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2022.01.25

ブロックチェーンとは?金融分野に限らない活用の可能性

知っておきたいトレンドワード5:ブロックチェーン

仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として生まれたブロックチェーン。「インターネット以来の発明」とも言われ、さまざまな分野でその可能性が模索されているが、どんな技術で何がすごいのか?

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンはデータベースの一種で、取引の記録を暗号技術を用いて多数の参加者に分散して保持させる仕組みです。仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として発明されましたが、従来のデータベースや情報管理システムと比べ、データの構造や管理方法において改ざん耐性に優れていることから、さまざまな分野での活用が期待されています。




ブロックチェーンが注目される理由とその仕組み

ブロックチェーンは次の3点が優れていることから、とくに金融資産、契約・権利・資産に関する情報、経営上秘匿性の高い情報などの管理において活用の可能性が見込まれています。

・ネットワークの一部に不具合が生じてもシステムを維持できる
・なりすましやデータ改ざんが困難
・取引の低コスト化が期待できる


ネットワークの一部に不具合が生じてもシステムを維持できる

従来のデータベースや情報管理システムは、中央管理者を置いてその仕組みを一元管理しています。したがって、中央管理者に不具合が生じると、システム全体が停止する可能性があります。一方、ブロックチェーンは中央管理者を置かず、すべての取引記録について同一のデータを参加者に共有し、常に同期する仕組みのため、ネットワークの一部に不具合が生じても、システムを維持することができます(図1)。

なお、同一のデータを参加者が分散して保持することから、ブロックチェーンは「分散型台帳」とも呼ばれています。

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画像元:総務省(2020)「ブロックチェーン技術の活用状況の現状に関する調査研究」より



なりすましやデータ改ざんが困難

ブロックチェーンでは、取引の記録を「ブロック」と呼ばれる塊ごとに記録し、ブロックを時系列順に鎖のように連結して保管します。「ブロックチェーン」という呼称はこの仕組みからきてきます。

3_wor_005_02.png 新しいブロックを作る際には、一つ前のブロックのデータから生成された「ハッシュ値」と呼ばれる情報をブロック内に記録します。そうして一つひとつのブロックが前後のブロックと連鎖して保存されているため、改ざんを試みても、変更したブロックから生成されるハッシュ値は変更前と異なるものになり、続くブロックのハッシュ値との整合性が失われます。

こうして、後続するブロックのハッシュ値をすべて変更するのは事実上困難なこと、また、ハッシュ値自体がデータのIDとして機能しデータの改ざんや破損があれば瞬時に検出できることなどから、改ざんはほぼ不可能とされています。



低コストで取引ができる

中央管理型のデータベースや情報管理システムでは、中央管理者に手数料を支払う必要がありますが、ブロックチェーンを用いたシステムは分散管理のため手数料が不要で、取引の低コスト化が望めます。



ブロックチェーンの課題

改ざん耐性に優れている一方で、新しいブロックを生成するためのデータ処理に数秒〜10分程度かかるため、即時決済など、即時性が求められる用途には不向きです。

また、処理能力の拡張性(システム使用開始後に機能追加や性能向上を行えること)や長期運用時の安全性の検証が不十分といった課題も見られます。これらの課題については、技術的にクリアできるよう研究が進められています。




ブロックチェーンの活用事例

ブロックチェーンは、金融分野のみならず、サプライチェーン、権利証明の登録・管理、各種取引・プロセスの自動化など、さまざまな分野で実用化や実証実験が進められており、より仕事や生活に身近なものになってきています。ここでは、活用事例を3つ紹介します。


事例1:電子印鑑システム「NFT印鑑」(シヤチハタ)

シヤチハタ株式会社は、株式会社ケンタウロスワークス、早稲田リーガルコモンズ法律事務所とブロックチェーンを利用した電子印鑑システム「NFT印鑑」の共同開発を進めています。

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のこと。ブロックチェーン上に所有者情報などを記録することによってデータ改ざんを防ぎ、真贋や所有権を証明することができるとされ、デジタルアートやゲーム内のアイテム・キャラクターの売買などでの活用が広がっています。
ほかにも、さまざまな企業がブロックチェーンを用いた電子署名や電子契約サービスなどの開発を進めており、ビジネスにおける「脱ハンコ」の方法が模索されています。

「NFT印鑑」プレスリリース



事例2:食品のトレーサビリティシステム(ウォルマート)

ウォルマート(アメリカ)は、IBM(アメリカ)が提供する食品サプライチェーンの追跡ネットワーク「IBM Food Trust」を用いて食の生産地から小売店舗の棚に並ぶまでの仕入れルートを追跡するシステムを構築しています。

生産・加工業者から卸売・流通業者まで、サプライチェーンに関わる関係者がウォルマートのトレーサビリティーシステムに原産地や取引明細、検査証明などの情報を提供すると、ブロックチェーン上に記録され、関係者に共有されます。そして、PCやモバイル端末から追跡コードを入力すれば取引を迅速に追跡できる仕組みにより、従来、数日かかっていた流通経路の特定が数秒で可能となり、食品の汚染や中毒が発生した際に迅速に拡散防止に動けるようになりました。また、サプライチェーン全体で情報を共有・管理することで、サプライチェーンを最適化してフードロスを最小限に留めることもできるとされています。
なお、「IBM Food Trust」は、カルフール、ネスレ、伊藤忠商事など食品にかかわるさまざまな企業で活用されています。

IBMとウォルマートの取り組み



事例3:デジタル証明書アプリ「IATAトラベルパス」(国際航空運送協会)

国際航空運送協会(IATA)は、新型コロナウイルス感染症の検査結果やワクチン接種記録をデジタル証明書として管理・参照できるアプリ「IATAトラベルパス」を、ブロックチェーン技術を用いて開発。一部の航空会社・国での正式導入や、JAL、ANAも含めた世界中の航空会社での実証実験や試験導入が進んでいます。感染症の検査結果やワクチン接種記録という個人の健康情報や、パスポート情報などの管理をブロックチェーンで行うことで、改ざんや情報漏洩を防ぎます。
ブロックチェーン技術を活用したデジタル検査証明やワクチンパスポートの開発は、ほかにも複数の企業・組織で進められています。

IATAトラベルパス
JALでの試験導入例


作成/MANA-Biz編集部