仕事のプロ

2021.02.16

スキルを活かしてリモートで働く「ふるさと副業」〈前編〉

コロナ禍の今、都市部のビジネスパーソンが注目する新しい副業の形

「ふるさと副業」は新型コロナウィルスの拡大により、多くのビジネスパーソンが働き方を考え直すなかで、密かに注目を集めている。この「ふるさと副業」の発案者でもあり、リクルートキャリアで社会人向けインターンシップ事業「サンカク」の運営に携わる古賀敏幹氏に、「ふるさと副業」が生まれた背景や、その特徴についてお聞きした。

「ふるさと副業」とは

「ふるさと副業」は、古賀氏らが2018年に打ち出した副業の一形態だという。おもに都市部の企業に勤務するビジネスパーソンが、地方の企業に対して副業の形で携わる働き方で、リモートワークのスタイルも特徴といえる。職種としては、マーケティングや販促、プロモーション、商品企画など、事業成長に直結する分野における知識やスキルをもった人材が求められている。




地元に貢献したい想いから
「ふるさと副業」を発案

「ふるさと副業」プロジェクトの企画・運営を手がける古賀氏は、この働き方を発想した経緯を「自分自身の思いに基づくもの」と説明する。

「私は関西出身ですが、大学進学をきっかけに上京し、20年近くになります。東京で働きながら得たビジネススキルを活用して、地元に貢献したい気持ちはずっとありました。いろいろなビジネスパーソンの方とお話してみて、私と同じように出身地とつながりたいと考える方は一定数いるはずだと感じていました。そこで、その思いを『地元企業への副業』という形で結実できないかと考え始めたのです」

「ふるさと副業」のプロジェクトが始まる数年前から、ビジネスパーソンの間では副業・兼業への関心が高まりつつあった。古賀氏らが運営する社会人向けインターンシップ事業『サンカク』も、「副業には興味があるがなかなか踏み出せない」というビジネスパーソンをターゲットとしている。

「本業以外の活動をすることで『自信を持ちたい』という人は少なくありません。そこに"地元への貢献"という要素を加えればよいのでは、という思いは早くからありました。ただ実際には、『地元に貢献するには地方に移住して働かないと...』とためらうビジネスパーソンが多いのでは、という懸念もありました」


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地方企業の課題は
スキルフルな人材の不足

一方で、地方の企業側にも人材ニーズはあった。

「地方の企業は、長きにわたって人材不足の課題を抱えています。特に、マーケティングや商品企画などの知識・スキルをもつビジネスパーソンはなかなか地方では見つかりません。そこで企業は、これまでは都市部のビジネスパーソンにU・Iターンによる転職を提案し、人材を確保しようとしてきましたが、実際には移住に踏み切れないビジネスパーソンが多く、マッチングが実現するケースはあまりみられませんでした。ですから、副業という形で都市部のビジネスパーソンと地方の企業が出合う機会を提供できれば、課題解決につながると思いました」

ただしそうなると、副業者はリモートワークの形をとることになる。コロナ禍前はリモートの働き方が普及していなかったため、「地元企業が躊躇するのでは」という懸念があったという。




地方企業の本気度と
ビジネスパーソンの想いがマッチ

現在の「ふるさと副業」につながるアイデアは、思いがけない形で実現することになった。リクルートキャリアの福岡県の営業所から、「ある企業から、『サンカク』のサービスを使って、首都圏の人材に声をかけてほしいと相談された」と声がかかったのだ。

古賀氏は半信半疑だったが、副業人材を求める企業はほかに何社も出てきたという。地元企業複数社の本気度を感じたリクルートキャリアでは、2018年に福岡県でマッチングイベントを実施した。

「定員が100人程度に対して、イベントに参加したいとエントリーしてくれた方は200人以上いらっしゃいました。地元に副業の形で貢献したい、という熱い思いをもった人がたくさんいるのだな、と実感しました」

このイベントでは3社のマッチングが成立した。うち1社では、現在も首都圏のビジネスパーソンが副業で仕事をしている。


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古賀 敏幹(Koga Toshiki)

株式会社リクルートキャリア「サンカク」の事業開発を担当。東京工業大学大学院卒業後、ソフトウェアエンジニアとして大手電機メーカーに就職。新規事業開発を担当後、「サンカク」が立ち上がったタイミングでリクルートキャリアに転職、サンカクのプロダクトおよび事業開発を担当。「社会人のインターンシップ」「ふるさと副業」の立ち上げなど、社会人の社外活動を支援することを主軸に、企業の経営支援や採用ブランディングの支援を行っている。

文/横堀夏代