ビジネスに役立つ哲学

2021.06.01

能力について

ビジネスに役立つ哲学5:能力とはなにか

「能力」について、フランスの3人の哲学者の「考え方」を紹介。もし、彼らが「能力について」迷い、悩んでいる、現代に生きる私たちにメッセージを送るとしたら、きっとこんな言葉をかけてくれるはずだ。
※「ビジネスに役立つ哲学」の連載では、作家でありモラリストでもある大竹稽氏が、フランスの哲学者になりきって、現代の迷い、悩めるワーカーにメッセージを送ります。

仕事では能力を問われる場面が多々ある。普段の業務だけでなく評価や昇格にも関係するため、スキルアップや自己研鑽など、能力向上に必死になったり、誰かと比べて落ち込んだりすることもあるだろう。能力差はたしかに存在する。だが個々人の能力の限界はどこにあるのだろうか? そもそも自身の能力を正確に把握できているのだろうか。




どうすれば能力を活かせるのか?
それには、あなたの創意が不可欠です


3_phi_001_04.pngたしかに、仕事において、能力による差が出るのは否めません。だから、能力を高めたい、たくさんの能力を身につけたいとあなたは望むのでしょう。

ではまず、能力というものについて考えてみましょう。 能力には、二種類あります。身につけていくもの。そして、天が授けたものです。もちろん、この二つは切り離せない関係にあります。なぜなら、身につけていく能力も、天が授けたあなたという一人の人間が獲得していくものだからです。

さて、あなたはどのような能力を天から授かっているでしょうか? これは、偶然によるものです。一方、身につけていく能力は、あなたの思い通りになると思っているかもしれません。しかし、それもまた偶然によるものなのです。

あなたはなぜ、その能力を身につけることを望んだのでしょう? そこには、あなたの生い立ち、年代、知人たちが関わっているはずです。それらの関わりは、あなたの意図に関係なく、たまたまそうあるものなのです。

あなたがどんな能力を授かったのか、ちっぽけな人知で計らないでください。天が授けたあなたの能力は、あなたの理解を超えるものなのです。

また、身につけた能力も、ただ身につけただけで使わなければ何の役にも立ちません。また一方で、あなたがどれほど貴重な能力を天から授かっていたとしても、それに気づかなければ宝の持ち腐れになってしまうでしょう。

では、どうすれば能力を活かせるのでしょう? それには、あなたの創意が不可欠なのです。

創造力も能力ではないのかって? たしかに、芸術家のような創造力を指すならば、それは稀なる能力と言えるでしょう。しかし、そのような奇跡的なレベルのことを話していません。創意とは、自分で考えてやってみることです。

あなたはいま、どのような仕事に携わっていますか? だれもができる仕事だとしても、だれもがやるやり方ではあなたの能力を腐らせるだけ。料整理一つとっても、あなたの創意によってあなたの能力を発揮できるはず。

自分にどんな能力があるのかわかりませんか? ではまず、いまある自分の仕事を、あなたなりに工夫してみましょう。





天はわたしたちそれぞれに能力を授けてくれます
だから、あなたも天才なのです


3_phi_001_03.png能力ですか。さてさて、あなたのお仕事にはどんな能力が求められますか? 能力というものを、資格に置き換えることもできそうですね。看護師には、看護師資格が、弁護士には弁護士資格が必要でしょう。わたしの仕事は、詩を書くこと。資格はありません。とはいえ、詩作というのも能力の一つと言えるでしょう。

能力なんてものは身につけるものではないと思います。能力は備わっているもの。それを開花させるかどうかが、大事なのです。

わたしの寓話に『牛のように大きくなろうとした蛙』があります。 一匹の蛙が牛をみて、自分の体の貧弱なことを嘆き、牛のように大きくなりたいと思いました。蛙は手足を広げて、腹を膨らませ始めました。果たして、このちっぽけ蛙は膨らみすぎて破裂してしまったのです。

不相応な能力をどれほど身につけたところで、この蛙ようにあなたがバチンと破裂してしまったり、ペチャンコに潰れてしまったりしては、元も子もありませんよね。

蛙には蛙の、牛には牛の能力があります。寓話とは反対に蛙にできて牛にできないこともあります。それらは、天がわたしたちそれぞれに授けてくれた能力なのです。その意味で、あなたもあなたにしかない能力をもった天才なのですよ。

だから、なによりもまず、信じてみましょう。「自分には能力が備わっている」ということを。 そして、その能力を開花させること、そのためにさまざまな資格や、さまざまな仕事に挑戦してみるといいですね。





身に過ぎた能力など使いものにならない
あなたにはあなたにふさわしいスキルがある


3_phi_001_01.png身に過ぎた能力など、使いものにならない。鎧も剣も、スキルも、自分にふさわしいものがあるのだ。「できるだけあったほうがいい」と欲に欲を足して用意した武器、さて、あなたは戦場にどれだけもっていけるだろうか?

あなたにはあなたにふさわしい鎧、あなたにはあなたにふさわしい剣がある。スキルも同じだ。 自分の能力に迷ったら、自分の身体に戻ってみればいい。あなたがどんな道を進むにしても、だれかの足を借りることはできない。あなたの足で歩かなければならないのだ。




大竹 稽 (Ootake Kei)

教育者、哲学者。1970年愛知県生まれ 旭丘高校から東京大学理科三類に入学。五年後、医学と決別。大手予備校に勤務しながら子供たちと哲学対話を始める。三十代後半で、再度、東京大学大学院に入学し、フランス思想を研究した。専門は、カミュ、サルトル、バタイユら実存の思想家、バルトやデリダらの構造主義者、そしてモンテーニュやパスカルらのモラリスト。編著書『60分でわかるカミュのペスト』『超訳モンテーニュ』『賢者の智慧の書』など多数。東京都港区や浅草で作文教室や哲学教室を開いている。
大竹稽HP https://kei-ohtake.com/
思考塾HP https://shikoujuku.jp/

イラスト/ちぎらはるな