仕事のプロ

2014.01.15

育休から復職して働ける幸せを実感

Vol.9 明るさを武器に社内外の味方を増やす!

森永製菓株式会社
関連事業部 イノベーショングループ
金丸美樹さん
2008年に育児休業から復職後、同社のアンテナショップ「キョロちゃんのおかしなおかし屋さん」(現在は東京に2店舗、大阪に1店舗)の開発を担当。5歳児のワーキングマザー。

インタビューアー/WorMo'編集長 河内律子(3歳児のワーキングマザー)

社内外の人に支えられて
アンテナショップの開発を実現
――金丸さんは、群馬県の高崎から東京まで新幹線通勤をなさっているんですね。
主人の職場は新潟なので、こどもができる前は週末婚で、私は一人で都内に住んでいました。出産後、育休期間中は主人と一緒に新潟に住んでいたんですが、復職するにあたって新潟から通うのは時間的に無理。だったらどこに住んでもいいと都内のあちこちの保育園を見学し、入園希望(予約)を出しました。その数は10件を超えていたと思います。 そんな状況の中、新潟と東京の間にある高崎にふらっと途中下車してみたんです。街の雰囲気がとてもよく、すぐに気に入りました。考えてもいなかったのですが、高崎なら都内に通える範囲だし、主人の勤務先にも近いから...と保育園を見学してみたんです。園長先生から、都内に通勤している人はたくさんいると伺い、また「私は働くママを応援していますよ」と背中を押してもらいました。だから高崎の保育園から空きの連絡が来たときは、即決しましたね。

――ということは、ご実家が近いわけでもなく、全くの新天地なんですね。
はい。育休中の1年間は、生活拠点をどこにすればいいか悩みました。「友達は都内のマンションを買って計画通りの人生を送ってるのに、私は全然違う」なんて落ち込んだこともあります。でも、実際に高崎での生活を始めてみたら、案外自分にはこの生活が合ってる!と思うようになりました。 それをきっかけに、「想定外のことが起こっても、前向きに楽しもう」と気持ちを切り替えることができるようになりました。それが仕事にも活かされている気がします。
――お仕事といえば、復職されてからは本当にお忙しいですよね。新幹線通勤で時間が限られているなかで、アンテナショップの開発をゼロから担当されるのは大変だったと思いますが...。
新幹線通勤って大変だね、っていわれるんですけど、必ず座れるのでけっこう快適なんですよ(笑)。忙しいときは車内で仕事もできるし。
アンテナショップの開発当初は社内の開発スタッフが私一人だけだったので、新商品の開発から配送、店舗デザインまで、全行程を自分で進めなければならないことに気づいた時は気が遠くなりました(笑)。物流の知識などもまるでなくて、現状を知らないのに新しいことに手を出そうとしている状態だったんです。でも、以前にマーケティングや商品開発を担当していた時の経験を思い出して、「できないことがたくさんあるのは当たり前。できないこと、わからないことを恥ずかしがらず、周りの人に頼ることも大切!」と考えて、一人で抱え込んだり悩んだりするのはやめました。

――どんなふうに周りの人に協力をお願いしたんですか?
社内も社外の方でもそうですが、見栄を張らずにわからないことはどんどん質問するようにしました。ただ、自分が何をやりたいのか、ということだけはブレずにちゃんと伝えることを心掛け、やりたいことを実現するために必要なことをいろいろな人に教えてもらおうと思ったんです。そうするうちに、「あそこに相談してみたら」とか、「あの工場におもしろいのがあるらしい」といった情報をもらえるようになったり、関連会社の方が商品の加工を引き受けてくださったり、社内で事務手続きを代行してくれたりと、協力してもらえる場面が増えていきました。 社内で他セクションの人に相談がある時は、とにかく足を使いましたね。メールだと返信に時間がかかるので、目当ての人がいるフロアで待ち伏せをしてつかまえたり(笑)。でも、直接話しをしたことで、私の想いを理解してくれて、いろいろと教えてもらうだけでなく、その後も応援し続けてくれました。中には「実は、俺もこんなことやってみたいと思ってたんだ」と、熱い想いを語ってくれたり、開発に携わってくれる方が出てくるなど、すごく励みになりました。

