組織の力

2021.07.08

組織の課題を見える化するエンゲージメントサーベイとは

従業員のエンゲージメントを高める最も効果的な施策

エンゲージメントとは「従業員の自社に対する共感や思い入れ」を指し、エンゲージメントサーベイによって「従業員が職場環境、上司との関係にどんな思いを抱いているか」を把握できる。エンゲージメントサーベイ実施の具体的なメリットなどについて詳しく解説する。

エンゲージメントサーベイとは?

「エンゲージメントサーベイ」とは、企業が自社で働く従業員のエンゲージメントについて把握するために行う調査だ。調査はアンケート形式で実施されることが多く、従業員の回答を集計することによって「自社のエンゲージメントがどのような状態にあるか」を数値としてつかむことができる。



エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは本来、「愛着」や「思い入れ」などの感情を指す。企業と従業員の結びつきにおいては、「従業員が自社の企業理念やビジョンに共感している」「自分の会社や一緒に働く仲間に思い入れを持っている」などがエンゲージメントにあたる。



エンゲージメントとロイヤリティ、従業員満足度との違い

エンゲージメントと比較されやすい概念として、「ロイヤリティ」と「従業員満足度」がある。それぞれの意味は以下の通りだ。

ロイヤリティ:企業に対して従業員がどれだけ忠誠心をもっているか
従業員満足度:従業員が、報酬や待遇、社内環境などにどれだけ満足しているか

この2つは、いずれもエンゲージメントと似ているように感じられるが、実は大きな違いがある。ポイントとなるのは「従業員と企業の結びつき方」だ。ロイヤリティは「従業員が企業に対して忠誠心を抱いて働く」ため、「企業が上で、従業員が下」という上下関係が前提となる。また従業員満足度は、「企業が用意した報酬や待遇、環境などを従業員が評価する」ため、「従業員が評価し、企業は評価される」という関係性だ。これに対してエンゲージメントは、「企業と従業員が互いに関わることによって結びつきを強める」という関係性が基本となる。




エンゲージメントサーベイを実施するメリット

エンゲージメントサーベイを行うメリットは、ひと言で言えば「自社におけるエンゲージメントがどんな状態にあるか」がわかることだ。具体的には、「部署ごとにどんな課題があるか」「従業員が何を考えているか」を定量的に把握することができる。課題が明確になれば、解決のためのアクションがとりやすくなる。スピーディーに組織を改善していけることが、サーベイ実施の大きな利点といえる。



エンゲージメントが注目される背景

近年、組織経営の領域において「エンゲージメント」の概念が注目され、エンゲージメントサーベイを不定期で実施する企業が増えている。

エンゲージメントが注目される背景には、「人材の流動化」がある。多くの企業では、終身雇用・年功序列をベースとする従来型の人事制度が崩れ、成果主義型への移行が進みつつある。そのため、よりよい待遇や環境を求めて転職するビジネスパーソンがみられるようになってきた。自社で育成した人材が他社に流れてしまうことは、企業に大きな損失をもたらす。そこで、企業では人材確保に向けて、自社のエンゲージメントを高めることに注力し始めているのだ。

また、エンゲージメントに関する近年の研究からは、「組織のエンゲージメントが高いと、営業利益率や労働生産性にもプラスに働きやすい(※1)」と明らかになってきている。 これらの背景から、組織のエンゲージメント向上を目標として掲げる企業は増えている。実際、日本最大級のHRネットワーク「日本の人事部」が『人事白書2019』で発表した調査結果を見ると、アンケートに回答した約5000社のうち、「エンゲージメントは重要である」と答えた企業は9割に上っている。

※1:モチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学 大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール 岩本研究室との共同研究「エンゲージメントと企業業績」



日本の従業員エンゲージメントの現状

しかし、日本における従業員エンゲージメントは、グローバル視点で見ると決して高いとはいえない。例えば、米ギャラップ社が世界の企業を対象に実施した調査『State of the Global Workplace』の結果(2017年発表)では、日本企業の従業員エンゲージメントは6%と139か国中132位にとどまっている。



エンゲージメントサーベイで何がわかるのか?

エンゲージメントサーベイは、自社におけるエンゲージメントの現状をはかる目的で実施される。具体的には、組織課題や従業員の考え、自社と従業員の間にある考え方のギャップをあぶり出すことができる。

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エンゲージメントサーベイの重要調査項目

サーベイの質問として、自社で働くことを友人や知人に勧められるかどうかを問うだけでも、従業員が自社に対してどれだけエンゲージメントをもっているかが明確に見えてくる。 この設問をはじめ、従業員が仕事に対してもっている感情や上司、職場環境、企業風土に対する思いなどは必ず押さえたい重要調査項目だ。



