ライフのコツ

2014.05.14

イギリスのお稽古はミュージカル!

世界の学び/イギリスのこども達は運動不足?!

世界の教育情報第4回目は、イギリスからのレポートです。ロンドン近郊のセント・ジョーンズウッドで3人の男の子を育てながら、キャリアコンサルタントのお仕事をされているオダギユイさんからの2回目のレポートは、気になるイギリスのお稽古事についてのお話です。

12歳になるまでは保護者同伴必須のイギリス
イギリスでは、11歳以下のこどもに対して保護者の同伴が義務付けられており、1人で出かけることはおろか、1人で留守番させることもできません。したがって、毎日の学校やお稽古事の送迎、そしてお友達の家にあそびに行く送迎等々、全ての送迎を保護者(親またはそれに替わる人)がやり、大人の目の届く状況でこどもたちを守ることが習慣づいています。これは、誘拐や性犯罪からこども達を守る為のものです。
12歳になると一気に自由度が広がり、1人での外出が出来るようになる上、きょうだいの送迎をすることも可能になります。
渡英した当初は、「イギリス人はなんて過保護なのだろう!」と驚き、公園ではこどもの数と同じ数位の親がいる光景に違和感を感じました。そして、こどもの送迎に大半の時間を費やさなければならないことに慣れず、その大変さに四苦八苦しました。生活に慣れても送迎の大変さは今も変わらないですが、習慣にはなりました。
イギリスのワーキングマザー達は、こどもの学校やお稽古事の送迎にナニーやシッターを雇って対応しています。ナニーは、大抵住み込みでこどもの世話をしています。シッターは時給制で働いています。 大体ナニーの時給の相場は£10(£1=175円)平均と言われています。月額で数十万をナニーに支払っている人も珍しくなく、イギリスでは母親が仕事を続ける為にはかなりの出費が必要となります。
長男二男の通う小学校では"Break Fast CLUB"というのがあり、始業時間(8時50分)よりも1時間前に登校し、朝食を食べさせてあそばせてくれる制度があるので、ワーキングマザー達の中にはこの制度を利用している人もいます。参加費は1回£2です。
ハイテク大国の日本は、防犯ベルや携帯が発達していて、こどもにGPSつき携帯電話を持たせて位置を確認できるようにしたり、いざという時の為に大音量が鳴る防犯ブザーを持たせたり、各種防犯グッズを活用することでこどもを危険から守ろうとする流れがあります。欧米ではその手のハイテク機器は特に脚光を浴びていません。アナログな形ですが、自らの手でこどもを守ることが最も手堅い防衛手段だという意識が強いのではないかと思います。法律で義務付けられているということもありますが、社会全体でこども達を守ろうとする意識が高い点が日本とは違うと感じています。例えば、幼児が1人で道を歩いていると、必ず周りの大人たちが立ち止まり保護者の所在を確認したり、保護者がその子の近くに来るまで待っていたりすることが当然だと考えられています。
イギリスの小学校の送り迎え風景。11歳までは大人の送迎が必要。
公園であそぶこどもたちには、多くの大人が付き添う。


体育の授業が週に1回!運動不足かも?!
日本の小学校では、週に平均3回体育の授業があると聞きましたが、イギリスの小学校では、体育の授業が1週間に1回しかありません。また、その体育の授業内容も日本とは大きく異なりマット運動や体操、鉄棒、縄跳び等はやらず、球技が中心です。公園の遊具にも鉄棒やうんていはないので、イギリスの子たちの多くは、鉄棒に触れることなく大人になります。またでんぐり返しや開脚前転、跳び箱等を知る機会もないのではないかと思われます。
そう考えると、日本の体育の授業はとてもバランスがとれている上にレベルが高く、明らかに、日本の子たちはイギリスの子たちに比べると沢山の運動に触れて成長しており、基礎運動能力が高いと思われます。日本の体育の授業の充実ぶりを知っている私としては、イギリスの小学校の体育の授業の様子や運動量の少なさがとっても気になります。


