レポート

2021.11.12

オフィスPJで経営が必ず求める社員の意識改革!

WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS vol.11

2021年9月16日・17日にコクヨが開催した『WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS』から、コクヨのワークスタイルコンサルタント成田が登壇した「オフィスPJで経営が必ず求める社員の意識改革!」の様子をレポート。オフィスの移転・リニューアルのプロジェクトを通じて社員の意識を変革するためのポイントについてコクヨのコンサルタント成田がレクチャーした。

登壇者

成田麻里子(コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント)




オフィスプロジェクトは社員の意識・行動変革のきっかけになる

ワークスタイルイノベーション部では、企業向け研修サービス[コクヨの研修]スキルパークなどを通じて、働き方をよりよく変えるためのサポートを行っている。セミナーのはじめにあたって、コロナ禍をきっかけとした働き方の変化と、その変化に対するワーカーや経営者の意識についてまとめた。

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに働き方が大きく変わった、というワーカーは少なくありません。オフィス以外の場所で働く機会が増えた人も多いのではないでしょうか。

コクヨでは昨年、約3000人のビジネスパーソンを対象にアンケートを実施し、「今後、オフィス・在宅・その他の場所(コワーキングスペース)をどのように使い分けたいですか?」という質問を投げかけました。その結果、多くのワーカーは『オフィスと自宅を半々ずつ使い分けたい』と考えていることが明らかになりました。

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では、ポストコロナに向けて企業の経営者は何を求めているのでしょうか? コクヨが行った市場調査の結果を見ると、1位は「働き方改革」です。具体的な項目としては、ICT導入や遠隔コミュニケーションなどさまざまな項目が挙がっています。
中でも見逃せないのが、「オフィス環境改革」や「人材育成の推進」といった項目です。経営者の方々は、社員のスキルアップや意識向上、社員が快適に働くためのオフィス環境を強く望んでいるわけです。

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コロナ禍以前から、新しい働き方にチャレンジするためのオフィスの移転・リニューアルを行う企業は増えています。このようなオフィスプロジェクトは、オフィス環境改善はもちろん、進め方次第では、社員の意識・行動変革を促すのに非常に役立ちます。
このセミナーでは、オフィスプロジェクトを通じて社員の方の意識変革を起こす方法を詳しくご紹介します。




オフィスプロジェクトで社員を巻き込む3つのポイント

近年、働き方改革を伴う企業のオフィス移転・リニューアルにあたって、社員の意識・行動変革を促すためのワークショップなどでモデレーターを務める機会も多い。オフィスづくりのプロセスや、社員をプロジェクトに巻き込むためのポイントを3つ紹介した。

オフィスづくりは、課題抽出→コンセプト策定→計画策定→設計・構築→浸透・評価というプロセスで進められるのが一般的です。ただしこれだけでは終わらず、社員が新しいオフィスに入居した後も、新しい働き方やオフィスの運用方法を社内に浸透させたり、めざしたワークスタイルが実現できているかを評価したうえで改善に取り組んだりと、さまざまな業務に取り組む必要があります。

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オフィスづくりを進めるにあたって、従来は経営企画部門や総務部門が中心となって進めることがほとんどでした。しかし近年は、それ以外の各部門から少人数ずつメンバーが集まってタスクフォースを形成し、プロジェクト体制で取り組む事例も増えています。
このやり方には、メンバーが各部門の意見を吸い上げて新しいオフィスに反映させたり、策定した新しい働き方をメンバーが自分の部門で浸透させたりできるメリットがあります。

プロジェクト形式でオフィスづくりを進める際に、社員を巻き込んで意識改革を促すためには、3つのポイントがあると考えています。

  • 1.タスクフォースメンバーを集めるときのポイント
  • 2.長期の改革中に中だるみせず社員を巻き込み続けるポイント
  • 3.新しい働き方を社内全体に浸透させるためのポイント


1.タスクフォースメンバーを集めるときのポイント

タスクフォースメンバーを集めるにあたっては、プロジェクトの事務局と各部門でそれぞれポイントがあります。

まず事務局は、「どんなメンバーに集まってもらいたいか」を各部門に伝えます。具体的には、10~20年後に最も活躍していそうな若手・中堅層など会社の未来を担っていく人たちです。また事務局の体制としては、プロジェクトがスピーディーに進むように、決定権のある社員が加わることが大切です。

各部門のマネージャーの方が参加メンバーをアサインするときは、比較的ポジティブな思考がある人を集めること、またボランティアではなく、あくまでも仕事として取り組んでもらうのもポイントです。

そして最も重要なのは、マネージャーの方がメンバーに「なぜあなたを選出したか」を伝えることです。オフィスプロジェクトに参加すると、自社のありたい姿を思い描く広い視野や課題を発見・解決する力が身につき、ビジネスパーソンとして大きな成長が見込めます。高いモチベーションをもって参加すれば、身につくものもより多いはずです。ですからマネージャーは、参加メンバーに「成長を期待している」と伝えていただきたいと思います。

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2.長期の改革中に中だるみせず社員を巻き込み続けるポイント

