければならないのだというビジネスパーソンの意識の変化が今年の大きな特徴であると言えそうです。

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この1年、勤務している企業やご自分の業界に対して、昨年度からどんな変化があり、どんな思いをもったでしょうか。漢字1文字で表現してみると、仕事や働き方に期待することがより明確になるかもしれません。


調査概要

実施日:2021.12.14-16実施

調査対象:社員数500人以上の企業に勤めているワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件(予備調査5,000件)

【図版出典】Small Survey「2021年振り返り」


河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

文/中原絵里子