リサーチ

2021.02.04

ベンチャー・中小企業のSDGsの取り組みは?

取り組み「なし」が6割以上。SDGsへの理解不足が課題

近年、大手企業の多くが積極的にSDGsへの取り組みを進め、企業戦略として大々的に広報するケースも増えているが、中小企業の取り組み状況はどうなのだろうか。株式会社ベイニッチは2020年10月、『ベンチャー・中小企業経営者のSDGs導入に関する調査』を実施した。

SDGsとは

2015年9月の国連サミットにおいてSDGsが採択された。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成すべき目標として掲げられたものだ。

SDGsは17のグローバル目標と、それらを達成するための169のターゲットで構成され、発展途上国を対象としたものから先進国が主体的に取り組むべき内容まで、広く盛り込まれている。

国連サミットでの採択を受けて、各国政府や地方行政にとどまらず、企業におけるSDGsへの取り組みも活発化している。外務省の公式サイトではSDGsに取り組んでいる企業の一覧が公開されており、まさに官民一体の様相。各企業は、SDGsで示されたグローバル目標のなかから、自社が重要と位置づけたものに対して、さまざまな形で取り組みを行っている。

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SDGsの導入現況
ベンチャー・中小企業は3割弱

外務省の公式サイトで公開されている「SDGsの取り組みを行っている企業」のリストでは、大企業を中心に名を連ねているが、ベンチャー・中小企業における実態はどうなのだろうか。

『ベンチャー・中小企業経営者のSDGs導入に関する調査』では、SDGsに「取り組んでいる」という回答は3割弱に留まり、6割以上が「取り組んでいない」という結果だった。

「取り組んでいない」と回答した人にSDGsへの興味を聞くと、「非常に興味がある」、「興味がある」の合計は4割に満たず、6割以上が「全く興味がない」と回答。ベンチャー・中小企業においては、導入状況に加え、興味関心も劣勢であることがわかった。

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SDGs導入で期待されるのは
事業の安定と発展

SDGsに「興味がある」とした理由のトップは「持続可能なビジネスモデルの必要性の高まり」で7割以上。次いで「近年の注目度の高まり」も半数近くにのぼっているほか、新型コロナウイルスの影響も少なからず受けていることがわかった。

また、SDGsに「興味がある」人に対して、「企業がSDGsへの取り組みを検討するうえで期待すること」を聞くと、「事業の安定化」が59.3%、「新しい事業への参入」が37.0%、「企業イメージの向上」が37.0%という結果が出ており、事業の安定や企業の発展を目指すにあたって、SDGsへの取り組みが重要な要素として認識されていると推察される。

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SDGs導入の課題は
SDGsへの理解不足

SDGsに「興味がある」人に「導入に至らない理由」を聞くと、「自社に合った(SDGsのグローバル)目標がわからない」が44.4%、「人員的に取り組む余裕がない」が44.4%、「何から初めて良いかわからない」が40.7%。

人員不足はベンチャー・中小企業にとっては深刻な問題であるが、そもそもSDGsへの理解が不十分であるなどの理由から、目標設定や具体的に取り組むべき内容の実態が見えていないことが、主な課題だと考えられる。

一方、SDGsに「取り組んでいる」人に対して、「SDGsの17の(グローバル)目標のうち、自社で取り組んでいるものはどの目標に該当するか」を聞くと、下図のような回答が得られた。

4_res_175_04.jpg エネルギー問題や健康・福祉など、比較的やるべきことが明確で、取り組みやすい内容が上位。一方で、「働きがい・経済成長」や「パートナーシップ」、「産業と技術革新の基盤」などは、ベンチャー・中小企業の成長にも大いに関わりそうな内容であるにもかかわらず、下位にとどまっていた。



SDGsへの取り組みは
企業の持続や発展に不可欠

SDGsが定める「持続可能な開発目標」は、社会課題の解決やグローバル社会の発展に欠かせないと同時に、企業の安定と継続・発展にとっても重要な要素であり、企業規模を問わず普遍的なものだろう。

しかし現状は、ベンチャー・中小企業の多くがSDGsに取り組めていない。調査では、自社に合ったSDGsのグローバル目標がわからないことや、人員不足などが課題として挙げられていたが、SDGsに取り組めていない根本的な原因はSDGsへの理解不足ではないだろうか。

SDGsへのアプローチは必ずしも"新しい取り組み"に限られるものではなく、SDGsの視点から今のやり方をかえることも一つの方法だ。たとえば普段利用している電力を自然エネルギーに替えるのも取り組みの一つとなり、人員不足はネックにならない。しかし理解が不足しているために、「自社に合った目標」が設定できないのではないだろうか。

SDGsを導入するには、視点や発想の転換、ときには大胆な決断も必要になる。新型コロナウイルスによる世界情勢の激変と経済悪化により、私たちは図らずも、変化に対する柔軟で迅速なチャレンジと持続性が企業にとってどれほど重要かを学んだ。

SDGsの理念のもとで社会課題の解決に尽力することの大切さをコロナから学んだ今、SDGsにチャレンジする絶好の機会であり、すべての企業にとって必要不可欠な取り組みとなるのではないだろうか。

【出典】株式会社ベイニッチ『ベンチャー・中小企業経営者のSDGs導入に関する調査』

作成/MANA-Biz編集部