仕事のプロ
2020.12.11
組織の「心理的安全性」を高めるために〈後編〉
リーダーが身につけるべきスキルとは

近年、「心理的安全性」というキーワードがビジネスシーンで注目されている。組織やチーム内の心理的安全性が担保されることによって、メンバーが安心してハイリスクなチャレンジができるようになり、生産性向上につながると考えられるからだ。後編では、心理的安全性を高めるためにリーダーが取り組むべき具体的なアクションについて、コクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部コンサルタントの立花保昭が解説する。
心理的安全性の基本は信頼関係
前編では心理的安全性が重要な理由として、次の2つのメリットと、コロナ禍でリモートワークが増えた今だからこその重要性を挙げています。2つのメリット
・チームメンバーのパフォーマンス向上 ・チームのパフォーマンス向上テレワーク下だからこその重要性
物理的距離を原因とするコミュニケーション減や帰属意識低下によりチームの基盤が揺らぐ危険性があるため、心理的安全性の担保がより重要。
信頼関係を築くには 相手をまるごと受け容れる
では、「相手を承認する」とはどのようなことでしょうか。端的に言えば、相手をまるごと受け入れることです。
ポイント1:「ネガポジ変換」で相手をポジティブに受け止める
「自分は承認されている」「受け容れられている」とメンバーに感じてもらうためには、リーダーは相手のよい面に注目してほめる必要があります。 しかし、一般的に日本企業で働くビジネスパーソン(特に男性)は、ほめ下手と言われています。日本にはもともと減点主義の文化があるせいか、長所より短所を探す人が目立ちます。 しかし、ちょっとしたトレーニングを続ければ、誰でもほめ上手に変わることができます。そこで今回お勧めしたいのが「ネガポジ変換」というトレーニングです。これは、メンバーのネガティブな特徴を、ポジティブな表現で言い換える方法です。 例えば「おおざっぱ」を変換すると、「おおらか、細部を気にしない」となります。この方法によって、相手をほめるのが上手になり、自分自身も相手を受け容れやすくなります。
ポイント2:相手に合わせたほめ言葉をかける
ネガポジ変換を活用して、メンバーにほめ言葉をかけても『あまり相手の心に響いていない』と感じることがあるかもしれません。その場合は、相手の「ソーシャルスタイル」を推測したうえでほめ言葉を選んでみてはいかがでしょうか。 ソーシャルスタイルとは、アメリカの産業心理学者デビッド・メリルが提唱した「ソーシャルスタイル理論」に基づくコミュニケーション技法です。 これは、人のコミュニケーションスタイルは大きく「感覚型」「友好型」「行動型」「理論型」の4タイプに分けることができるという理論です。相手のソーシャルスタイルによって接し方を変えることで、円滑なコミュニケーションが可能になると考えられます。
デビッド・メリルの「ソーシャルスタイル理論」を基に作図
例えばプレゼンテーションを終えたメンバーをほめるときは次のような感じで声をかけると、相手に響くと思います。
感覚型の人:「提案内容は良かったね。相手も喜んでいたと思うよ」
友好型の人:「周りの意見を上手に集約できた提案だったね。メンバーが一つにまとまったのもあなたの力があってこそだね」
行動型の人:「厳しいスケジュールだったけど間に合ったね。結論が明確ですごくわかりやすい内容だったよ」
理論型の人:「資料の数字に説得力があり、納得感も高かったと思うよ。思いがけない質問にも対応できたのは、深いところまでリサーチができていたからだね」
メンバーのソーシャルタイプを見分けるには、普段からその人の言動に注目する必要があります。「感覚型だと思ってほめ言葉を選んだけれど、あまり響かなかった」といったこともあるでしょう。
しかし、ポジティブな視点をもってメンバーをよく観察することは、「相手を受け容れること」に直結します。観察を続けるうちに、相手のことがだんだんとわかってくるので、相手に響く言葉をかけられるようになるはずです。

立花 保昭(Tachibana Yasuaki)
コクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部 ワークスタイルコンサルタント/1級ファイリング・デザイナー/オフィスセキュリティコーディネータ
1990年コクヨ入社。出向した総合商社での大手流通業向け中国製品の開発・輸入・販売、コクヨでの開発営業、及び上海でのカタログ通販ビジネス立ち上げ等の経験を生かし、現在は企業向けの働き方改革の制度・仕組みづくり、意識改革・スキルアップ研修などをサポート。
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