仕事のプロ

2014.02.26

仕事で活かせる「伝え方」の極意

ワークスタイルアドバイス/セルフプロモーション

もっと自分らしく、自信を持って働きたいワーキングマザーに向けて、様々な専門家からのアドバイス「WorMo’的ワークスタイル」専門家アドバイス編。
今回は、『セルフプロモーション』の専門家であり6歳女児の母でもある近藤洋子さんに、「相手の心をつかむ伝え方」や「共感を生むコミュニケーション」についてお話を伺いました。

インタビューアー/WorMo'編集長 河内律子(3歳児のワーキングマザー)

誕生のきっかけは
4000人超のインタビュー経験
――『セルフプロモーション』ってあまり聞き慣れない言葉ですが、どういうことをするのでしょうか?
『セルフプロモーション』とは、自分の個性・才能・強みを探し出し、自分自身を魅力的にプロモーションすることです。相手や状況によっても効果的な訴求方法は違うので、"伝え方"が非常に重要になってきます。
私が『セルフプロモーション』を意識するようになったのは、ラジオDJとして4,000人以上の方へのインタビューから。アイデアも素晴らしく誠実に仕事に取り組んでいるのに、「伝わらない」という理由で成果を出せない方が多数いる一方、成功している方は皆、"伝える力"と"共感力"が非常に高い、ということに気づいたんです。そこで、その気づきを女性経営者の方たちにアドバイスさせていただいたところ、想像以上の反響をいただき、コンサルティングや研修の依頼をされるようになりました。そうして皆様に必要とされ、出来上がったのが『セルフプロモーション』です。

――なるほど、『セルフプロモーション』では、"伝える力"と"共感力"が重要ということですね。確かに、私もそうなのですが、伝えることが苦手と思っている人はたくさんいるように思います。"伝える力"を身につけるにはどうすればいいですか?
まずは、自分の強みや魅力といった個性に気づくことが大切です。自分はどんな人間なのか、どんな強みを持っているかなど、自分を知ることで、自分を磨くことができます。また、自分の個性は何なのか、周りの人に聞いてみるのもいいですね。自分では気づかなかった魅力が見つかるかもしれません(笑)。

「共感力」と「間」が
コミュニケーションのカギ
――魅力を磨くってステキですね。また、周りの人に自分について聞く、ですか・・・どんな風に見られているのかちょっとドキドキです(笑)。実際には、自分の個性を"伝える力"としてどう活かせばいいですか?

職場などでは、相手の心をつかむほめ言葉をプラスして、ファンになってもらうんです。 「昨日のセミナー良かったですよ」と単に感想を伝えるだけでなく、「おかげでモチベーションがアップして、今朝から○○を始めました」など、相手の影響力を具体的に、さりげなく伝える。それだけで、一過性ではない良い関係が築けます。それにプラスするほめ言葉に個性を出すことができますしね。 また、本人に直接言うのが恥ずかしい方は、第三者から間接的にほめ言葉を伝えてもらう『かげぼめ』も有効です。ほめ言葉を伝えた人も気分がよくなって一石二鳥ですよ。

――会話する相手が会ったばかりだと、どんなことに興味があるかわからず、話の糸口をつかむのに苦労するときもありますが...。
そうですね、だからこそ自分の強みや魅力を知っておく必要があるんです。「人を見て法を説け」ということわざの通り、相手によって響くものや共感できることは違うので、伝え方や切り口を変えて話すように心がけることが大切です。そして一方的に話すのではなく、相手の言葉に耳を傾け、表情を見て、会話を交わす。そうすると、自分と共通していたり似ていたりする、共感できるポイントが見えてくるので、その共感ポイントから話を膨らませることができますよ。