お稽古事のプログラムが充実している理由
前述のとおりイギリスの学校は、

・こども達の学校が終わる時間が早く、放課後の時間が長い
・体育の授業が充実していないため、こども達が運動不足
・常に保護者が同伴し、送り迎えをしなければならない

という特徴がある為、イギリスではお稽古事のプログラムが充実しています。


多種多様なお稽古事
イギリスのお稽古事は、芸能系、運動系、音楽系、学習系と大きく4つに分けられます。
芸能系では、ミュージカル、パフォーム、ダンス、バレー、運動系では、フットボール、テニス、クリケット、スイミング、空手、少林寺拳法、キックボクシング、乗馬、ジムナスティックス、ゴルフ、音楽系では、ピアノ、ヴァイオリン、フルート、ギター、美術系では、絵画教室、クラフト教室、学習系では、KUMON、学習塾...等々があります。日本では、学習塾に通っているこども達が多いようですが、イギリスでは日本のような学習塾は極わずかです。そのかわり、学習意識の高い家庭では、チューターと呼ばれる家庭教師を雇い、学校の勉強や受験勉強をこどもに教えてもらっていることがあります。
日本でも人気ですが、フットボール(サッカー)発祥の地イギリスはフットボール熱が高く、皆どこかのチームのサポーターだと言っても過言ではない位です。親子代々フットボール好きなので、こどものお稽古事としても人気です。男子に限らず女子のフットボールチームもあります。練習には、それぞれ自分がサポートしているチームのユニフォームを来て参加します。2時間以上ある練習時間をずっとグラウンドでこどもたちを見守り続ける親たちもいて、ミニゲームの時には大声で声援をおくっています。真冬で凍てつく寒さの中でも、小雨の降る日でもその数は減らないので、その熱心な姿に色々な意味で感心してしまいます。
サッカー教室を見学する大人たち。お父さんの姿が多く、サポートしているチームのユニホームを来ているお父さんの姿もみられる。
ミュージカルの本場、イギリスならではのお稽古事は、ミュージカルクラスやパフォームクラスです。パフォームクラスは、学期毎に1つのミュージカルや劇を生徒たちでつくり上げ、学期末に親たちを観客に発表会をするお稽古で、先生たちは舞台俳優の卵たちや、劇団員達です。我が家ではそれぞれの送迎を私一人でするのは無理なので、"きょうだいが一緒に通えるお稽古事"がお稽古事を決める時の第一条件になっているので、長男が歌、二男がダンスを習いたいと言い出したときは、2つの要素を兼ね備えているパフォームクラスを選択しました。
渡英して間もなく、英語力のおぼつかない時期に通い始めました。1人ずつに配役があり、多かれ少なかれセリフがあります。当然のことながら入った当初、彼らはセリフ1回のみの端役でした。それでも、皆で踊るダンスや歌を覚えたりセリフを覚えたりするのを家でサポートする必要がありました。 学校の宿題もあるのに、お稽古事の練習もやらなければならない状況に、「ちょっと面倒なお稽古事を選択しちゃったかな・・。」と思ってしまった位です。
ところが、英語力の上達と共にパフォームクラスでの彼らの様子が大きく変化しました。何度も何度も反復してやっと覚えていたセリフが、2学期目には難なく1回で覚えられるようになり、先生の褒め言葉でスッカリ自信をつけ、3学期目には長男が主役に抜擢されました。4歳から8歳までのクラスの中で、年長者だということもありますが、配役発表後、誇らしげに報告してきた姿は喜びに満ちていました。楽しいレッスンの中で、自己表現力や英語力がつき、観客を前にして堂々と演じている姿を見て、このクラスの醍醐味を感じました。
本格的な衣装を身にまとった発表会。衣装は保護者の手づくりしたり、購入したりして各自が用意します。
学校のみならずお稽古事の送迎までもやらなければならないのは大変ですが、こどもの成長やちょっとした変化に常に触れることが出来る点は嬉しく思っています。

また、お稽古事の場では親子共々友だちの輪が広がるのも魅力の1つです。こどもを送った後、親たちは待合室やロッカールームで読書をしたり歓談したりして時間を潰しながらレッスンが終わるのを待っているので、その時にこどもの学校での話や教育の話をしたり、世間話をしたり、情報交換をしたりします。お稽古事の場で毎週顔を合わせていると自然と仲間意識も芽生え、親子ともども仲良くなりやすいので、お稽古を楽しみに通っています。

オダギ ユイ

大学卒業後、㈱NTTドコモに入社。スマートフォン系の新規開発部所属時に、心理系の勉強を開始し、産休育休中に各種専門資格取得。自らの復職経験から、ワーキングマザーのマインド支援の必要性を感じ、キャリアコンサルタントとして個別セッションやセミナー開催するオヤコラボ、ワーキングマザーのお悩み解決を主旨としたワー育.jpを立ち上げる。2012年春に夫の転勤により、家族で渡英。ワー育.jp London支部を立ち上げ活動中。
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