仕事のプロ

2017.02.20

子育て×仕事の秘訣は積極的な姿勢

Vol.21 育児体験を社内の環境づくりに生かす

株式会社丸井グループ 健康推進部健康推進担当リーダー
渡辺 由紀さん
入社以来、8年間で6店舗での販売業務を担当。2005年からは紳士用品本部メンズバッグ事業部でバイヤーとして活躍。その後、Web事業部紳士用品課、プライベートブランドの商品開発、人事部労務課など様々な部署を経験。現在は健康推進担当として、「健康経営推進プロジェクト」の事務局で働いている。2011年出産、現在5歳男児のワーキングマザー。

育休中は社会との接点が
失われていく気分に
――妊娠したとき、今の会社で働き続けようという意思がありましたか?
産休に入る前は、Web事業部の紳士用品課にいて、販売商品の発注や、Webサイトの商品説明文作成、さらに通販カタログの制作にあたり、商品を決めたり商品説明文を書いたり、モデルの撮影に立ち合うといった業務を行っていました。自分はもともと働くのが好きなので、男性並みに夜遅くまで平気でバリバリ働いていたんです。主人も同じ会社なのですが、「出産後も働くんでしょ?」と言われるほど、仕事は自分の生活の一部になっていました。それで出産して1年間育休を取ったのですが、やっぱり仕事をしない生活は退屈だと感じましたね(笑)。それまでは、休みの日であろうが毎朝かならず新聞を読んで、雑誌を読んだり新しいスポットに出かけてトレンドを調べたりして、常にアンテナを張っていたんです。それをしなくてもいいという状況になじめなかった。何か社会とのつながりがなくなってしまうような怖さもあったので、早く仕事に戻りたかったですね。
とはいえ、実際に働きながら子育てをするということについては、母親は専業主婦でしたし、自分の職場も女性が少なかったので、想像すらつきませんでした。
――仕事と子育ての両立に対する不安はどのように解消していったのでしょうか?
最初は空いている時間にインターネットで、働きながら子育てをしている人の記事を調べたりしたのですが、そういう記事に登場する人って"スーパーママ"ばかりなんですよね(笑)。「朝4時に起きて資料作成して、家に帰ったらこども2人を寝かせつけてその後も仕事...」みたいな。こんなことはさすがにできない、と余計にモヤモヤしてしまいました。
そんな時、会社が行っている育児をしながら働く女性や出産育児休職中の女性を対象にした『育児ママフォーラム』に軽い気持ちで参加しました。
それで参加してみて、同じ会社でこんなにたくさん働きながら子育てをしている人がいるんだとわかりました。また、「保育園1年目は、たくさん菌をもらってくるから熱をすぐ出すよ」などリアルな情報も聞くことができたし、「こどもの体調が悪くなりそうなときなどは、早めに周りのスタッフと情報共有しておけば、急に休んでも引き継ぎが安心」といった経験に基づく仕事上の具体的なアドバイスも聞くことができて、不安もかなり解消しました。これなら両立もできるかも、と大きなひと押しになりました。
「こどもがいる」ことは
自分のプラスになる
――復帰直後はどのような仕事状況でしたか?
1日5時間の短時間勤務で、まずはメンズのバッグ売り場で販売担当に1年間就きました。復職した翌日にこどもが熱を出して1週間休むことになり、スタートは散々でした(笑)。また、私は16時半には退社していたのですが、売り場は19時頃から忙しくなるので、帰りづらい雰囲気がありました。自分も「職場に迷惑をかけてはいけない」という責任感からつい自分を追い込むようになってしまい、例えば周囲に気を遣わせないようにあえてこどものことを一切話さなかったりして、どんどん孤独になっていきました。
やっぱり自分には両立はできないのかなと悩んだし、こどもの面倒を見ている最中にも残した仕事のことを考えてしまうのがとても嫌で、その中途半端な状態に気持ちも落ち込みました。
――そこを乗り越えられるきっかけはあったのですか?
この時も、同じように他の店舗の短時間勤務で働く人たちと知り合って、お互い話し合えたことが大きかったですね。ちょうど社内で、短時間勤務と女性活躍推進の取り組みが始まっていた頃で、そのプロジェクトの委員が社内で公募されたので、手を挙げてみたんです。自分の悩みや抱える問題を声に出すことで環境の改善に繋がればいいし、子育ての体験が"強み"になるプロジェクトに参加することが、今後の自分の自信にも繋がると思いました。
いろんな店舗から、短時間勤務の人が集まってどうすれば働きやすくなるかを話し合ったり、アンケートを集計したりしたのですが同じグループ内で働くママたちのリアルな現状を知ることができて、みんなもこんなに頑張っているんだと励みにもなりました。