自分の仕事や働き方に対してどう感じているか

従業員が自分の仕事や会社に対してもっている思いは、以下のような質問項目で測定することができる。中でも「自分が勤めている会社を、就職を希望しているほかの人に勧めたいか」は、自社に対するエンゲージメントが端的にわかる質問として重視すべきだ。

〈設問項目例〉
・今勤めている会社は、自分にとって働きがいのある会社か
・自分は仕事を通じて成長できていると感じるか
・自身の能力を仕事に活かすことができているか
・自分が勤めている会社を、就職を希望しているほかの人に勧めたいか


上司や職場環境に対してどう感じているか

職場環境に対する思いは、以下のような質問項目によって測ることができる。ひと口に環境といってもさまざまな要素があるが、「上司がどんなマネジメントを行っているか」「フラットな職場環境が実現できているか」は従業員のエンゲージメントに大きく影響するので、特に注目したいところだ。

〈設問項目例〉
・目標を達成するために、上司から必要なサポートを受けることができるか
・同僚に仕事上のアドバイスをもらったり、手助けを頼んだりできるか
・気軽に意見や考えを言い合える職場か
・職場では、メンバーが公平に機会を与えられ、評価されているか


自社をどれだけ評価しているか

従業員が自社をどう評価しているかは、以下のような質問によって測定できる。「会社は自分を大切にしてくれている」と感じることができれば、自社へのエンゲージメントも必然的に高まるので、これらの質問もエンゲージメントサーベイの中で重要項目といえる。

〈設問項目例〉
・職場には、多様な考え方を認める雰囲気があるか
・自社は従業員を大切にしていると感じるか



従業員のエンゲージメントを高める具体的な施策

エンゲージメントサーベイで自社の課題を「見える化」したら、課題解消に向けてアクションを起こす必要がある。課題を掘り起こしていくと、「上司のマネジメント」と「個人の意識改革」に集約されるケースが圧倒的に多いため、企業としてはこの2つを解決するための取り組みを行っていく必要がある。



上司のマネジメント改革

一般社員のエンゲージメントが低い場合、原因の8割は上司のマネジメントにあることが多い。部下が「上司は自分を承認してくれている」と感じられないことからエンゲージメント低下が起こっているのだ。

この課題を解決するには、上司がマネジメントのやり方を変え、部下が心理的安全性を感じながら働けるようにすることが必要だ。例えば、マネージャー向けのスキルアップ研修で笑顔をつくる・部下をほめる・傾聴するなどの練習をするのもよいだろう。 また、1on1(上司と部下が1対1で行うミーティング)を繰り返しながら部下が仕事で達成したいことを聞き、成長を促すことも必要だ。ただし声をかけるときは、部下の性格タイプを考え、その人に響く言葉を選ぶことを心がけたい。




個人の意識改革

マネージャーだけでなく部下(一般従業員)自身に原因があるケースもある。その原因として考えられるのは、その人が「スキルアップの必要がないと思っている」と考えていることだ。その場合は、スキルアップ研修が解決の糸口になる可能性は高い。仕事のスキルを高めることができれば「自分は会社に貢献できている」という実感がわき、自らチャレンジするようになったり、仕事にさまざまな工夫を取り入れて創造的に働けるようになってくるはずだ。



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従業員のエンゲージメントを高めることは働き方改革にも有効

働き方改革のゴールは、企業の視点からいえば「業績が上がり、企業価値が高まること」といえる。成果や価値の指標は企業ごとに異なるが、一般的には売り上げや利益、顧客満足度などを指すことが多い。

一方で従業員にとっては、「今より幸せになること」が一つのゴールといえる。働き方改革によってムダな仕事が減れば、新たに生み出された時間で、一歩先を見据えた業務に着手したり、自分磨きをしたりと、仕事へのやりがいを感じられるようになるだろう。これらの視点から考えると、従業員のエンゲージメントを高めることは働き方改革の成功につながると言える。なぜなら、一人ひとりがやりがいをもって働けるようになれば、「従業員の幸福度がアップ→成果が上がる→企業の業績や価値がアップする」という好循環が実現するからだ。





まとめ

エンゲージメントサーベイを行って自社の課題を「見える化」することは、働き方改革を加速させるのに有効な手段といえる。ただし、サーベイを実施するだけでは意味がない。みえた課題について原因を分析し、解決のための取り組みをしてこそサーベイが意義のあるものになる。たとえ結果が悪くても、「伸びしろがたくさんある」と前向きに考えて、働き方のクオリティを高める取り組みを続けることが大切だ。



生産性×働きがいupプログラム

『働き方改革』を一過性の活動ではなく継続的な活動としていくためには、生産性向上のみに着目するのではなく従業員のエンゲージメントを高め、社員一人ひとりが自分ごととして実践することが大切です。 当サービスでは「生産性向上」と「エンゲージメント」の状況を確認する調査から改革の実施までトータルでサポートさせていただきます。https://www.kokuyo-furniture.co.jp/solution/engagement_up/

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作成/MANA-Biz編集部