リサーチ

2019.11.13

「リファラル採用」って何?経験者は既に約20%

ミスマッチのない採用は企業にも個人にも大きなメリット

慢性的な人材不足に悩む企業において、採用手法の多様化が進んでいる。総合転職エージェントの株式会社ワークポートは2019年3月に、『リファラル採用』についてのアンケート調査を行った(対象:全国の転職希望者371人)。新しい採用手法として企業からも転職希望者からも注目を集めているリファラル採用の実態や、メリット・デメリットについて説明する。

リファラル(referral)は英語で「紹介、推薦」という意味であり、リファラル採用とは、従業員の個人的なつながりを通して人材を紹介・推薦してもらう採用方法である。リファラル採用は、欧米においては既に主流となっており、日本国内でも取り入れる企業が増えてきている。
コネ(コネクション)採用、縁故採用と混同されがちだが、その意味は微妙に異なっている。
 
・コネクション採用……社内の有力者、OB・OG、有力クライアント、政治家など、その企業に対して影響力を持つ人物からの紹介で採用する方式。
・縁故採用……社内で一定の地位にある人物の親族や、大口取引先の血縁者など、企業に関係する有力者からの紹介で採用する方式。
 
これに対して、リファラル採用の紹介者には、地位や影響力の有無は問われない。社員全員、または企業のことをよく知る人物であれば、リファラル採用の紹介者になれる。採用試験や面接も形式上のものではなく公平に行われるので、コネ採用や縁故採用のように、「余程のことがない限り、ほぼ必ず採用される」というものではない。
 
株式会社ワークポートが実施した『リファラル採用についてのアンケート調査』において、紹介する側として、紹介される側として、またはその両方で「リファラル採用に関わった経験がある」と回答したのは、全体の22.9%だった。
 
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リファラル採用に関わった経験がないと答えた77.1%(286人)に、リファラル採用に興味はあるか」と質問したところ、68.2%が「はい」と回答している。その理由としては、「入社前後のギャップがある程度抑えられそう」、「人柄やスキルなど初対面の人事では判断しきれないものを、実績のある人に保証してもらえるのはありがたい」等の意見が挙げられた。紹介による信頼度の高さが、リファラル採用が関心を集めている最大の理由であるようだ。
 
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「在籍している(直近で在籍していた)会社では、リファラル採用のための取り組みが活発か」という質問に対して、「はい」と答えた回答者は19.1%だった。リファラル採用は、欧米では既に主流となっている採用方法だが、日本ではようやく注目され始めたという段階であるため、多くの企業に浸透していくのはこれからだといえるだろう。
実際に取り組みを行っている企業においては、社員紹介システムがしっかりと確立されていることや、採用に至った場合には紹介した人とされた人の双方に入社祝金が支給されるなどの工夫があるようだ。
 
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経験者にリファラル採用のメリット・デメリットを聞くと、以下のような意見が寄せられていた。
 
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企業と個人双方にとって、リファラル採用の最大のメリットは、ミスマッチを防ぐことができる点にある。優秀な人材をより確実に獲得したい企業にとっても、自分に合った就職先(転職先)を見つけたい個人にとっても、ミスマッチで受けるダメージは大きいので、そのリスクを軽減できるリファラル採用への関心が高まるのは必然だ。企業にとっては採用活動にかかる時間や費用といったコストも削減でき、まさに一石二鳥である。また、欧米で広く普及している採用方法であることや、コネ採用や縁故採用と比べて、「紹介ではあるが、正規の採用ルートを通す」というクリーンな印象も、リファラル採用が増えている背景にあるといえるだろう。
 
デメリットとしては、紹介する側・される側の双方に、少なからず心的なプレッシャーがかかってしまうことが指摘されている。このプレッシャーを緩和するためには、リファラル採用時に最終決定を行うのは企業であること、個人は正規の採用試験や面接を経て入社していることを、再認識する必要がある。この意識が浸透してこそ、リファラル採用のメリットが活かされ、日本でもより一層浸透していくのではないだろうか。
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部