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2024.03.14

あなたの信用度は何点?

知っておきたいトレンドワード30:信用スコア

AIを活用して個人の「信用度」を数値化した信用スコアリングサービスが社会的に認知されはじめている一方で、先行国では課題も顕在化しつつある。信用スコアとは何か、そのメリットや課題、海外や日本での活用状況について解説する。

信用スコアとは

「信用スコア」とは、属性情報、金融情報、行動情報などを用いて、AIを使って個人の信用力を数値化したもの。分析して弾きだされた数値は、融資やローンなどの申し込みに対して「この人はどの程度信用できるか」の判断や、割引やポイント還元など優待サービス提供などに活用されます。




信用情報との違いは

よく似たものにローンの申し込みなどに際して使われる「信用情報」があります。信用情報は国内に3社ある信用情報機関が取り扱い、クレジットやローンの契約などの際にクレジット会社が顧客の信用を判断するための参考資料として使用されます。

信用スコアとの大きな違いは活用するデータ量です。信用情報はクレジットカードや割賦販売、各種ローンなどの契約内容や支払い状況などの客観的な取引事実に加え、年収や住宅情報、勤務先、公共料金等の支払い状況など、資産や支払いに関連した情報を登録したものです。そのため主な使用先はクレジットカード会社や銀行など金融機関、保険会社や保証会社、消費者金融、信販会社などです。
信用情報は信用情報機関とクレジットカード会社などの利用企業との間だけでやり取りされ、仮に審査に落ちてもどんな情報を見てどう判断されたのか、個人が知ることはできません。

一方信用スコアはスコアリングサービス提供企業が「個人の信用度」を算出するにあたり、信用情報に加えて学歴や職業、SNS使用履歴や購買履歴など、個人に紐づいたよりセンシティブな情報も判断材料として使います。
また、信用情報は支払い状況や残債など客観的な事実のため、信用情報機関によって信用度が異なることは考えられませんが、信用スコアの場合はスコアリングを行う会社によって判断材料として使用する項目やAIによる重みづけは異なるため、同じ人物でも会社によって数値が異なることが考えられます。
ユーザー個人が自らのデータを提供してスコアを算出し、スコアを活用する場合もありますが、スコアリングサービス運営会社が自ら保有するサービスや提携企業を通じて情報収集を行う場合もあります。




信用スコアを活用するメリット

信用スコアの数値が高いことで得られるメリットには、個人の信用度が多様な基準に基づいて数値化されることによって、フリーランスや非正規労働者、外国人など、信用情報に基づく審査基準では金融サービスを受けるのが難しかった人でも比較的融資を受けやすくなる場合がある点が挙げられます。

また、ローンの承認やクレジットカードの発行だけでなく、スコアに応じて金利が優遇されたり、後払いが可能になったり保証金が不要になるなどの優遇措置を受けやすくなる、スコアが高いほど転職や婚活で希望が通りやすくなる、割引や非金融のオプションサービスを受けられるといったメリットも想定されます。

さらに、オンラインでの取引で出品者やユーザーの評価に信用スコアが反映されるようになれば、サービスを安心して利用・提供できるようになります。

信用スコアの活用が進んでいる中国では、不正行為が減った、マナーが良くなった、病院の混雑が緩和されたなどの変化がみられているそうです。




信用スコアの活用によるリスクや課題

信用スコアのリスクとしては、やはり個人情報やプライバシーに対する課題が挙げられます。Web上での行動やSNS使用履歴、決済アプリの利用履歴などの情報を知らないうちに収集されたり分析されたりするのではと抵抗感を抱いたり、情報漏洩を心配する人も少なくありません。

また、膨大な情報をもとに複雑な処理(ディープラーニング)をしてAIが分析・数値化するため、アルゴリズムやプロセスが見えません。そのため仮に低いスコアを出されて悪影響を受けたとしても、なぜ低い評価になったのかスコアリングサービス提供企業すら説明できない場合があります。
実際に中国では「アリババ以外のネット通販会社を利用するとマイナス評価になる」といった噂が飛び交っているようです。評価基準が明確ではないにもかかわらず、信用スコアによってサービスを利用できる人と利用できない人が出てくるといった状況も懸念されます。

