レポート

2021.02.19

「働き方改革」は具体的な「働く環境・マネジメントの仕組み」づくりへ

本質的なテレワークの実現で働き方はより自由に

テレワークの導入で、マネジメントや人事評価、コミュニケーション不足などの課題に直面している企業・組織は少なくない。「新時代のマネジメント」の実践事例を紹介するオンラインイベントが1月25日に開催された。登壇したのは、新型コロナウイルス感染症拡大以前より新しい働き方を実践してきた、K.S.ロジャース(株)代表取締役社長CTOの民輪一博氏と、コクヨ(株)働き方アドバイザーの坂本崇博氏。その様子をレポートする。

複数の所属先へのエンゲージメントを計量化し、
自社へのコミットを高める工夫につなげる

続いて、再び両氏によるトークセッションへ。話題は、次第にエンゲージメントへと移っていった。

1_org_116_02.png坂本:「コクヨでも、仕事の基礎スキル(リテラシー)と新しいことに前向きに挑める意欲(エンゲージメント)の状態をチェックする『働き方基礎力診断』の開発や、会議改善や電子ファイリングのアドバイザリー、オフィスに設置できる簡易個室や飛沫を吸い込む会議用テーブルといったオフィス家具の販売など、さまざまなかたちで企業・組織のテレワーク推進を支援しています」

民輪:「ワーカーのリテラシーとエンゲージメントについてのお話は、とても興味深いです。パラレルワークが進んで一人が複数の会社に所属することが当たり前になると、ワーカーにとって複数の所属先の優先順位や配分はどうなのかという視点が生まれます。弊社ではこのリソース配分をエンゲージメントと位置づけ、計量化する指標をつくろうとしています」

坂本:「一社に所属していることを前提としたエンゲージメント調査が多いですが、所属先が複数になったらどうなるかというのは、とても興味深いですね」

民輪:「私たちはこのエンゲージメントを『コミットシェア』と呼んでいいます。ワーカーにとってコミット先がいろいろあるなかで、企業としてはそのシェアをとっていかないといけない、自分の会社によりコミットしてもらわないといけないわけですから」

坂本:「『働き方基礎力診断』とうまく連携できるとおもしろそうですね」




ワーカーのもつノウハウや経験を共有できる
プラットフォームの開発が望まれる

続いて、司会により参加者からの質問が投げかけられた。

――副業やパラレルワークの観点も踏まえると、ワーカーが自分の経験やノウハウを共有できるプラットフォームがあるといいなと思います。現状では、LinkedInやSlideShareなどに散らばってしまっているように感じます。お二人はどのように情報発信をされているのでしょうか?

6_rep_003_06.jpg民輪:「先ほどご紹介した開発中のプラットフォームも、自分たちが蓄積してきたノウハウを共有できる場をつくろうということで取り組み始めました。正直なところまだまだですが、こういう質問があるということは、需要がありそうですね」

坂本:「ワーカー個人のプロフィールやポートフォリオについていうと、企業と社員の間に情報格差があると思うんです。必要な情報が必要なところに届いていないのが、副業・複業を妨げている一因なのかなと...」

民輪:「そうですね。個人のポートフォリオに応じて、あなたにはこういう企業やプロジェクトがマッチしそうですよ、とサジェストできるようなサービスも始められたらいいなと思っています」




働く場所の制約がなくなった今、次の課題は
時間と雇用形態。制約のない、より自由な働き方へ

坂本:「最後に改めて、これから働き方はどう変わっていくか、民輪さんのお考えをお聞かせください」

民輪:「まず、テレワークの割合が高くなり、サテライトオフィスやコワーキングが活用されるようになることで、人の出会いや流動性が生まれるのではないかと思います」

坂本:「ワーカーは、一社にしがみつくのではなく、いろんな人と交わる力をつけないといけなくなりますね」

民輪:「そうですね。あとは、制約をなくす方向に進むと思います。働き方の制約には、場所、時間、雇用形態の3つがあります。コロナ禍で注目されているのは場所の制約がなくなったことですが、時間や雇用形態の制約を取っ払えばより自由度の高い働き方が可能になるという点に、今後は注目が集まるのではないかと思います」

坂本:「場所だけではなく本質的なテレワークということですね。私も、規制緩和なども含めて、新しい時代に求められるソリューションについて考えていきたいと思います」

「これからは、個人がいろんなところに所属して、仲間をつくっていく時代です。キャリアで大きく成長する人に共通する特徴の一つに、いろんなことに好奇心をもち、セミナーや異業種交流会に積極的に参加するなど、偶然の出会いが起こるような振る舞いを計画的にしている、というのがあるそうです。今日もこの後交流会がありますので、偶発的な出会いを求めて、ふるってご参加ください。本日はありがとうございました」

この後、民輪氏、坂本氏を交えてオンライン交流会が行われ、2時間半にわたるイベントは盛況のうちに幕を閉じた。



坂本 崇博(Sakamoto Takahiro)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/働き方改革PJアドバイザー/一般健康管理指導員
2001年コクヨ入社。資料作成や文書管理、アウトソーシング、会議改革など数々の働き方改革ソリューションの立ち上げ、事業化に参画。残業削減、ダイバーシティ、イノベーション、健康経営といったテーマで、企業や自治体を対象に働き方改革の制度・仕組みづくり、意識改革・スキルアップ研修などをサポートするコンサルタント。

民輪 一博(Tamiwa Kazuhiro)

K.S.ロジャース株式会社代表取締役。京都大学大学院工学研究科電気工学専攻卒業。学生時代に学生ベンチャーを立ち上げ、卒業後にもAI系スタートアップに参画した後に、2017年にK.S.ロジャース株式会社を設立。政府機関や大手企業のシステム開発などを手がける。現在、リモートワークでのマネジメントに取り組む中間管理職を対象にしたサポートツールを開発中。


K.S.ロジャース株式会社
「エンジニアにとって最も働きやすい環境を作る」をミッションに掲げて2017年に創業。WEB・アプリケーションの新規開発・運営支援、CTOコンサルティングなどを手がける。従業員である約70名のエンジニアがフルリモート勤務を行い、「フルフレックス・雇用形態の切り替え自由・副業自由」というフレキシブルな働き方を実現。

文/笹原風花