商品加工工場での出合いから生まれた『シューラスク』。アンテナショップのオリジナル商品です。
親子というより仲間のような関係
忙しくても愛情を注ぐ
――すごいエネルギーですね。どうしてそんなにパワフルに働けるんですか?
『仕事ができて幸せだな』と実感できたからかも(笑)。今でも覚えているのは、復職初日に弊社のCMについて意見を求められた時のこと。『自分の意見や考えが何かの役に立つことが、こんなにうれしいんだ』と感じて、『楽しく仕事をさせてもらって、お給料までもらえるなんて』と感謝の気持ちが芽生えました。ショップづくりにあたって協力してくださった社内外の方たちにも、信頼して任せてくれた上司にも感謝です! あ、もちろん楽しく働かせてくれる娘と主人にも。

――職場ではとってもパワフルですが、家ではどんなお母さんなんですか?
私の性格からして「上から言い聞かせたり叱ったりする関係は無理だな」とわかっていたので、仲間みたいな感じで一緒に遊んだり、バカをやったりしています。娘もだんだんしっかりしてきて、私の代わりに忘れ物の確認をしてくれます(笑)。最近、娘が文字を書けるようになったので、手紙交換をするのが楽しみなんです。

――ご主人はお仕事の関係で家を空けることが多いと伺いましたが...
そうですね。でも、主人も育児には協力的で、私が長期出張した時は、娘の面倒をみてくれました。二人でディズニーランドに行ったりして、楽しく過ごしていたみたいです。平日は娘と二人のことが多いので、仕事が忙しい時は、娘のお迎えや夕食をシッターさんにお願いすることもありますが、自分の中のルールで、シッターさんにお願いするのは月に1回だけと決めています。娘との時間を一番に考えたいので。

――娘さんに対して、あまり怒ったりはしないんですか? 朝急いでいると、イラッとしてしまうこともあると思うのですが...。
いろいろ言いたくなるんですけど、怒ると機嫌が悪くなったり、泣き出したりと、さらに時間がかかってしまうので(苦笑)。急がせるにしても「こちょこちょ星人が来ちゃうぞー」とか笑いにもっていきます。一緒にいられる時間が少ないぶん、あまり怒らないで、愛をたっぷり注ごうと思って。寝る前は「大好きだよ、宝物だよ」ってしつこく言うようにしています。

360度飛び出す絵本『パティシエキョロちゃんのおかしなおしろ』。床の模様が、ビスケットやチョコレートになっている。
登園時などに手紙を手渡しするときも。テレビで見た「めちゃギントン」という擬音リレーゲームに大笑い!お風呂で一緒にやってます。

――口に出さないと伝わらない思いってありますよね。金丸さんはお仕事でも、メールではなく相手と直接コミュニケーションして、口に出してどんどん伝えていますが、そのやり方と似ている気がします。
そうかもしれませんね。こどもへの思いや仕事をうまく運びたい気持ちが心に溢れて、ついおしゃべりになってしまうんです(笑)。


金丸さんの1日


6:00 起床、身じたくなど
6:45 娘を起こす、朝食
7:30 外出(娘を保育園へ送る)
7:40 通勤(新幹線で1時間)
9:00~
18:00
仕事
19:15 保育園にお迎え
19:30 帰宅、夕食(栄養バランスを考えて玄米を取り入れている)
娘と一緒に遊ぶ
22:00 お風呂
娘と一緒に寝る

取材を終えて

一人でショップを立ち上げるには、並々ならぬ苦労があったと思いますが、その苦労を感じさせることなく、笑顔で話してくれた金丸さん。ポイント社の坪谷さんもおっしゃっていましたが、リアルな会話のメリットは大きそうですね。
マルチタスクを処理するためには、チーム(仲間)の力が不可欠になってきます。コミュニケーション力の重要性を改めて実感した取材でした。これからコミュニケーションツールがますます増えていくことを考えると、優先的に高めたいスキルですね。(河内)

文/横堀夏代 撮影/野村一磨