仕事のプロ

2021.02.17

スキルを活かしてリモートで働く「ふるさと副業」〈後編〉

地方の老舗企業がスキルフル人材を雇用する

新型コロナウィルスの影響で働き方が大きく変わり、「ふるさと副業」という働き方に注目するビジネスパーソンが増えた2020年。石川県主催の社会人向けインターンシップ交流イベントに参加した株式会社柚餅子総本家中浦屋の中浦政克代表取締役社長と、イベントをきっかけに副業を始めた3人のメンバーに、「ふるさと副業」という働き方のメリットについてお聞きする。

「ふるさと副業」の経験を夢の実現につなげる

参加者3

首都圏の企業で自社製品のマーケティングを担当する平野さんは、高校時代から環境問題に興味があり、将来は都市開発の分野で活動したいと考えている。

2_bus_097_04.png「今回のプロジェクトに参加したのは、地方都市の企業の方がどんな悩みを抱えているのか、地方在住の方々はどんなニーズを持っているのかを知って、都市開発や環境に取り組むときの基盤をつくりたかったからです。ずっと東京で暮らす私にとっては、貴重な学びになるはずだと確信しました」

中浦屋のプロジェクトでは、データの現状分析と戦略策定を担当する。現時点では毎日データに目を通し、さまざまな角度からの分析を試みているという。

「中浦屋のお菓子は本当に美味しいので、そのすばらしさをエンドユーザーに伝え、中浦屋が長期的に成長していくためのお手伝いをしたいと思います」





副業で得られるスキルが
「個として生きる力」に直結

今回の副業プロジェクトに携わるビジネスパーソン3人に共通してみられるのが「企業に正社員として勤務しているだけでは安心できない」という危機感だ。コロナ禍で多くの企業が業績不振に陥っている中で、清水さんは「社会に放り出されてもやっていけるように、副業を通じて自分の市場価値を高めたい」と語り、平野さんは「会社の名前がない状態でどこまでできるのか、力を試したかった」と話す。

ビジネスパーソンとして重要なスキルの一つが、多様なメンバーと一緒に仕事をするためのコミュニケーションスキルだ。松岡さんは本業ではチームで仕事をする機会が少ないが、「副業で世代の違うメンバーと仕事をする中で、相手の心情を考えてコミュニケーションをとるようになった」という。

そして、本業と副業を両立しなければならないため、タイムマネジメントスキルも磨かれる。いずれのメンバーも、平日は正社員の仕事を定時までに終わらせ、夜の数時間と休日を副業の仕事に充てているそうだ。

松岡さんは、「今まで以上に本業の仕事をきっちりスケジュール化して集中し、副業のための時間をつくっている」と語る。ほかの2人も同じように、本業の時間を凝縮し、主体的に時間をつくりだして副業をしているという。

副業という働き方によって、自分の役割をしっかり担う責任感や、新しいメンバーと関係性を築きながら共働するためのコミュニケーション力、タイムマネジメント力など、ビジネスパーソンとして生き抜くためのさまざまなスキルが醸成される。

そこにさらに「ふるさと」という要素を加えることで、人材不足に悩む地方企業も、個として生きる力を高めたいビジネスパーソンも、大きなメリットを享受できるだろう。


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株式会社柚餅子総本家中浦屋

1910年に石川県輪島市で創業した老舗菓子メーカー。柚餅子をはじめとする伝統的な和菓子の製造・販売を手がけるが、近年は『金澤ぷりん』『輪島ぷりん』などの洋菓子も人気を博している。http://nakauraya.jp/

文/横堀夏代