仕事のプロ

2017.02.13

大塚グループ各社元社長大塚正士氏のトップとしての決断〈後編〉

チャンスを転機に変えることで誕生した世界に誇る陶板名画美術館

昭和48年に起きたオイルショックは、高度経済成長を続けてきた日本経済を一変させる出来事だった。建設業界も同様で、高層ビル建設に使用する大型タイルを開発したばかりの大塚オーミ陶業株式会社は、いきなり経営危機に直面する。良い商品をつくっても物が売れなければ経営は成り立たない。この危機を脱するために、大塚正士社長が目をつけたのが「美術陶板」。この発想の転換が会社の危機を救い、やがて世界に誇る陶板名画美術館である「大塚国際美術館」の設立へとつながっていく。

美術陶板で培われた
色彩再現の特殊技術

大塚オーミ陶業が大型タイル製造から美術陶板、肖像陶板に事業転換したころの主力商品は、公共施設のエントランスなどに飾られている壁面装飾の陶板であった。美術陶板は、陶器の大きな板に原画を転写し、作品の色や大きさを忠実に再現したもので、細かな色や質感まで求められる。建材タイルなどと違い、美術陶板の製作工程は多く、これまで建材タイルを開発してきた技術者には、新たな課題が突きつけられた。

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「美術陶板の場合、原画の色に忠実でなければなりません。陶板には釉薬で色をつけますが、細かな色を再現するためには釉薬の調整具合が重要になります。原料の配合を変えることで色、質感を表現していきますが、微妙な調整なので、技術者はかなり苦労したと思います。今では釉薬調合の技術により2万色もの複雑な色味を表現することができます。これは世界に誇れる大塚オーミ陶業の技術です」

大塚国際美術館(OTSUKA MUSEUM OF ART)

大塚国際美術館は、日本に居ながらにして世界の美術を体感できる「陶板名画美術館」です。古代から現代に至る、西洋美術史を代表する名画1,000余点を、陶板で原寸大に再現し、展示しています。約4㎞におよぶ鑑賞ルートには、レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』、ゴッホ『ヒマワリ』、ピカソ『ゲルニカ』など、美術書などで一度は見たことがあるような名画を一堂に展示しており、世界の美術館を味わうことができます。

文・撮影/㈱羽野編集事務所