仕事のプロ

2013.12.26

自分の魅力を生かした働き方〈後編〉

ワークスタイルアドバイス/想いをカタチにする

もっと自分らしく、自信を持って働きたい、ワーキングマザーに向けて、様々な専門家からのアドバイス「WorMo’的ワークスタイル」専門家アドバイス編。
「はたらく女性のかていきょうし」として活躍する、タブタカヒロさんの後編。「ワーキングマザーの強みは?」「なりたい自分に近づくには?」…など、ワーキングマザーの働き方についての実践的アドバイスを紹介します。

インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(3歳児のワーキングマザー)

時間制約の悩みは「Y・A・T」で乗り切る
――私は、こどもができて働き方が大きく変わった時に、かなり戸惑いがありました。時短勤務だから仕事の量も質も下がってしまう気がして。多くのワーキングマザーは、同じような悩みを抱えていると思うんですが...。
仕事のスタイルは確かに激変しますね。ただ、逆説的な言い方かもしれませんが、だからこそワーキングマザーには3つの強みがあると思います。その1つが、「時間管理の達人になる条件が揃っている」ということ。つまり、限られた時間で仕事をせざるを得ないから、自然とタイムマネジメントのテクニックが磨かれていくと思うんです。

――確かに、以前よりも仕事にかかる時間を意識するようになってきたし、より効率的にするにはどうすればいいかを考えるようになりましたね。では、2つめの強みは?
働くお母さんがいると、メンバーの中からサポートしてくれる人もでてくると思います。また、どうしてもサポートが必要な場面になったとき、サポートを申し出やすい雰囲気になるのでは。そのことで、チームに団結力が出て、成果につながります。
――そうですね...。ただ私もそうなんですが、自分でこなしきれない仕事を同僚に頼む時に、「申し訳ないな」と思ってしまう女性は少なくありません。相手が「大丈夫」と言ってくれても、「本当は面倒だと思っているんじゃないかな?」と勘ぐってしまって。
そこは「Y・A・T」を取り入れてほしいですね。

――Y・A・Tって?
相手に何かを頼む時の「やって(Y)」「ありがと(A)」「たすかる(T)」という声かけのことです(笑)。頼み事をするなら、この3つをその場ですべて言うのがコツ。頼まれる相手の承認欲求もグッとあがりますよ。1人で抱え込んでしまうと、チーム全体のパフォーマンスを下げてしまう場合もあるので、頼むのは大切なことです。自分のタスクを整理して、無理なことに関してはY・A・Tを使いこなすのがベストだと思います。

――確かに私は「頑張ればできる」という根性論にとらわれていたかもしれません。少し冷静になって、「チーム全体で結果を出すにはどうしたらいいか」という視点に立って、Y・A・Tも覚えたいです。そして3つめの強みはなんでしょう?
育児を経験すると、人間的にめちゃめちゃ成長しますよね。以前に勤めていた会社で、ある女性の上司が育休を終えて戻ってきたら、あまりの変わりように驚きました。出産前はスタッフのミスにけっこう厳しい人だったのですが、ミスに寛容な優しい女性になっていたんです。

――私も職場で「優しくなった」と言われることがあります(笑)。子育てをしていると、「これは怒ってもしかたがないな」というシチュエーションも多いので、自然と我慢強くなりますね。



焦らずに「5年後にどんな自分になりたい?」と自問
しかもその上司は、部下がミスをした時にも、「このミスは何が原因で起きたの?」「どうしたら防げるかな?」という感じで、とても建設的に対処するようになったんです。お母さんみたいですよね(笑)。チームの空気もパフォーマンスもすごく良くなりました。

――優しくなっただけじゃなく、仕事のやり方も変わったんですね。
今までの会社組織では、問題が起きた時に「誰のせいだ?」と追及したり、ミスをしたスタッフを責めることが多かった気がします。彼女も以前はそういう所がありましたが、復職してからはダイレクトに問題解決にアプローチするようになりました。これって、育児を経験して、人間的に深みが加わったからだと思うんです。

――そう考えると、母であることは自分の強みといえるのかもしれません。ただ、「キャリアを積むために自分磨きの勉強をしたい」と思った時に、ワーキングマザーってその余裕がないんですよ。プライベートの時間はほとんど子育てで終わってしまうので。
そこはつらいところですよね。僕自身は「朝活」派で、朝は4時に起きて出勤までの2時間でビジネス書を読んだりしています。1時間でも自分の時間をつくって勉強をすれば、5年後には1825時間になります。1時間が無理なら15分だけでも、5年間積み重ねれば、大きな変化につなげられると思います。

――その時間は、睡眠時間を少し削って、ということですか?
いえ、睡眠時間はそのままで、寝る時間を早めるだけです。十分に睡眠を取って、冴えた頭で勉強したほうが間違いなく効率はいいですから。働くお母さんなら、お子さんと一緒に寝てしまうのもオススメです。ただし、時間をつくる前に「今から始めるのは、自分が本当にやりたいこと?」「身につけたいことは何?」と自分の考えを整理することも大切ですね。

――そこからですね。働ける時間が少ないと、今まで積み上げてきたものも減る一方という気がして、「とにかく何かやらなきゃ」と焦ってしまうんです。で、とりあえず資格でもめざそうか、みたいになりがちで。
自分の強みを洗い出した上で、さらに5年後、10年後に「どんな自分になっていたらワクワクするか」を考えたら、やりたいこと、やるべきことは決まってきます。「少し先のワクワクする自画像」を描きながら、自分の強みを生かして楽しく働いてもらいたいと思います。僕も微力ながら、ワーキングマザーが活躍できる社会に向けてお手伝いしていければと思います。

タブ タカヒロ

はたらく女性のかていきょうし。早稲田大政治経済学部卒業。英国
ウェールズ大学経営大学院MBA取得。外資系婦人肌着メーカー、外
資系スポーツブランド勤務を経て、現在は外資系IT企業のコンサ
ルタント。2010年より週末に「はたらく女性のかていきょうし」
として活動。
【タブさんのオススメ書籍】
『彼女は「なぜ」それを選ぶのか?』早川書房
『女性のこころをつかむマーケティング』海と月社

取材を終えて

"働くお母さん"といわれるようになってから、自分の仕事のスタイルは確実に変わりましたが、最初はそれをポジティブに捉えることがなかなかできませんでした。しかしそのうち、この状況は簡単には変わらないのだから、今の自分の立場を楽しむしかないのではないか、と思うようになりました。タブさんのお話をお伺いして、その考えに後押ししていただけた気がします! "お母さん"という新たなステージを有効に過ごす具体的スキルを身につけ、無敵ワーママにバージョンアップしたいと思います(笑)。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