リサーチ

2019.09.26

「#KuToo 」に見る、職場での身だしなみ強要の実態

独自調査で6割以上。ヒール・パンプス着用強制が「ある」

女性が職場ではく靴をめぐる議論が起きている。ヒールのある靴の着用を強制されることやそれによる健康被害などの弊害に対して反対を訴える声が高まり、ツイッターでは、“靴”と“苦痛”を掛け合わせた“「#kuToo」というハッシュタグが登場。そのキャッチーさも相まって瞬く間に拡散され、3万名近くもの署名が集まっている。女性の仕事中の靴をはじめとして、職場での身だしなみに関する規則は企業によってどのように定められているのだろうか。

Business Insider Japanが独自に調査した 「職場のハイヒール・パンプス着用、緊急アンケート」によると、アンケートに答えた205人中、6割を超える140人が「職場や就活などでハイヒール・パンプスを強制された、もしくは強制されているのを見たことがある」と回答した(回答者は女性184人、男性16人、その他7人)。「その他」と回答した7人も「レストランのアルバイトで持参するものとして入っていた」、「就活のときに洋服店のスタッフから『ヒール3〜4センチはマナー』と言われた」など、半ば強制的な指示もあったという。
 
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上記で「ある」と回答した人に、どのような方法で強制された、もしくは強制されたのを見たことがあるかという質問に対して最も多かったのは(複数回答可)、「マナー講座などで指導を受け、それに従っていた」50人、次いで「慣習になっていた」が44人。
一方で、「就業規則などに明記されていた」、「上司などから口頭で指示を受けた」など、雇用主から明確に強制されていた人も4割近くを占めた。
 
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職場でヒールやパンプスを強制されることを受け入れている女性もいるが、多くは「歩き回る仕事なのにヒールを実質強制する合理性を感じない」「1日中履き続けたら痛くなる」「なぜ女性だけがそんな苦労をしなくてはいけないのか」「災害時にヒールで避難や移動をするのは不安」など、ネガティブだと感じていた。加えて、靴擦れやそれによる出血、巻爪、外反母趾など足の健康被害に苦しんでいる声も多数。中には雇用主に声をあげて改善を求めるなど自発的な行動をしている声もあったが、多くは「通勤時のみスニーカーを着用している」「中敷を入れたり絆創膏をたくさん貼る」など、個人レベルで対処しているのが現状だ。
 
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加えて、髪型やメイクにも職場での細かなルールが存在しており、中には「前髪を分けておでこを見せる髪型を指定されている」「口紅はピンクベージュのみ、グロスはNG」など、謎の身だしなみのルールもあるという。
女性の問題ばかりではない。夏の軽装を促すクールビズが定着しつつあるが、男性も依然としてスーツやネクタイの着用が義務になっている場合もあり、顧客との商談など重要な局面においては、ジャケットの着用が欠かせない風潮がある。
 
もちろん、品格を求められるような特定の接客業や冠婚葬祭業などに従事する人への服装規定は必要であろうし、企業側の対外的なイメージもあるだろう。
とはいえ、ハイヒールを強制されていた人の中には「ヒールの高さなどまで細かく指示された。毎日足が痛く骨盤にも異常が出てきて苦痛だったので、その仕事をやめた」など、それが原因で転職した人もいた。ここ数年は記録的な猛暑が続いているため、炎天下の下をスーツ・ネクタイで長時間外回りをしていては、脱水症状を起こす可能性も否めない。
人材不足が懸念されている現代において、働き手が「苦痛だ」「退職したい」と感じるほどの身だしなみについての強制は、それが業務上必要かつ相当な範囲かを考える必要がある。理想は、既成概念を改良していきながら、働きやすさを考慮して必要に応じて選択できる自由度があることではないだろうか。
会社のあたりまえが行き過ぎた強制となっていないか、今一度見直してみる必要があるのではないか。
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部