さらに信用スコアの利用拡大によって新たな格差や差別の拡大につながりかねないという懸念もあります。意図せずバイアスがかかるなど、必ずしも正しいとは限らない数値に基づく信用システムで一度低い評価を受けてしまうと、あらゆる社会サービスから除外されて抜け出しにくくなるリスクがあるわけです。性別や宗教、人種や出身国などによって信用スコアの数値に影響があるとしたら、それが差別につながる恐れもあります。
たとえば、アメリカで保有資産が同じにもかかわらず女性であることで信用スコアを下げられ、利用限度額に大きな差がつけられたのではないかと問題になった事例があります。同様に「年収や職業など他の条件が同じでも性別を男性から女性にするだけでスコアが下がる」と指摘されたケースは日本でも見られました。




海外での信用スコアの活用状況

信用スコアの活用が最も進んでいるのが中国とアメリカです。特に保証金や先払い制度が根強い中国では社会インフラにもなっており、信用スコアが高いことで享受できるメリットも高くなっています。
中国はアリペイの機能の一つである「芝麻信用」がほぼ独占状態で、12億人ともいわれるアリペイユーザーの膨大な情報を分析し、「学歴」「勤務先」「資産」「返済」「人脈」「行動」の6つを評価軸として350点~950点の範囲で信用スコアを算出。高スコアの場合、優遇金利でローンが組めるほか、賃貸契約の際に敷金が免除になる、出国手続きが簡素化される、シェアサイクルや電気自動車レンタル、ホテル予約の保証金免除などの優遇が受けられます。

アメリカで利用されている信用スコアで代表的なのは、Equifax、TransUnion、Experianの三大信用調査機関が採用している「FICOスコア」です。1956年から活用され、返済履歴、借入残高、信用履歴の長さ、クレジットの種類と構成、そして新規クレジットの5つの要素で採点を行なっていて、算出にあたって性別や年齢、住所、収入といった個人情報は使用していないと言われています。そのため算出根拠データは信用情報に近いですが、スコアを個人が把握できる点と、利用範囲が幅広い点が異なります。
スコアは300点~850点の範囲で採点されていて、760点以上がエクセレント、725点以上がベリーグッド、660点以上がグッド、660点未満がサブプライムと呼ばれています。スコアは預金利子やローン金利だけでなく、就職や入居審査にも影響するため、生活への影響はかなり大きくなっています。

また近年フィリピンなど金融口座開設率がまだまだ低い国で、デジタル銀行など振興勢力が信用スコアを活用し始めるなど、急速に活用が広がりはじめています。 現状日本国内ではまだ活用シーンは少ないですが、今後海外とビジネスをする際には信用スコアが必要になってくるかもしれません。




日本での信用スコアの状況

日本ではプライバシーや個人情報保護法のハードルもあり、活用の動きは始まったばかりでまだまだ浸透していない状況です。一部の大手通信会社が参入してサービスを競い合っていましたが、黒字化できず2019年にサービス提供を終了、一つに統合されました。

一方で、2022年11月にフィンテックベンチャーが新規参入し、融資や事業継承など法人取引先候補の信用度をスコア化するなど、新しい活用先を広げる取り組みも始まっています。また、メタバース内での信用スコアを可視化し、バーチャルクレジットスコアを向上させるための活動をするといった動きもあるようです。

AIの技術が進化し、ビッグデータの解析がより複雑化、精緻化されていくに従って、信用スコアを利用した新しいサービスが生まれてくるかもしれません。
信用スコアによる与信の自動化によって、金融機会の拡大や個人間取引の安全性などに期待が寄せられる一方で、「AI(IT企業)が人に点数をつけて評価する」ことに対する根強い抵抗感や、個人情報の取り扱いに対する不安、差別や偏見を生み出す危険性に対する対応が求められます。
人の信用度を客観的に測る一つの基準として日本で浸透していくのか、今後の展開が注目されます。




作成/MANA-Biz編集部