ライフのコツ

2021.04.16

シンガポールの宿題は調べて発表が基本

世界の学び/インターナショナルスクールの教育事情

グローバル人材育成を目指すシンガポールの宿題は、自分で調べた内容や制作物の発表が基本。宿題の量はさほど多くはないものの、発想力や想像力が必要な課題が多く、発表時には歌や踊り、演技などのパフォーマンス力も求められる。自由な校風のイギリス系インターナショナルスクールの宿題を通して、シンガポールの教育事情や方針を紹介する。

具体的な宿題事例

探究型学習でここまで宿題が重要と聞くと、子どもたちが大変なのでは...、と想像してしまいますが、テーマの発表は年数回程度で、宿題も発表のタイミングに合わせて計画的に進められます。無理のないスケジュールが組まれ、下調べや原稿作成などは週末を中心に行います。

「UOI」の発表に向けた宿題以外にも、宿題はあります。新しい単語を使った文章作成や計算問題などの宿題も2週間に1回程度ありますが、自分の好きなテーマをレポートにまとめるといった、構成力やプレゼンテーション力を養う宿題が多いこともインター校の特徴です。

6_rep_007_02.jpg 1~2年生の宿題では絵で表現するものがほとんどですが学年が上がるにつれて文章を書いて表現するものが増えてきます。5~6年生になると、より深く調べたり、制作物をつくったりと内容が多くなっていきます。

たとえば、5年生では太陽系について調べる宿題が出され、太陽、地球、土星など自分が調べたい星を選び、風船や新聞紙など自宅にある材料を使って模型をつくったりします。

4年生のトワイライトゾーン(海面から約200~1千メートルの中深層)を調べる宿題では、箱に砂や海藻、貝などを入れて深海の状態を模型でつくります。

時には単独で学ぶ算数などの宿題も出ますが、日本のような計算ドリルなどではありません。図形の学習では「身近にある長方形や二等辺三角形などの物の形を活かして、立体的に庭をデザインしてみよう」といったユニークな内容です。学習のポイントは図形の知識の応用ですが、発想力を育てることも目的という点が日本とは大きく違います。

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授業参観でのテーマ発表は
パフォーマンスが重要

探究型学習のしめくくりは授業参観での発表です。この発表は個人の努力とチーム作業の成果を見てもらうための大切な機会です。そのため、ただ成果物を見せるだけでなく、音楽や振りつけ、クイズ、スピーチなども盛り込み、いかに魅力的にアウトプットするかに注力します。

たとえば、人体の構造がテーマの場合は、それぞれの子どもが心臓や目など好きな部分を担当。心臓担当の子どもは、「どんな時にドキドキするか」の実演として、その場で走ってみせるパフォーマンスをします。他の部分担当の子どもたちも、絵や資料をスクリーンに映しながら、マイクを使いパフォーマンスを交えて発表。臨場感を出す効果音も、先生があらかじめ用意してくれたりします。

発表に招かれている親たちも、後ろで立って見ているわけではありません。教室内の壁には発表資料などの成果物が掲示されるので、それらを子どもたちと一緒に見て回りながら、説明を受けたりします。

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コロナ禍でも宿題はユニーク

2020年は新型コロナウィルスの影響により、シンガポールのインター校も4月から一斉休校、6月以降は1日置きの分散登校となりました。休校中はオンライン授業中心で、チャットなどを通じて子どもが先生に質問するスタイルでした。

休校中に出された宿題の1つとして、「自分がニュースキャスターとなって1週間の天気を読む」というアウトプット型のユニークな宿題がありました。「まじめ」「恥ずかしがり屋」など、演じるキャスターの性格を選び、原稿を書き、バックで流す音楽も自分で選らんでニュースを読む宿題です。この時ばかりはマイク係や録画係として親の協力が必要だったようです。

このように、シンガポールのインターナショナルスクールで出される宿題では、「UOI」の理念やプログラムに基づいていて、教えてもらい覚えてしまえば終わりではなく、自分が課題と向き合い探求する姿勢が求められます。

宿題などを通じて小学生の時から自主性や探究心を身につけることで、グローバルな世界で活躍するには欠かせない資質が養われていくのかもしれません。



グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。https://gl-stage.com/service/mama/