リサーチ

2021.10.26

コロナ禍が仕事の生産性に与えた影響

テレワーク下での生産性の向上・低下につながる要因とは?

コロナ禍が続き、企業からは「従業員の生産性が低下している」という懸念の声もあるが、ワーカー自身は生産性の変化をどう感じているのか。生産性の向上と低下に影響する要素はなにか。コクヨが実施した調査結果をもとに考察する。

コロナ禍の働き方が生産性に影響

COVID‑19(新型コロナウイルス)感染拡大前と現在とで仕事の生産性がどう変化したかを質問したところ、生産性に変化があった人が5割超みられました。
注目したいのは、「少し下がった」と「とても下がった」の合計が34.5%で、「とても上がった」と「少し上がった」を合計した20.8%を上回っていることです。コロナ禍によって、多くの人がテレワークで仕事をするようになりました。働き方が急激に変化したことも、生産性低下の一因ではないかと考えられます。

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生産性を左右する要因

生産性が上がった人と下がった人では意識・行動がどう違うのかを明らかにするために、「新型コロナウイルス感染拡大前と現在との変化」の回答を、「生産性が上がった」と感じている人と「生産性が下がった」と感じている人に分けて集計してみました。

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生産性が上がった人

「生産性が上がった」と答えた人のうち「ネットコミュニケーション量が増えた」人は73.0%で、「生産性が下がった」という人より10ポイントほど高くなっています。また、「会議で発言する回数が増えた」「仕事仲間とのコミュニケーション機会が増えた」と回答した人の割合が、いずれも「生産性が下がった」人の数値を大きく上回っているのも特徴的です。

これらの結果からわかるのは、生産性が高い人の自発的な姿勢です。思うように上司や同僚とコミュニケーションがとれない中でも、積極的に会議で発言したり、上司や仕事仲間とコミュニケーションをとったりと、前向きに行動しています。



生産性が下がった人

「生産性が下がった」と答えた人の回答で目立つのは、「独り言を言う回数が増えた」や「ため息の回数が増えた」「運動をする機会が減った」といった項目の数値が、「生産性が上がった」人に比べて高かったことです。孤独になりがちなテレワークで、心身の不調が生産性低下につながりやすいと推測できます。




信頼関係が生産性に大きく影響

興味深いのは、「上司との信頼関係」と「同僚との人間関係」の2項目は、生産性向上・生産性低下の両方に大きく影響している点です。つまり、「身近な上司や同僚との関係は良くも悪くも生産性を大きく左右する」と考えている人が多いことになります。

一方「会議の回数や時間」については、生産性低下への影響が高い一方で生産性向上への影響がさほど高くないことから、「会議の回数が多く時間が長いと生産性は低下するが、回数や時間を減らしたからといって生産性向上は見込めない」と考えられます。会議が減ればその分時間に余裕が生まれますが、せっかくの時間も使い方しだいということでしょう。

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コロナ禍の生産性向上の施策

コロナ禍において、生産性向上のためにワーカー本人が意識していることや、企業が取り組んでいることについて聞いてみました。


業務改革

「あなたが勤務する企業では、生産性向上を目指してどんな施策に取り組んでいますか?」と質問したところ、「紙資料の削減(データ化の促進)」や「業務マニュアルの整備・定期的なアップデート」、「資料のフォーマット化(ナレッジの共有)」など業務改革に関連する項目が上位に挙がりました。コロナ禍をきっかけにテレワークの働き方が拡がった今、スムーズな情報共有や業務の標準化の重要性は高まっています。生産性向上を実現するには、業務改革は不可欠と言えるでしょう。

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上司の意識改革

今回の調査で、「生産性向上を意識してもらいたい人は?」と質問したところ、「部長・課長など直属の上司」と答えた人が35%で、ほかの回答に比べて圧倒的に高い数値でした。やはり、直属の上司が生産性向上を強く意識していれば、業務改善の推進を担ったり、部下の働き方に対してアドバイスをしたりといったアクションが期待できます。

逆に考えると、「上司は生産性向上を強く意識できていない」と不満を感じているワーカーが多いことも推測できます。マネージャーの方の行動によって、部署やチームの生産性は変わってきます。今以上に生産性向上を意識し、行動することが求められています。



より具体的で積極的な働きかけ

ワーカー自身の働き方について聞いたところ、「常に生産性を意識して仕事に取り組んでいる」という人が約6割、「パフォーマンスを高めるために常に情報を仕入れ、働き方を変化させている」という人が5割と、生産性向上に対する高い関心がうかがえました。

ただ一方で、「自身の働き方について悩むときがある」という人も5割超みられ、意識は高いものの不安も抱くワーカーが多いことがわかります。

4_res_220_05.png なぜワーカーが不安を感じるのか、その一因と考えられるのが企業側や上司の意識や対応です。調査ではご自身の働き方に加えて、「あなたの勤務先や上司は、生産性や現状の働き方に対してどんな方向性を示し、どう発信していますか?」という質問も投げてみました。

まず目を引くのが、「会社から『残業時間削減』の発信がされている」と答えた人が約7割と高い数値を示していることです。残業時間は生産性の1つの指標とされているため、企業としても生産性向上に高い意欲を示していることがわかります。 しかし、「会社から、社員の働き方のアドバイスが発信されている」「会社から残業削減の施策やコツが発信されている」という人は2~3割にとどまっています。企業側は「残業を削減せよ」とはいうが、具体的な施策やコツは、ワーカー任せになってしまっているのではないかという懸念が浮上します。

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心身の充実

「あなたの勤務先で生産性向上のために行われている施策は?」という質問に対して、業務改革に関する項目とあわせて多かったのが、「有給休暇取得促進」や「体調管理」といった施策です。この結果からは、生産性向上を実現するには心身の健康を保つことが欠かせない、と企業側が認識していることが読み取れます。




まとめ

コロナ禍が本格化した2020年春、多くの企業ではテレワークが一気に推進されました。テレワークには通勤時間をカットできるなどのメリットがあり、「働き方が効率化されて生産性向上が見込めるのではないか」という期待の声もみられました。しかし、そこから1年半を経て「コロナ前より残業時間が増えた」「同じ勤務時間でもアウトプットの質や量が下がっている」など生産性低下の兆候を指摘する企業は少なくありません。

今回の調査で印象的だったのは、生産性向上を意識して取り組んでいるワーカーが多いにもかかわらず、生産性低下を実感している人も少なくないことです。テレワークが常態化する中で、「時間が効率化されただけでは生産性は高まらない」という現実が浮かび上がりました。企業側や上司から具体的な働きかけを積極的に行ってテレワーカーの意欲を高めていくことが、生産性向上の推進力となるのではないでしょうか。


調査概要

実施日:2021.7.7-9実施

調査対象:社員数500人以上の民間企業に勤めるワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件

【図版出典】Small Survey「生産性への意識」


河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

作成/MANA-Biz編集部