リサーチ

2020.12.02

2019年 業界別ストレスチェックデータを分析

ハイリスク1位は製造業。業種ごとの特徴に合わせたケアが必要

ビジネスパーソンにとって、体調管理と同じようにメンタルケアは重要である。東大発ベンチャーである株式会社情報基盤開発は、2019年に同社が提供する「AltPaperストレスチェックキット」を利用した顧客から提供されたデータをもとに算出・分析した『ストレスチェック業界平均値データ』を2020年6月に公開し、メンタルケアの指針など を業界別に示した。

ビジネスパーソンのメンタルケアの一手段として、ストレスチェック(ストレス状態を調べる検査)がある。ストレスは自覚がないまま蓄積するケースも多いため、メンタルの健康を維持するためには、定期的なストレスチェックが有効なのだ。


「労働安全衛生法※」という法律が改正され、労働者が50人以上いる事業所においては、毎年1回すべての労働者に対してストレスチェックをすることが、2015年12月から義務づけられている。

株式会社情報基盤開発が提供する「AltPaperストレスチェックキット」は、厚生労働省のマニュアルを遵守したシェアの高いストレスチェックサービスの一つであり、2020年6月公開の『ストレスチェック業界平均値データ』は、2019 年 12 月中に「AltPaperストレスチェックキット」を実施した事業者を対象に、集団分析結果提供の承諾を個別確認して同意を得た962 事業者・153,134名のデータを分析している(2019年単年の「AltPaperストレスチェックキット」導入・実施数実績は約1,800事業者・30万人)。


下図は業種別の結果を集計したもの。総合健康リスクは全国平均を100として、110以上を赤色、100以上をオレンジに色づけてある。また、「高ストレス者」の数値は各チェック項目から算出されたもので、15%以上を赤色、10%以上をオレンジ色に色づけてある。色がついている部分には、注意を払う必要がある。


「総合健康リスク」が最も高いのは、製造業の男性である。平均値の100を超える業種は他にもあるが、110を超えるのは製造業男性のみで、圧倒的に高い数値である。しかも製造業には、男女ともに「高ストレス者」の割合が多いという特徴もある。


前述の製造業とともに、宿泊・飲食業も「高ストレス者」の項目において、男女とも15%以上の高数値を示しているが、全体的に見ると、同業種内では女性よりも男性のほうが「高ストレス者」も「健康リスク」も数値が高い傾向にある


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株式会社情報基盤開発は、この調査データを受けて、業種別レポートも順次公開している。ここでは、男女とも「高ストレス者」が多かった、製造業と宿泊・飲食サービス業をピックアップして考察する。
※図の赤枠は「総合健康リスク」の判定に使われている4つの尺度。


<製造業>
男女ともに「心理的な仕事の負担(量)」の数値は全国平均並みだが、「同僚からの支援度」は平均を大きく下回り、男性は「仕事の裁量度」や「上司からの支援度」も全国平均を下回っている。「自覚的な身体的負担度」、「家族や友人からの支援度」も低い。


製造業の特徴は、負荷は大きいのに支援が少ないこと。身体的負担が大きいため、メンタルケアのためにも、まず身体のメンテナンスに留意する必要がある。そして企業もこの特徴を認識し、従業員の心身の負担を軽減するための取り組みに着手すべきなのではないだろうか。


<宿泊・飲食サービス業>
身体的な負荷は、製造業や運輸業に匹敵するほど。かつ男女ともにストレスがあることがよみとれる。心理的負担、疲労感、不安感、抑うつ感についても、平均を下回る数値。宿泊・飲食サービス業は、顧客と接する機会が他業種よりも多く、就業中は片時も気を抜くことができない。身体面に加えて、心理的負荷に対するじゅうぶんな対策や配慮が必要だ。


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今回紹介した『ストレスチェック業界平均値データ』は2019年時点のものなので、新型コロナウイルス感染症による影響は表れていないが、今は経済的な不安や、感染対策・感染に対する不安などによる強いストレスにも配慮が必要になっている。日本のビジネスパーソンは元々ストレスフルだといわれていたが、新型コロナウイルスの影響下では、ますますメンタルケアの重要性が高まっている。


世界規模での経済状況悪化が懸念される今、その打破のためにもビジネスパーソンたちの心身が健康であることは必要不可欠である。ストレスチェックが義務づけられていない企業も、社員のケアに一層力を入れていくことが望ましい。そして、個々のビジネスパーソンたちも、自ら積極的にセルフケアに取り組むことが重要だと考えられる。



※精神障害を原因とする労災認定件数の増加等を受け、最近の社会情勢の変化や労働災害の動向に即した形で対応し、労働者の安全と健康の確保対策を一層充実するため、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)が平成26(西暦2014)年6月25日に公布された。


【出典】株式会社情報基盤開発 『ストレスチェック業界平均値データ』




作成/MANA-Biz編集部