また、会話するうえでは、相手に話が染みこむ「間」を与えてあげることも大切です。けっして饒舌な喋りが心をつかむわけではありません。スラスラ淀みなく営業トークをされたけれど、何にも心に残らなかった...なんて経験はありませんか? これは、説明や説得は、左脳へアプローチすることと関係しているのですが、左脳はリスクを司る部分でもあるので「なんかイヤだ」と反応し、リスク回避しているわけです。 逆に、たどたどしくても「もっと話を聞きたい」、「なんだか好感が持てる」と思ってしまうのは、相手の共感ポイントを刺激するような言葉と、話を味わう「間」が、感情を司る右脳に働きかけたから。「間」というのは、テクニックではつくり出せない、本当に自分が感じた言葉や相手の気持ちを推し量る心の余裕から生まれるものなんです。

――「間」ができると、「もっと何か話さなきゃ」と心配になってしまいますが、本当はその「間」が大切なんですね。
伝えることが苦手という人の中には、「間」を我慢できない、ということのほかに、ボキャブラリーが少ない、話が飛んでしまう、という悩みも聞かれます。
「誰に対して何を伝えるのか? 何が伝われば、その話のゴールなのか」をきちっと意識することです。そうすると、自分が相手に伝えるべき情報やネタが自然と抽出され、話が脱線することも減るはずです。また、ゴールが明確であれば、脱線しても戻せますよね。 ニュースを家族に話すことでも「伝え方」や「要約」の練習ができます。
また、形容詞を使わずに表現する遊びをすると面白いですし語彙も増やせますよ! スイーツを食べて「おいしい」だけではなく、「生クリームが口の中でスーっと溶けるよう...」と表現するとか。「伝え方」は一朝一夕で身につくものではなく、日々の蓄積で得られるものなので、普段から意識的に伝わる言葉を選ぶようにするといいですね。

――「伝え方」も特訓で鍛えられるんですね!では、自分の言葉が正確に相手に伝わったのか、どう判断されているのですか?
相手の表情や反応をよく観察するようにしています。そして、まだ真意が伝わっていないと感じたら、具体例を加えたり、言い方を変えたりして、いろんな角度からお伝えします。話し手は、話すことにばかり気が行きがちですが、同時に「聞き手」でもあるので、相手に伝わっているかどうか、相手の表情などから感じ取らなければなりません。もし、グレーなことがあれば、きちんと言葉に出して確認する習慣をつけましょう。コミュニケーションのベースは、相手と自分は違うものだと認識すること。「言ったのに伝わらない」のは、相手のせいではありません。

――「伝わったことが伝えたこと」といわれますしね。苦手な私もとても納得できます(苦笑)。

セルフプロモーションで
こどもの「考える力」を伸ばす
――お話を伺うほどに『セルフプロモーション』とは、コミュニケーションそのものだと感じます。こどもにも身につけてほしいスキルですね。
そうですね。こどもと話すときには、具体的な表現を促す声がけをするといいですよ。こどもが「おいしい!」と言ったら「どんなふうに?」、「すごい!」と感動していたら「何がすごいの?」と言うように。 また、絵本を読み聞かせする時にも活かせますよ。 例えば『おおきなかぶ』という絵本の場合、「このカブはどのくらい大きいのかな?」と質問してイメージを広げてあげれば、「考える力」や「想像力」も育まれます。

――ワーキングマザーの多くが、こどもと過ごす時間が短いことを気にして、短時間でもしっかりとコミュニケーションを取りたいと考えていると思いますが、「伝える力」が伸びれば、親子間のコミュニケーションにもいい影響がありそうですね。近藤さんは日頃、お子さんと接する際に工夫されていることはありますか?
私は毎晩、眠る前に娘と「今日のよかったこと」を話し合う時間をつくっています。「ランチで食べた○○が美味しかったんだ」とか「お仕事でこんないいことがあったよ」など。娘が4歳くらいの頃から始めたのですが、娘もその日のことを嬉しそうに話してくれます。プラスのイメージで就寝できるというメリットがあるだけでなく、より具体的に話すことで表現力を伸ばすきっかけにもなりますし、なにより娘の様子もわかるので、親子にとって大切なコミュニケーションの時間です

