リサーチ

2021.12.24

進む人口減少、増える単身世帯。国勢調査結果に見る日本の現状

首都圏に人口集中、65歳以上の4人に1人は現役

2020年に実施された国勢調査の「人口等基本集計結果」が2021年11月30日に発表された。結果をもとに日本の人口や世帯、住居に関する現状・課題を考察する。
※『令和2年国勢調査』は、総務省統計局が2020年10月に「国内に常在している者」を対象に行った。

総人口は2015年から約95万人減少
15歳未満人口の割合は世界最低水準

「令和2年国勢調査結果」によると、2020年10月1日現在の日本の総人口は1億2614 万6099人で、前回調査(2015年)から94万8646人減少した。

前回調査では、1920年の調査開始以降初めての人口減少となったが、今回も引き続き減少。減少率を見ると、2010年〜2015年で0.8%減、2015年〜2020年で0.7%減とわずかに緩やかになっていた。なお、この5年間は年平均0.15%減少している。

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減少が著しいのが15歳未満人口で、前回調査から91万9040人減。減少率にすると5.8%だった。15歳未満人口は1980年調査の2750万7078人をピークに減少の一途をたどっており、少子化に歯止めがかからない状況と言えるだろう。
総人口に占める割合(11.9%)も、諸外国と比べると、韓国(12.5%)やイタリア(13.0%)よりも低く、世界最低水準となっている。

なお、年齢別の総人口に占める割合は、15 歳未満人口は11.9%(前回12.6%)、15~64 歳人口は59.5%(同60.9%)、65 歳以上人口は28.6%(同26.6%)だった。

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15〜64歳以下の生産年齢人口は
ピーク時に比べて13.9%減

15歳未満人口のみならず、生産年齢人口とされる15〜64歳以下人口も減少が続いている。ピーク時の1995年調査では8716万4721人だったが、今回調査では7508 万7865人と、13.9%減少。総人口に占める割合が6割を下回ったのは(59.5%)、1950年調査以来だ。

一方、65歳以上人口は、1995年調査から2倍近くまで増え(97.3%増)、総人口に占める割合(28.6%)を諸外国と比べると、イタリア(23.3%)やドイツ(21.7%)よりも高く、世界最高水準となっている。




65歳以上の4人に1人は現役

減りゆく生産年齢人口を補うべく、定年引き上げなどの法整備が国により進められているが、65歳以上の就労状況はどうなっているだろうか。
『労働力調査(基本集計)2020年平均結果』(総務省統計局)によると、2020年の65歳以上の就労率は25.1%で、9年連続で上昇している。このうち65~69歳の就業率を見ると、男性は2014年に50%を超え、2020年は60.0%となっている。一方、女性は2014年に30%を超え、2020年は39.9%となっている。




東京、神奈川など5都県で人口増加が加速
岩手、新潟など33道府県で人口減少が加速

都道府県別に人口増減率を見ると、2010年〜2015年に比べて、2015〜2020年において増加幅が拡大しているのは、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に福岡県を加えた5都県で、それぞれ、0.1〜1.2ポイント拡大していた。

一方、減少幅が拡大している都道府県は33道府県に上る。減少幅が大きいのは、岩手県(1.6ポイント拡大)、新潟県(1.5ポイント拡大)、山口県、長崎県(いずれも1.2ポイント拡大)、大分県(1.1ポイント拡大)など。

東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の人口は3691万4176人で、2015年調査に比べて約78万3000人増加し、全国の約3割(29.3%)を占めている。総人口が減少している中、東京圏への人口集中が進んでいることがうかがえる。

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2.5世帯に1世帯が単身世帯
1世帯あたりの人員は2.21人と減少続く

社会施設の入所者などを除いた「一般世帯」の数は5570万4949世帯で、2015年から237万3152世帯増加。家族類型別に見ると、世帯人員が1人の「単独世帯」の増加率が高く、14.8%だった(2015年1841万7922世帯→2020年2115万1042世帯)。

「単独世帯」が一般世帯に占める割合も、34.6%から38.1%に上昇しており、およそ2.5世帯に1世帯が単独世帯という計算になる。なお、そのほかの世帯は「夫婦と子供から成る世帯」が25.1%、「夫婦のみの世帯」は20.1%、「ひとり親と子供から成る世帯」は9.0%などで、単独世帯が占める割合が最も高い。
また、一般世帯の1世帯あたりの人員は2.21人で、1990年に3人を切って(2.99人)以降も減少が続いている。

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なお、「単独世帯」の割合を年齢別・男女別に見ると、男性では25〜34歳で最も高く28.8%。次に、55〜64歳(18.7%)、45〜54歳(17.9%)が続いた。一方、女性では75〜84歳が最も高く26.0%。次に85歳以上(25.6%)、25〜34歳(19.7%)が続いた。




少子高齢化、人口減少社会を前提とした
制度・仕組みの整備が急務

今回の国勢調査結果から、総人口の減少が継続、とりわけ15歳以下人口の減少が著しく、総人口に占める割合も低下していること、半面、65歳以上人口の割合が高まっていることなどがわかった。少子高齢化と人口減少が言われて久しいが、その状況が着々と進行していることがうかがえる。

また、東京圏の人口の増加・集中が進んでいることや、単身世帯の増加、1世帯あたりの人員減少、共同住宅比率なども、調査結果から読み取れる特徴と言えるだろう。

このような状況から、都市集中が今後も進む一方で地方の人口減少が加速度的になり、学校、役所、病院から商業施設やインフラといった生活維持に欠かせない機能の維持・整備に影響が出る地域が増えることは容易に予測できる。
また、単身世帯が増えることで、介護や孤独死の問題もさらに深刻になるだろう。しかし今現在このような状況に対応する、社会・経済を維持するための各種制度や仕組みの整備が追いつけているかというと、十分ではない面も大いにあるのが現状と言わざるを得ない。

COVID‑19のパンデミックによって、働き方や暮らし方を大きく変えざるを得ない状況となったが、今回の国勢調査で見えてきた現状と課題を鑑みると、COVID‑19への対応以上の変化・改革が必要な状況ではないか。例えば、生活圏をある程度集中させることで生活に必要なインフラを維持するといった街づくりや都市づくりから見直していくなど、官民が一体となって、今後も続く人口減少、少子高齢化に対応した制度・仕組みをつくっていくことが、社会・経済の維持ないし成長には不可欠ではないだろうか。


【出典】
総務省統計局『令和2年国勢調査結果』
総務省統計局『統計トピックスNo.129 統計からみた我が国の高齢者』
作成/MANA-Biz編集部