オフィスプロジェクトは、短くても数か月、長ければ1年以上に及ぶ場合もあります。このような長期間にわたって、中だるみせず多くの社員を巻き込みながら進めるには、2つのポイントがあります。「情報発信」と「対話」です。

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定期的に情報発信を続け、新しいオフィスでの働き方に期待感を持ってもらうことは、多くの社員を巻き込んでいくうえで重要です。
社内SNSや掲示板などで働き方コンセプト、タスクフォースメンバーの取り組み内容やオフィス施工中の様子などを発信していくわけですが、いかに楽しく、ポジティブなトーンで伝えていくかが勝負です。
コロナ禍の時期に大人数で集まるのは難しいかもしれませんが、オンラインでもよいのでイベントを開催し、社員のワクワク感を引き出してはいかがでしょうか。

ただ、情報発信はややもすると一方通行になりがちです。もし可能ならタウンホールミーティング(経営層と社員が直接対話する場)を設定し、「なぜ働き方を変える必要があるのか」「本当に新しいワークスタイルを実現できるのか」といった疑問や不安を社員が解消する機会があると、さらによいと思います。

情報発信の一例として、コクヨが実施したオフィス移転の事例をご紹介します。私たちは2017年にオフィス移転を行い、730名の社員が新オフィスに入居しました。
この際、プロジェクトメンバーたちは情報発信として、社内掲示板に移転情報専用のサイトを設置し、さまざまなコンテンツを定期的に更新していました。当時のメンバーは、「味気ないお知らせにせず、みんながワクワクする情報を」と考えて発信を行っていたそうです。専用サイトの注目度は高く、1日200~300人のユーザーがサイトを訪れていました。



3.新しい働き方を社内に浸透させるためのポイント

オフィスプロジェクトの最終的な成功は、新しい働き方が社内全体にしっかり浸透するかどうかにかかっています。そのためのポイントが3つあります。

  • ① タスクフォースメンバーが自分ゴトとして周囲に語る
  • ② 一方的な発信ではなく、双方向で社員の不安感や課題を聴く
  • ③ 「オフィスはできあがったら終わりではなく、社員でブラッシュアップしていくもの」だと伝える

①の「タスクフォースメンバーが自分ゴトとして周囲に語る」は、プロジェクトチームで決めた内容を自分の部門で伝えるときに実践してほしいことです。
決定したプランだけでなく理由や検討プロセスなども交えて、ストーリーとして語っていただきたいのです。このような伝え方をすることで部門内に仲間を増やせるし、メンバーの方自身も自分の中でより理解を深められるはずです。

②の「一方的な発信ではなく、双方向で社員の不安感や課題を聴く」について、ここでもコクヨの事例をご紹介します。
私たちは2017年のオフィス移転にあたって、ABWの働き方を本格的に始動させようとしていました。しかし、長年にわたって固定席で働いてきた部門の社員からは『紙の商品カタログの置き場所がないと困る』『固定電話がほしい』といった不安や反発の声が寄せられました。
そこで、タスクフォースのメンバーは、各部門の社員に向けたヒアリングを実施し、課題をじっくりと聴き出しました。特に不安の声が大きい部門には個別説明を行ったり、課題解決の方法を一緒に考えたりしました。こうしたこまめなフォローを積み重ねることで、社員の方は安心して新しい働き方に移行できるのではないでしょうか。

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③の「オフィスはできあがったら終わりではなく、働き方やオフィスの使い方を社員たち自身でブラッシュアップしていくものだと伝える」も、プロジェクトメンバーの役割として重要です。
コクヨでは、オフィスでよりよい働き方をするための活動として『オフィスカイゼン委員会』という組織を立ち上げ、定期的にブラッシュアップに取り組んでいます。この活動について、もう少し詳しくご紹介しましょう。

コクヨは全国に拠点があり、それぞれの拠点で『オフィスカイゼン委員会』を組織しています。社内の各部門から選出された代表メンバーが集まり、自分の所属する部門から課題や意見を持ち寄って、委員会で解決策を議論します。つまり、社員自身でオフィス環境のブラッシュアップに取り組んでいるのです。
自分たちの力で課題解決を行い、小さな成功体験を積み重ねていくことで、社内にポジティブな空気が流れるようになりました。

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まとめ

社員一人ひとりができる働き方改革とは、社員が自社の方針やめざす働き方をきちんと理解したうえで新しい働き方を「自分ゴト」としてとらえ、自分で考えて主体的に行動できるようになることではないでしょうか。

しかし、このような主体性はなかなか一人で獲得できるものではありません。マネージャー層の方が、必要に応じて部下の不安と向き合うなど、対話の積み重ねが求められます。それが結果的には、個人や組織の成功につながるのではないでしょうか。

オフィスプロジェクトを通じて社員の方の成長を促すとともに、ぜひ今後も社内でたくさんの対話をしていただければと思います。



【図版出典】「オフィスPJで経営が必ず求める社員の意識改革!PJが進むごとにポジティブ社員を増やすマインドセットと部門の巻き込み方」セミナー投影資料

文/横堀夏代