仕事のプロ

2021.03.05

Withコロナ時代だから考えたい「ライフ・シフト」〈前編〉

「マルチ・ステージ」が人生を豊かにする

「人生100年時代」というキーワードはリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの共著『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)の刊行により、日本社会に急速に浸透したが、出版から4年を経た今「withコロナ時代だからこそ、ライフ・シフトの視点であらためて生き方を考えるとき」と語るのは、ライフシフト・ジャパン株式会社・代表取締役CEOの大野誠一氏。ライフ・シフトとはどのようなものなのかお聞きした。

新しく生まれる3つのステージ

マルチ・ステージのなかでも新たに生まれるものとして、次の3つが紹介されている。

1.エスクプローラー(探索者)

人生に問いを持ち、人生の旅を通じて自分と世界を再発見するステージ。何歳でもエクスプローラーになれる。

2.インディペンデント・プロデューサー

組織に雇われず、独立した立場でやりがいや人とのつながりに重きを置いた生産活動を実践するステージ。自分で自分の「職」を生み出す人。

3.ポートフォリオ・ワーカー

企業勤務、副業・複業、NPOなど、異なる種類の活動を同時に行うステージ。




「無形資産」がより重要になる

お金や不動産といった有形資産が大切であることはもちろんだが、今後はそれ以上に「無形資産」が重要になる。「無形資産」として紹介されているのは「生産性資産」「活力資産」「変身資産」の3つ。

1.生産性資産

仕事の生産性を高めるための資産(=スキル、知識、資格、経験学習、仲間、評判など)

2.活力資産

肉体的・精神的な健康と幸福(=健康でバランスの取れた生活、多様な友人関係、パートナーや家族との良好な関係など)

3.変身資産

変化に対応する力やマインド(=変化によるリスクを軽減できる知識、自分についての知識・深い自己認知、多様性に富んだ人的ネットワーク、新しいことや経験にオープンで前向きな姿勢など)

これからのVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代に特に重要な概念となるのが、「変身資産」。変化への柔軟な対応力に加え、起きた変化をポジティブに捉えることが大事だが、日本人は、変化することが苦手だったり、臆病な人が多い傾向にある。




新しいパートナー関係(シーソーカップル)

これまでの日本社会の制度や仕組みは、夫が会社員、妻が専業主婦、子どもが2人という世帯を「標準世帯」とし、これをベースにつくられてきた。しかしこれからは、夫と妻とが人生のさまざまなフェーズにおいてシーソーのように役割を変えながら生きていくことが求められる(シーソーカップル)。

夫しか働いていないと転職などもしづらく、人生の選択肢が狭くなる。また妻がずっと専業主婦というのは経済的にも無理がある。それぞれがキャリアを持ち、役割を変えながら生きていくというカップルが増えていくだろう。

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「これまで通りのモデルや考え方では確実にやってくる時代の変化に対応することは難しくなります。人生100年時代を豊かに生きるためには、まずはそのことに一人ひとりが気づき、自分の人生について考えを深め、変化していく必要があります。つまり『変身資産』を手にすることが重要になるのです」

後編では、コロナ禍のなか高まるライフ・シフトへの関心をひも解き、ライフシフト・ジャパンが提唱する『ライフシフト4つの法則』についても紹介する。



大野 誠一(Ohno Seiichi)

ライフシフト・ジャパン株式会社代表取締役CEO。1982年リクルート入社。『ガテン』『とらばーゆ』『アントレ』『ダ・ヴィンチ』の編集長を歴任。2001年パナソニックに転身し、2006年アクトビラを設立、代表取締役社長に就任。退任後、フリーランス時代を経て2011年ローソンHMVエンタテイメント取締役常務執行役員、2012年ハッツアンリミテッド副社長執行役員(現職)、2017年ライフシフト・ジャパンを設立。「人生100年時代」のマルチ・ステージ型ライフデザインを提供している。

ライフシフト・ジャパン株式会社
組織から個人として自立・自律した人生の主人公となり、100年ライフを楽しむ人たちをサポートすることを目的に、2017年10月に設立。ロールモデルとなるライフシフターの発掘・紹介・プロモーション、ワークショップや研修の開催、ライフデザイン支援のためのサービス・コンテンツの開発・提供、コンサルティングなどを行う。ライフシフト・ジャパンのホームページでは、ライフシフター約100名へのインタビューを掲載している。

文/笹原風花