仕事のプロ

2013.12.18

自分の魅力を生かした働き方〈前編〉

ワークスタイルアドバイス/私の強みの見つけ方

もっと自分らしく、自信を持って働きたい、ワーキングマザーに向けて、様々な専門家からのアドバイス「WorMo’的ワークスタイル」専門家アドバイス編がスタート。
初回は、「はたらく女性のかていきょうし」として仕事に悩む女性をサポートするタブタカヒロさん。自分を見つめ直し、強みを知ることで、次へのステップが見えてくる。女性の働き方に効くお話を、前・後編に分けて紹介します。

インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(3歳児のワーキングマザー)

おしゃべりしながら「女性の想いをカタチにする」
――「はたらく女性」「かていきょうし」というキーワードを聞いて「どういうお仕事なのかな?」と考えたのですが、なかなか想像がつかなくて...。
基本的には、仕事のやり方や今後の方向性に悩む女性から相談を受けて、その方の想いをカタチにするお手伝いをしています。

――具体的には、どんな感じなんですか?
カフェで2時間ぐらいおしゃべりしながら、その方がどんな人生を送ってきたのかお話してもらいます。「今まで特別なことはしてこなかったから」という人もいますが、「その人が持っている知識・スキル」「出会いや人脈」「失敗の経験」「コトバ(「保育の仕事をしているからこどもに伝わりやすい表現はよく知っている」など特定の層に響きやすいボキャブラリーがあるか)」という4つの観点からお話を聞くと、必ず「その人にしかできないこと」「その人ならではの強み」が見つかるんです。

『あなたならではの強み探しシート』を使ってまだ気づいていない、自分に強みを探します。
わくわくする" じぶんせんりゃく"を描くためのシート。明日から始められる具体的な一歩を見つけます。

――過去を振り返りながら、その人の今後の方向性を見つけていく?
その通りです。僕はお話を聞きながら内容を整理して、iPadでイラスト化しながら「あなたのテーマは、こんな感じじゃないですか?」と提案します。軸が決まると、すっきりした、いい表情になる人が多いですね。3か月に1回などサイクルを決めて受けてくださる女性もいて、その場合は「目標を実現するために、次は何をする?」という具合にテーマも進化していきす。

――タブさんの「かていきょうし」は、教えるばかりじゃないんですね。
そうですね。おしゃべりしながら「その人ならではのコンセプトを一緒に見つける」という言い方が近いかもしれません。男性だと、コンサルタント方式で「上から教わる」スタイルを求める人が多いんです。でも女性の場合は、話したり相手の反応を見たりすることで、モヤモヤしていた自分の気持ちを整理し、気づきを得る方がフィットする気がします。そういう意味でおしゃべりは有効な手段ですね。

――自分のストーリーを聞いてもらうことで、「私の人生、これでよかったんだ」と肯定感をもてる気がします(笑)。
そこは大事です。女性ってなぜか、テストで90点を取っても「100点じゃない」と自信をなくしてしまうでしょう。男なら80点で天狗になるのに。「自信をもつ=自分の魅力に気づく」だと思うので、まずは自分の強みに気づいてもらいます。そこを理解してもらったところで、人生設計に役立つ経営理論などの知識を女性になじみやすい言葉に置き換えてお話すると、納得してくださる方が多いですよ。

従来のビジネス理論は女性の脳にはフィットしにくい!?
――経営理論って、女性にはなじみにくいものなんですか?
「戦略」とか「武器」とか戦争用語ばかりだし、基本的に競争社会で闘うための理論ですよね。僕も好きになれません(笑)。脳科学では「男性は左脳的な競争志向、女性は右脳的な協調志向がある」といわれますが、そう考えるとビジネスの理論や用語は基本的に男性目線で、女性にはピンと来ないかもな、と感じるんです。例えば働き方を語るにしても、「自分の武器で闘う」という表現より、「自分の魅力を生かす」という言い方のほうがしっくりきませんか?
女性が身につけるべき、仕事で役立つ4科目。女性の特性を仕事に活かすことで、もっと上手に働ける。

――確かに。女性はがむしゃらに働いて昇進したいわけじゃなく、自分らしく働きたい人の方が多い気がするので、「魅力を生かす」という言い方はぴったりな気がします。
女性と男性では伝わりやすい言葉が違う、と気づいてからは、「この経営理論を女性に説明するなら、どんな言葉でお伝えしたら理解してもらえるかな?」といつも考えるようになりました。「お作法」という言葉もその流れで編み出した言い方の一つなんですが...。

――「お作法」というと、茶道などのお稽古ごとが思い浮かびます。
まさにそんな感じで、やり方や手順のことを「お作法」という言い方で表現しています。男性はよく「コミュニケーション力」みたいな言い方をしますが、「コミュニケーションのお作法」と置き換えることで、「どんな手順を踏めばいい?」と具体的に考えられるようになりますよね。

――差別ではなく、女性と男性の特性を理解することからタブさん独自の表現が生まれたんですね。
僕は新卒から女性の多い職場で仕事をしてきたので、女性に伝わりやすい表現を考えざるを得ない環境にいました。それが今の「かていきょうし」につながっているんだと思います。もちろん、「女性が自分の強みを生かしながら働ける社会へ1ミリでも進むように、自分もお手伝いしたい」というモチベーションも前提としてありました。これまでの日本では、女性が職場の主力として活躍する機会や権限が限られていましたからね。
――働く女性に話を聞くと、「自分にはあれもこれも足りないから職場の主力になるのは無理」と考える人が多い気がしますが...。
足りないから次のステップに進めない、とは考えない方がいいですね。役職に就くのは「チャンスが与えられた」というだけですから。不足を考えるより、自分の魅力や強みを伸ばしていく方が楽しいし、ワクワクしませんか?

――その強みを見つけるのが難しいんですけどね。働く女性の強みってなんでしょう?
まず「周りを優しい気持ちにさせる」パワーをもっていますよね。それに、困難から逃げない強さもあります。ワーキングマザーの場合、母であることも仕事の上で立派な強みになることに気づければ、ワーキングマザーとして働く自分に自信がもてるのではないでしょうか。

――...ということで、後編では「ワーキングマザーの強みを生かした働き方」についてたっぷりお話いただきます。お楽しみに!


タブ タカヒロ

はたらく女性のかていきょうし。早稲田大政治経済学部卒業。英国
ウェールズ大学経営大学院MBA取得。外資系婦人肌着メーカー、外
資系スポーツブランド勤務を経て、現在は外資系IT企業のコンサ
ルタント。2010年より週末に「はたらく女性のかていきょうし」
として活動。
【タブさんのオススメ書籍】
『彼女は「なぜ」それを選ぶのか?』早川書房
『女性のこころをつかむマーケティング』海と月社

取材を終えて

お会いしたばかりでも、気軽に話せてしまう、そんな落ち着いた雰囲気をお持ちのタブさん。おしゃべりする内容も、女性目線でとてもわかりやすく、聞いていて私も「やってみたい!」とワクワクしてきます。働き方も「男性社会に挑む」のではなく、「自分らしい働き方を見つける」と考えれば、自分を知り、自分の魅力を生かすことが、今後、大きな武器になりますね。これからもっと様々な人と仕事をする機会は増えると思います。そのときに、相手の方への理解がより促進されるように、工夫するやり方をつかんでいきたいですね。(河内)

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