仕事のプロ

2021.02.16

スキルを活かしてリモートで働く「ふるさと副業」〈前編〉

コロナ禍の今、都市部のビジネスパーソンが注目する新しい副業の形

「ふるさと副業」は新型コロナウィルスの拡大により、多くのビジネスパーソンが働き方を考え直すなかで、密かに注目を集めている。この「ふるさと副業」の発案者でもあり、リクルートキャリアで社会人向けインターンシップ事業「サンカク」の運営に携わる古賀敏幹氏に、「ふるさと副業」が生まれた背景や、その特徴についてお聞きした。

コロナ禍で
「ふるさと副業」の動きが加速

さらに2020年のコロナ禍で、「ふるさと副業」へのハードルは格段に下がったという。

「大きかったのはリモートワークの普及です。オフィス以外で働くスタイルが浸透したことで、ビジネスパーソンが自由に使える時間が増え、その時間を副業に充てられるようになったのです。地方の企業にとっても、リモートワークという形は一気に身近になったのではないでしょうか。さらに、互いに離れた場所にいてもオンライン会議などでコミュニケーションがとれるようになり、地方の企業と都市部に住むビジネスパーソンとの距離は確実に縮まりました」

2020年10月には、石川県主催でマッチングイベントを開催。エントリーした3社中2社でマッチングが成立し、数名のビジネスパーソンがリモートワークで副業をスタートしている。




見えてきた
副業プロジェクトの課題

ただし、「ふるさと副業」の動きを加速させるには、いくつかの課題があると古賀氏は指摘する。まず挙げられるのが、地方企業とビジネスパーソンとの間にみられる温度差だ。

「福岡県で『ふるさと副業』が実現できたのは、地元企業側にリモートでの副業に理解があったからこそ。でも、まだまだ多くの地方企業では、リモートワークで副業者を受け入れることに対してイメージが湧いていません」

「コロナ禍で盛り上がった、ビジネスパーソン側の『ふるさと副業』へのニーズを活かしていくため、移住に直結しなくても、まずは地域の関係人口を増やすという観点で『ふるさと副業』をご理解いただけるよう、地方自治体などと連携しながら啓発しています」

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また、「ふるさと副業」プロジェクトの進め方においても課題が出てくる場合がある。

「事業成長に向けて何をするべきか、から考える場合は特に、プロジェクトを開始する段階で『何をゴールに設定するか』『どんなロードマップで進めるか』を明確に決めて共有することが欠かせません。ここが曖昧なまま走り出すと、企業とビジネスパーソンの間に食い違いが起こりやすくなり、プロジェクトの成功は望めないでしょう。貢献意欲を生かし切れずに、ビジネスパーソンが自信を失ってしまうのも残念です。今後は私たちが、この部分をサポートしていくことも検討中です」

コロナ禍の思わぬ影響によって地方と都市部の心的距離が近くなっている今、「ふるさと副業」という新しいワークスタイルは、今後も多様な拡がりをみせていくだろう。

後編では、石川県主催の社会人向けインターンシップ交流イベントにエントリーした地場企業と、イベントをきっかけに副業へ踏み出したビジネスパーソンたちの声を紹介する。



古賀 敏幹(Koga Toshiki)

株式会社リクルートキャリア「サンカク」の事業開発を担当。東京工業大学大学院卒業後、ソフトウェアエンジニアとして大手電機メーカーに就職。新規事業開発を担当後、「サンカク」が立ち上がったタイミングでリクルートキャリアに転職、サンカクのプロダクトおよび事業開発を担当。「社会人のインターンシップ」「ふるさと副業」の立ち上げなど、社会人の社外活動を支援することを主軸に、企業の経営支援や採用ブランディングの支援を行っている。

文/横堀夏代