組織の力

2016.08.22

30年以上健康経営を支えるサンスターの「心身健康道場」〈前編〉

組織の活性化に必要な社員の健康

ワークスタイル変革のキーワードとして注目される、「ウェルビーイング(well-being)」。オフィスで働く人々が身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態にあることを意味し、労働意識の高い優秀な人材を確保するためにも、今後、自社内のウェルビーイングへの取り組みが企業の重要な課題といわれている。サンスターグループの社員向け福利厚生施設「心身健康道場」は、特定健診で積極的支援が必要とされた社員などを対象に生活習慣や健康バランスの見直しを支援している。ウェルビーイングを30年以上も実践し続けるこの施設について、現道場長の門脇敏夫さんに、その成り立ちや内容について話を伺った。

社員の健康状態を通して
職場環境の見直しもできる

「心身健康道場」の入門は業務扱いとなり、出張旅費をはじめ、施設の利用や食費などはすべて会社と健康保険組合がまかなうため、自己負担は一切かからない。「予防」にお金をかけることで、医療機関に収めるお金を軽減でき、なおかつ病気になった社員の長期的な戦線離脱など仕事や職場への悪影響を防げれば、結局企業側にとっても費用的なメリットは大きいのだ。それに、職場の問題点も見えやすくなるという。
「出張交通費などは部署の費用となるので、例えば部署内に毎年健康道場に行っている社員がいたとすると、それが支出として目に見えてわかる。そうすると、そもそも仕事の配分に問題はないのか、ストレスがかかることをしていないかなど、上司の判定材料にもなるんです」(門脇氏)
「心身健康道場」の高い効果が実証されてきたため、2015年の秋から「35歳」の社員全員を対象者とする指導も開始した。特に男性は、ちょうどお腹周りが気になり始める年齢だ。ここで「自分はまだ大丈夫」と思っている社員に、生活習慣改善の「気づき」を与えることで、早期の行動変容に繋がることを期待している。また、噂を聞きつけた社外の一般の人からもぜひ体験したいという声があり、通販会員限定の「出張健康道場」を経て、一般の方にも楽しい旅の形で提供できるよう、2016年6月より熊野古道で健康道場の玄米菜食や運動を体験できる「健康道場ツアー」というサービスを開始している。
こうして早くから社員の健康に注目して活動を続けてきたサンスターにとって、企業におけるウェルビーイングの重要性を、どのように感じているのだろうか。門脇さんに伺った。
「創業者の突然の死による混乱の経験と、それがきっかけで生まれた道場がこのように良い効果を生んでいる現実とを見ると、会社に携わる者みんなの健康についてきちんと考えないと発展はないのではないか、ということを企業として身に染みて感じています。心身ともに健康であれば、社員それぞれが能力を存分に発揮できて、それは結局企業の利益に繋がります。当社の理念は“常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する”というものですが、それを自社内でもしっかり行い、ウェルビーイングのさらなる充実をめざしていきたいと思っています」
1_org_017_03.jpg

文/イデア・ビレッジ 撮影/上田浩江