また、こどもがいながら管理職として働く先輩とも知り合えたし、会社にどのような子育て支援の制度があって、どう活用すればいいのかを把握することができたのも良かったです。
――その後、店舗の売り場担当から本社での商品開発課へ異動となりますね。子育てと仕事の両立に慣れていくにしたがって、何か気持ちの変化はありましたか?
本社に異動になってからは、周囲に短時間勤務の人も増えました。その人たちと話していて気づいたことがあります。独身の時は1日中仕事のことを考えていましたが、こどもがいると、仕事の時間と家庭の時間というのを切り離さなければならないですよね。それにより、かえってメリハリが生まれて独身時代より生産性が上がっているということです。
また、「こどもを育てている」という経験は、結果的に自分の"強み"になると思うようになりました。こどもがいたからこそ、先に述べたプロジェクトにも参加ができた訳ですし、自分にとっては、いろんな売り場やバイヤーとしての経験などと同等の自分の強みとして、今は、こどもがいることを前向きに捉えています。
男性も積極的に育休を取れば
仕事の楽しさも再確認できる
――仕事と子育ての両立では、パートナーのサポートも欠かせませんが、その点はいかがでしょうか?
育休の間、家事は私が全部やっていて、その流れで復職後も家事は自分でしていたのですが、さすがにきつくなって話し合いをしました。その後は、料理以外はすべてやってくれるので、家のことは子育てに専念できてとても助かります。また、同じ会社に勤めているので、保育園のお迎えなども仕事状況に応じて交代できるので、そこはありがたいです。
――御社では、短時間勤務者がフルタイムへの切り替えを段階的にできるよう、希望すれば月4回までフルタイム勤務ができるというユニークな制度を導入していますね。渡辺さんも実際に使ったことはありますか?
使っています。私は今、7時間勤務なのですが、フルタイムは8時間。たった1時間しか違わないのですが、実際に経験してみると、帰宅後の普段の流れが大きく変わってしまうことが分かります。逆に、仕事の面でもその1時間の恩恵を感じますね。この月4回のフルタイム体験は、フルタイム勤務に復帰したときをイメージするのにとても貴重な機会ですね。
――お子さんが小学4年生になるとフルタイム復帰となりますが、準備万端というところでしょうか。
そうですね。「小学4年生になったら、1人でご飯食べるんだよ~」とか「お母さんが帰ってくるのは20時ぐらいになっちゃうよ」とか、今からこどもに言っています(笑)。もちろん5歳だから、実感はないと思うのですが。

子育てってたぶん今だけだと思うんですよね。いつかは必ず手を離れてしまう。そのときのためにも働き続けていたいですね。仕事をしていると、自分が成長している感じを実感できるのが、楽しいんです。自分の会社が、育児に対するいろんな制度に恵まれていることがよくわかったし、同じ会社のママ友と話していると、長く働けそうだなというイメージも持ててきました。あと、育休で一度1年休んで、社会と離れていくような不安を感じたことで、より働くことの楽しさを実感できたのかもしれません。だから私は、男の人にもぜひ育休を取ってほしいなと思いますね。あの感覚を経験すれば、働くことって楽しいんだなと改めて感じるのではないでしょうか。

渡辺さんの ある1日


5:30 起床 ヨガ&ストレッチ 新聞を見る
6:45 朝食づくり
7:00 朝食、身支度
8:00 家を出る、夫が保育園にこどもを送る
9:00 出社
ミーティング、全店横断プロジェクト準備
17:00 退社
18:00 保育園にお迎え
18:15 帰宅、夕食準備
19:00 夕食
20:15 こどもとお風呂、夫が帰宅
21:30 こどもと就寝

文/イデア・ビレッジ 撮影/白木裕二