ラジオでもテレビでも、短くわかりやすく伝えるのが基本。15秒、1分、3分で話をまとめることを習慣化するため、ストップウォッチは必需品。
感謝や労いの気持ちは手紙やメモで。ピンクと緑の花模様の一筆箋と付箋セットは、持ち歩いているだけでワクワクするそうです。
――最後にラジオやテレビ、講演などで大変お忙しいと思いますが、近藤さんはいつも明るく笑顔で、お仕事を楽しんでいらっしゃいますね。近藤さんのように毎日を楽しむ秘訣がありましたら、ワーキングマザーに向けて教えていただけますか。
自分が本当に好きなもの、やりたいことを見つけることができれば、充実して心からワクワクする日々が訪れます。ただ、「本当にやりたいこと」は、なかなか自分ひとりでは探し出すのは難しいもの。たとえば、なんとなくベビーマッサージの資格をとった方は、資格を活かさなくちゃ!ベビーマッサージのお店を開こう!ということになりがちです。でも、一口にベビーマッサージといっても、施術をしたいのか、教えることが好きなのか、企画をしたいのか...アプローチは実にさまざま。資格ありきではないんですね。
「どんなことを、誰に対してやっていきたいのか」を明確にするために、私は、CAN(できること)、WANT(したいこと)、NEEDS(必要性)、この3つを洗い出します。そうすると、不思議とこの3つが重なる箇所が出てくるのですが、それが「本当にやりたいこと=ミッション」なんです。それらが明確になり、自分の進むべき方向が見えてくれば、毎日はさらに輝いたものになりますよ。

私の人生のスローガンは「人生まるごとエンターテイメント」なんです(笑)。心動かされる出会いを通し、相手の方の心に響くものを一緒に作っていきたいと思っていますし、こどもとの時間も、家事をする時間も、捉え方によってはすべて「企画」。楽しんでいきたいと思っています。

【イベントのお知らせ】
『表現力をアップする!!キッズプレゼンテーション講座』
仕事をする場面でプレゼンテーション力はとても大切! しかし、誰でも一度や二度は失敗して「あちゃ~」と思った経験があるのではないでしょうか。 しかも、最近は学校や入試でもプレゼンテーション力を問われる場合が多くなっていますよね?! そう!だからこそ、こどもたちにも、今から身につけてほしい! そんな思いで、はじめます。
開催日時:2014年4月13日(日)
(A)新小学1~3年生 10:00~12:00 
(B)新小学4~6年生 13:30~15:30
講師:近藤洋子氏
*詳細はこちら
WorMo'のfacebookで紹介します。

近藤洋子

(社)日本女性起業家支援協会 代表理事、共感プロデューサー、TV通販家電ナビゲーター。女性起業家のためのセルフブランディング、セルフプロモーションのセミナーや個別レッスンを開催。これまで300人以上の女性起業家を担当する。また、TV通販では1日で1億円超の売り上げを誇る家電ナビゲーターとしても活躍。その経験を活かし、最近では経営者、企業、商品のPRをも行う。
一方で、プロアスリート専属のメディアトレーナーでもある。
ライフワークとしては、働くママの会員制のコミュニティ"Dear.Tomorrow Family"の副代表も務める。

取材を終えて

取材後に編集部で「形容詞を使わずに表現する」を実践してみました。普段は「かわいい」と一言で表現していたモノを、どんな言葉を使えばより具体的に伝わるのか?改めて考えるよい機会になりました。自分が伝えたいことを正確に伝えるためには、丁寧な説明が必要になり、必然的に話が長くなります。そのため、いかに聞き手に寄り添えるか(共感力)が大切になります。そして聞き手もそれをきちんと理解しようとする意識も不可欠な姿勢だと実感しました。 また、近藤さんにお会いして、言葉だけではなく身につけているすべてのモノで自分を語る、それこそが『セルフプロモーション』だと感じました。身につけるすべてのモノで自分を表現していると思うと、身につけるモノにも自分らしさを出していきたいですね。(河内)

文/田中青佳 撮影/野村一磨