リサーチ

2020.12.21

認知されていても支援されないクラウドファウンディング

プロジェクトへの支援を経験すれば91%に愛着がわく

株式会社マクロミルが2019年11月に実施した、『全国2万人にきく、クラウドファンディングの認知・利用状況 把握調査』、『クラウドファンディング支援経験者500名調査』をもとに、クラウドファウンディングの現在と未来を考察する。

クラウドファンディングとは

クラウドファウンディングという言葉をよく聞くようになった。クラウドファウンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファウンディング)」を組み合わせた造語で、不特定多数が主にインターネットを介して、人や組織に対して財源の提供などの支援を行うことを意味する。


世界のクラウドファウンディング市場は2017年の推定で1,700億円、2022年までに総額11兆円超まで伸長するともいわれている。新型コロナウイルスによる影響下でも、クラウドファウンディングによる助け合いが話題になっていた。




知っているが支援しないのが
クラウドファンディングの現状

『全国2万人にきく、クラウドファンディングの認知・利用状況 把握調査』によると、クラウドファウンディングの認知率は79%とかなり高い。しかし、詳しい内容まで把握している人は28%に留まっている。


また、クラウドファンディングを知っていても、「クラウドファウンディングのサイト・アプリを閲覧したことがある」と答えた人は16.0%、「起案されたプロジェクトを支援したことがある」人に限ってはわずか6.6%、という結果だった。


知られているようで知られていない、知っていても支援する人は少ないというのが、クラウドファウンディングの現状なのではないだろうか。


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プロジェクト支援でメリットを感じ、愛着もわく

『クラウドファンディング支援経験者500名調査』によると、クラウドファウンディングで支援したプロジェクトが生み出したもの・ことに対して、91%が「愛着がわいた」と回答。


20,000人調査でも、クラウドファンディングの認知率と支援率に大きな乖離が見られたが、一度でもプロジェクトを支援するとクラウドファウンディングのメリットが実感でき、参加する人が増えてくるのかもしれない。そのためには、クラウドファウンディングを「やってみたい」と思わせる何らかの仕掛けが必要だ。


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クラウドファンディングの魅力は
成功体験の共有

クラウドファウンディング支援経験者に「支援する目的」を聞くと、「支援したプロジェクトの成功」が過半数で1位だった。クラウドファウンディングの支援者は、プロジェクトの運営や達成の状況を確認することができるので、成功体験の共有が一つの魅力になっているのだろう。


一方2位以降を見ると、支援者への対価である「リターン」への期待値が高い。1位の「支援したプロジェクトの成功」も、成功によって付随してくるリターンへの期待を含んでいるのかもしれない。クラウドファウンディングを成功させるために、「リターン設定」の在り方は非常に重要になってくる。


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プロジェクトの支援者は未来の顧客に

クラウドファウンディングは、ビジネスを遂行するうえでの資金調達手段として既に認知され始めている。その要因としては、プロジェクトに支援することで得られる、喜び、成功体験の共有、そして対価であるリターンがある。プロジェクトへの支援を検討する段階では、その判断基準となるのはプロジェクトで新しく生み出される商品やサービスといったリターンだろう。

ただ、クラウドファウンディングの魅力はリターンだけではないことに、支援をして気づく。
支援したプロジェクトの成長を見守り、成功体験を共有し、助け合いの精神で間接的な社会貢献を成し遂げていくことで、プロジェクト先の企業への「愛着」も生まれる。


プロジェクト先の企業にとっては、資金調達の手段であるとともに、クラウドファウンディングによって得た支援者は、末永くその企業やサービスを愛してくれる大切な顧客にもなりえる。その点からも、クラウドファンディングは企業にとっても重要な位置づけとなっていくはずだ。


現状としては、認知度のわりに支援経験者が圧倒的に少ないという実態だが、今後クラウドファウンディングが生活者へさらに浸透した場合、新しい消費や投資のカタチ「購入経路」の一つとなる可能性は大いにある。 株式投資の「株主優待」のような位置づけで、支援者だけが受けられる魅力的なメリット(=リターン)を設定することができれば、支援者はさらに増えるのではないだろうか。



【出典】株式会社マクロミル 『全国2万人にきく、クラウドファンディングの認知・利用状況 把握調査』『クラウドファンディング支援経験者500名調査

作成/MANA-Biz編集部