リサーチ

2020.11.18

日本型雇用システムや就活のあり方に留学生が抱く違和感とは?

将来独立したい留学生と、リストラを恐れる日本人

2020年2月、株式会社パーソル総合研究所と、パーソルキャリア株式会社の若年層向けキャリア教育支援プロジェクト「CAMP(キャンプ)」は、共同で『留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査』を実施。300人の留学生)と200人の社会人(元留学生)から回答を得た。

グローバル化が進むなかで、日本企業も多用な価値観に対応していく必要がある。『留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査』に寄せられた留学生から見た日本型雇用システムへの率直な意見には、日本がグローバル化に適応していくためのヒントも多い。

調査で「日本企業の雇用・採用のあり方への違和感」をたずねると、下図のような意見が寄せられた。

<雇用に関して>
「終身雇用」や「年功賃金」を前提とした、日本特有のメンバーシップ型雇用(日本型雇用システム)そのものに違和感がある印象。「希望しない転勤がある」、「入社後に配属が決まる」なども、欧米などで一般的なジョブ型雇用では基本的にはありえないことなのだ。

<採用に関して>
「大学の成績や専攻分野が重視されない」、「修士号・博士号が有利にならない」など、大学の価値の低さに対する意見が目立つ。また、資格や具体的な技能が求められないことにも違和感が強いようだ。これもまた、専門性を重視するジョブ型雇用と異なる日本型雇用システムが背景にあると考えられる。

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「日本の就職活動のあり方への違和感」(下図)には、「新卒採用」に対する違和感が65.4%で最多。2位の「選考開始、内定出しのタイミングにルールがあること」、3位の「4月入社が一般的であること」も、留学生が感じる日本独自の採用システムだ。国外では時期に縛られず柔軟に就職や転職ができる国が多いので、日本の新卒採用は特異に感じられるのだろう。

また、前段の「採用基準への違和感」(上図右)でも、「インターンシップへの参加が採用に直結しないこと」が過半数の回答を集めていたが、「日本の就職活動のあり方への違和感」(下図)でも「インターンシップが短いこと」という、インターンシップに関わる内容が約半数から指摘されていた。

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日本でも採用施策の一つとしてインターンシップを実施する企業が増えているが、インターンシップとして受け入れた学生を必ずしも採用するとは限らない。一方、海外では日本よりもインターンシップが採用において重視され、広く浸透している。一例として米国のインターンシップを挙げると、実施期間はプログラムによって異なるが6~12週間と長期にわたるものが多い。1日~2週間程度の短期間のインターンシップが一般的な日本と比べて、大きな違いがある。

また、留学生と日本人の「キャリアに対する意識差」は非常に興味深い。最もギャップが大きかったのは、「将来、独立したい」という意識で、2.5倍もの差があった。留学生は独立志向や成長志向、仕事にやりがいを求める意識が強く、日本人は「リストラがない会社で働きたい」など、安定志向が強い傾向がある。

日本に留学している・日本で就職している...という時点で、この調査の回答者はキャリア志向が強い層であるとも考えられるが、長年メンバーシップ型雇用がスタンダードであった日本人にとって、キャリア教育の歴史はまだ浅いため、海外のビジネスパーソンの意識とは乖離が生じるのも当然だ。

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近年、日本企業でも終身雇用が絶対ではなくなり、転職も以前より一般的になった。しかし、主流はいまだメンバーシップ型雇用であり、新卒一括採用は毎年のように行われ、「定年退職」の概念も依然として根強いのが現状だ。

しかし、日本にも変化の兆しは見られる。一部の企業では、グローバル化を視野に入れてジョブ型雇用を取り入れはじめ、実際の採用を視野に入れた形でインターンシップを実施する企業も増えてきた。
新型コロナウイルスの影響で海外との往来が困難になっている現在、グローバル化の停滞や巻き戻しがささやかれることもあるが、日本型雇用システムにとらわれず、グローバルな視点をもって人材採用を考えていくことは、働き方改革を進めるためにも意義がある。

労働力不足が進むこれからの日本では、同じ業務を遂行するにも効率化が求められる。ビジネスパーソン一人ひとりのスキルに対する期待値も高まることが予測されるため、個々が向上心をもってスキルアップに励む必要があるだろう。海外と日本、両方の実態を肌で感じている留学生たちの意識から学ぶことは多いのではないだろうか。


【出典】株式会社パーソル総合研究所/パーソルキャリア株式会社の若年層向キャリア教育支援プロジェクト「CAMP(キャンプ)」 『留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査

作成/MANA-Biz編集部