リサーチ

2021.02.01

オフィスは本当に必要か?

小規模企業にとってのオフィスのメリット・デメリット

近年「会社にはオフィスが不可欠」という意識が薄れ、オフィスを持たない企業が増えている。2020年8月、バーチャルオフィス「レゾナンス(RESONANCE)」を運営する株式会社ゼニスは、小規模の個人事業主・従業員数5名以下の企業の経営者を対象に、『オフィスに関する調査』を実施した。

コロナによって在宅ワークが長期化し
「オフィス不要論」を白熱させている

新型コロナウイルスの感染症対策として、在宅ワークが長期化したことで「オフィスでなくても仕事はできる」と実感したビジネスパーソンは多い。その実感は、「そもそもオフィスは必要なのか?」という発想に至り、オフィス不要論が注目されるようになった。

あえてオフィスを持たないという選択をしている企業は以前からあったものの、「会社=オフィスを構えるもの」という固定観念から、特に疑問も抱かずオフィスを持っていた企業が、圧倒的に多いのではないだろうか。

しかし今、在宅ワーク下で業務にあたり、一定の手応えを感じているビジネスパーソンは、「本当にオフィスは必要なのか?」という疑問を抱き始めている。



オフィス不要は4割

『オフィスに関する調査』は、既に多くのビジネスパーソンが新型コロナウイルスの影響による在宅ワークを経験している2020年8月に、多様な働き方を比較的実現しやすい小規模の個人事業主・従業員数5名以下の企業経営者を対象に行われた。

「働き方が変わる中でオフィスは必要だと思いますか?」への回答は6:4で必要派が多かった。時勢的にオフィス不要論が目立っているなかで、必要派が優勢なのは意外な結果でもあるが、4割もの回答者が「オフィスは不要」と判断していることを考えると、「オフィスを持つ」or「オフィスを持たない」の判断は、これから大きく変化していく可能性が感じられる。

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小規模個人事業主にとっての
オフィスのメリット・デメリット

オフィスがあることについてのメリット・デメリットを聞くと、下図のような結果になった。

デメリット

・コストが発生する
・通勤の手間が発生する
・勤務地が制限される

実質的なデメリットが目立つ。収益性を考えると、地代のかかるオフィスはコスト面でのデメリットが大きく、オフィスをなくせば大幅なコスト削減が実現する。特に今は、新型コロナウイルスによる打撃を受け、ランニングコストを削減したいと考えている企業が多いことからも、思い切ってオフィスを無くすという決断をする意義は大きいだろう。

メリット

・コミュニケーションの場となる
・作業場所の確保
・会議や打ち合わせ場所となる

メリットで挙げられた「コミュニケーションの場となる(1位)」と、デメリットに挙がった「職場の人間関係に悩まされる(4位)」は相反する内容だ。在宅ワーク下では人間関係の希薄化を不安視する声もあった一方で、人付き合いが減ってラクになったという声も一定数あった。

コミュニケーション面ではメリットもデメリットも両方あるため、希薄化の弊害を埋めるためには、オンラインでのコミュニケーションを充実させる必要がある。

また「作業場所の確保(2位)」も注視すべきポイントだ。コロナ影響下で、自宅で仕事をする際のスペースの確保や設備に困ったという声も多く、オフィスがなくなればコワーキングスペース等の需要が高まることが予測される。

「会社=オフィスを構えるもの」を基準とした社会システムにおいては、法人登記や法人口座の開設がしやすい、といったこともと大きなメリットだが、働き方や企業のあり方が多様化するにつれて、社会的な見直しが必要になる分野といえる。柔軟に変化することも必要だが、信頼性を担保するための仕組みづくりが求められるだろう。

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これからの働き方に合わせて
オフィスのあり方を考える

小規模個人事業主・企業にとっては、オフィスの地代が占めるコストの割合も大きくなる。そのデメリットに早くから着目し、オフィスを持たずに事業上の住所としてバーチャルオフィス(仮想のオフィス)を利用する企業も増えてきていた。

このたびの新型コロナウイルスによってもたらされた窮状や在宅ワークの体験は、その流れを一層大きなものにしていくだろう。

新型コロナウイルス感染拡大以前から、働き方の多様化を求めるワーカーが増えていたが、コロナ影響下の実感値がその意識を加速させている。また、企業目線でも、「オフィスに行かなくても仕事はできる」という体験をして、働き方が多様化しても事業継続が可能であることが証明されたケースや、困難を感じたからこそ、どんな状況下でも事業を継続していくために、オフィスに頼らない働き方を模索し始めたケースもあるようだ

働き方の多様化と並行して企業のあり方も多様化する時代になっているし、コストの面でも働き方とオフィス維持を見直すことには意義がある。

変化にあたって企業としての信頼性をどう担保するか、オフィスを持たないことによって新たに発生するデメリットに対してどう向き合い、解決していくかを考えていく必要はあるが、今はオフィスの有無を真剣に考えるチャンスといえる。オフィスがないことに対するデメリットへの対策は、このたびの新型コロナウイルスのような緊急事態への備えにもなるので、従来の価値観にとらわれず、最良の対策や選択をできると良いだろう。

【出典】株式会社ゼニス『オフィスに関する調査』

作成/MANA-Biz編集部