リサーチ

2020.12.28

ビジネスパーソンが選んだ「今年の漢字」

ワーカーが自社に対して感じた思いとは?

日本漢字能力検定協会では、その年の世相を表す漢字1文字を一般から募る「今年の漢字」を毎年発表している。世界中がコロナ禍に振り回された2020年は「密」の文字が選ばれた。では、ビジネス環境が激変した今年、ワーカーはどんな思いを抱いたのか。コクヨ株式会社では、ビジネスパーソン約300名に向けて「今年の自社を漢字1文字で表すと?」という質問を投げてみた。得られた結果について、ワークスタイルイノベーション部でコンサルタントを務める河内律子が解説する。

2トップの「変」「減」には
コロナ禍で感じた思いが凝縮

今回の「今年の自社を表す漢字」調査では、回答者全体の傾向と、業界別の傾向をそれぞれ集計しました。全体として多かったのは「変」「減」の2文字でした。

「変」は言うまでもなく、コロナ禍による社内外の環境変化を表す文字です。回答者にその漢字を選んだ理由を聞くと、「大々的な人員削減が行われた」といったネガティブな変化を挙げる人もいたものの、「新しい生活様式に都度柔軟に対応している」など自社のポジティブな変化を評価する声が目立ちました。

「減」は、「減収減益」「仕事を辞めていく人がたくさんいた」など、収益や報酬の減少、仕事仲間との別れなどマイナス要因を挙げる人が大半でした。ただし、「テレワークで人との接触が減った」「収益が減ったが経費も減った」など状況を冷静にとらえるワーカーもいました。



「とにかく忍耐の1年」
「変革が進んだ」といった本音が浮き彫りに

ほかに複数の人が挙げた漢字と、選んだ理由をピックアップしてご紹介しましょう。
「忍」「耐」は、「不都合や不便を耐え忍ぶ1年だった」「会社自体がコロナの影響を受けながらの1年だったし、自分自身もマスクを1日中つけながら接客することに耐えた」など、まさにビジネスパーソンの忍耐を象徴する声といえそうです。

「改」「革」は、「業務の見直しなど変化の多い1年だった」「今までも働き方改革でオンラインの活用を少しずつ進めていたが、コロナの影響でかなり進んだ」など、在宅勤務をはじめとするワークスタイルの改革を象徴する漢字です。数年前から進められてきた働き方改革にコロナ禍が重なり、「改革が加速した」と感じたワーカーが多かったようです。



業界の特徴が強く
表れている回答も目立つ

回答者が働く業界別で見ると、興味深い結果が得られました。どの業界でも「減」「変」「忍」「耐」の文字を選んだ人が目立つものの、その業界ならではの2020年の特徴を表す漢字も少なからずランキングに含まれていたのです。

例えば電子・電気・機械・輸送機器業界では、「減」と同率1位で「遅」がランクインしました。理由としては「顧客対応が遅い」「未知のリスクに対する対応が遅い」といったコメントが多く、コロナ禍への対応の遅さを批判する心情が表れています。

不動産・建設・運輸業界では、「テレワークができない仕事のため、密になりながらも仕事をした」という理由から「密」が3位に。働き方に不安を感じるワーカーの意見を象徴しています。また金融・保険業界では、「電」が2位にみられました。業務のデジタル化に加えて、「デジタル商品の開発」など自社の新時代に向けた動きに目を向けての回答といえそうです。

卸売・小売業界では、他業界では選ぶ人が少なかった「忙」がトップで、「コロナ禍の中、来店が多く忙しかった」「休憩も取れない」といった声が挙がっています。他業界で「減」「耐」が上位にみられる中で、特に生活基盤に関わる小売店などの多忙ぶりを象徴しています。

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ワーカーは自社の判断や対応を
正確にとらえている

今回の調査結果全体を見て、「ワーカーは自社の状況を非常に的確にとらえている」と強く感じました。なぜなら、「業績悪化」や「コロナ対応への遅れ」といったマイナス要因を批判するだけでなく、「逆風に負けずイノベーションを起こそうとする経営姿勢」や「新しい働き方を積極的に取り入れる柔軟性」を評価する声も強かったからです。

この1年、勤務している企業やご自分の業界に対して、あなたはどんな思いをもったでしょうか。漢字1文字で表現してみると、仕事や働き方に対して望むことがより明確になるかもしれません。


調査概要

実施日:2020.12.18-21実施

調査対象:社員数500人以上の企業に勤めているワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件


河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

文/横堀夏代