リサーチ

2021.05.26

ポストコロナの働き方

コロナ禍の発見から生まれた意識改革

新型コロナウイルス感染防止対策としてテレワークが推奨され、柔軟な働き方への意識が急速に高まっている。コクヨ株式会社が実施した調査結果から、在宅勤務の課題やワーカーたちの意識の変化、今後の展望を読み解く。

在宅勤務の実施状況

2021年1月7日、新型コロナウイルス感染拡大による2度目の緊急事態宣言が発令され、国は「出社率7割減」を目標にすると発表。しかし、同年2月上旬実施の調査において、46.6%が在宅勤務を「全くしていない」と回答していました。

在宅勤務の実施率が国の目標値に届いていないことに加え、1回目の緊急事態宣言発令時と比較すると、在宅勤務の割合は減少しています。当初は「未知のウイルス」だった新型コロナウイルスが、今は常態化しつつあり、長期戦が見込まれるなか、経済活動が優先されるようになってきたのかもしれません。

一方で、2度目の緊急事態宣言を機に、在宅勤務の頻度が増えたワーカー(20.4%)や、在宅勤務を開始したワーカー(14.3%)もいました。出勤必須の業界や業務は別として、企業やワーカー本人の対応が明確に分かれてきていると考えられます。

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在宅勤務によって
「リフレッシュ」の重要性を認識

調査では、テレワーク(在宅勤務)が長引くなかで、テレワークを始めた頃と現在とでストレスがどう変化したのかに着目しました。在宅勤務を続けるなかでストレスが減ってきたものでは「小休憩」が圧倒的多数。「休憩を取り入れるタイミングやコツがわかってきた」「休憩は悪いことではなく、気持ちを切り替えるきっかけと思えるようになった」などの声があがっています。

在宅勤務では周囲の目がないぶん、「休憩=さぼり」といった思い込みが強くなり、オフィスにいたとき以上に机にはりついていたワーカーも多いのではないでしょうか。しかし、在宅勤務を長く続けるなかで「仕事中のリラックスタイム」の重要性を感じ、積極的に休憩を取るようになったワーカーが多いようです。

また、家庭内のオフィス環境も整い、時間管理や家庭生活とのバランスなど、在宅勤務のコツを掴みつつあるのでしょう。

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在宅勤務のデメリットと
オフィスの魅力を再認識

一方で、コツや慣れではどうにもならない、在宅勤務のデメリットも明確になりました。家庭内のオフィス環境が整い、在宅勤務のコツを掴んでもなおストレスを感じ続けているのは「プリントアウト」「メンバーの進捗確認」「アイデア会議」などで、これは在宅勤務の弱点でもあり、オフィスという場が必要な業務といえるでしょう。

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「魅力あるオフィス」の条件とは

今後のオフィスに求められことは以下の3点であることが、調査から見えてきました。

  • ①多様な人とのコミュニケーション・交流
  • ②情報収集
  • ③専門性の高い作業場

これらはすべて、オフィスでは当たり前にできていたのに在宅勤務でできなくなったことです。それこそがオフィスの魅力であり、価値であるといえます。

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新しい働き方の予想
個人・企業・社会にギャップ

調査では、今後定着していくであろう「新しい働き方」について以下3つの視点で聞きました。「自身が続けたい・始めたいと思う働き方」「会社が継続・新たに採用するだろう働き方」「日本社会で一般的になると思う働き方」。

どの区分でも在宅勤務を中心としたテレワークが定着していくとの見方が強く出ています。ただし比較をすると「会社」が最も低く、一部のワーカーの目には「(自分が勤める)会社はテレワークをコロナ禍の一時的な対策と考えている」と映っていることが読み取れます。ワーカーの望みや社会の変化と、企業の姿勢にはまだギャップがありそうです。

また、少子高齢化などの社会状況を受けて国が推奨している副業は、ワーカー自身の意欲も高く、これからの働き方の主流になっていくといわれていまが、「副業・複業」の項目でも、会社への期待値が特に低いことが読み取れます。

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新型コロナウイルス感染拡大によって、特に在宅勤務に対するワーカーの意識は大きく変化しました。しかし、柔軟な働き方に対するワーカーの要望が高まる一方で、企業側には従来の働き方に固執する傾向があり、ワーカーの意識や社会環境の変化とのギャップが広がっているようです。

しかし、ワーカーの意識と行動は確実に変わりつつあり、こうしたワーカーの意識変化はコロナによる一過性のものではなく、これからのテレワークや副業といった新しい働き方が定着していくにはまだ時間がかかりそうですが、ワーカーの意識変化を肯定的に捉え、コロナ禍での経験もふまえて、より主体的で多様な働き方へとアップデートさせていくことが、今後ますます企業に求められていくのではないでしょうか。


調査概要

実施日:2021.2.9-10実施

調査対象:社員数500人以上の企業に勤務、かつ2021年1月の緊急事態宣言以前よりテレワークの頻度が増えた・変わらない、もしくは緊急事態宣言時からテレワークを開始したワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件
 

【図版出典】Small Survey「新型コロナウイルス収束後の働き方」



河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

作成/MANA-Biz編集部