レポート

2021.03.24

アフターコロナの働き方新常識!

INTENTIONAL WORKING~意図を持って働く

意図をもって働くINTENTIONAL WORKINGという新しい働き方が注目されはじめている。各企業のトップが働き方の本質について議論した『アフターコロナの働き方新常識!INTENTIONAL WORKING~意図を持って働く』(2021年3月3日開催)のイベントの模様をレポートする。

感情:ネガティブな感情に隠れた相手の意図を読む

ネットプロテクションズの秋山氏への問いは「ネガティブな感情を扱うのは面倒くさいことか?」

後払い決済事業という新しい仕組みを提供する同社では、マネージャー職を廃止した人事評価制度『Natura』を2018年に導入している。この制度の下では組織のフラット化が実現しやすい反面、現場がカオスになり、嫉妬などのネガティブな感情が生まれるのでは、という意見もある。この問いに、人事総務も担う秋山氏はどんな答えを出すのか?


――ネガティブな感情を扱うのは面倒くさいことか?


6_rep_005_07.png秋山:「ネガティブな感情を持ったメンバーと向き合うのは、正直面倒くさいですよね(笑)。でももっと面倒くさいのは、相手がネガティブな感情をため込み続けて、いつか爆発してしまうことです」

「そもそも相手がネガティブな感情をぶつけてくるということは、『仕事や組織をよりよくしたい』という意識の表れです。ネガティブな感情の裏にある意図を考えながら話をすることで、その人の価値観を尊重したいと考えています」

「その人の価値観を重視するという面で言うと、私たちの会社では人事評価の際に、メンバーの成長や幸せを軸に置いています。人事評価というとどうしても評価する側・される側という対立構造になりがちですが、成長支援と位置づければ、同じ方向を目指して進んでいくことができます。その人の価値観を大切にすることが、長期的には会社としての成果にもつながると考えています」




使命:自分の使命と会社の利益は必ずリンクする

ANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボでシェアリングエコノミーツーリズムのビジネス展開を実践する野島氏への問いは「自分の使命VS会社の利益」。

野島氏は「自分が育った地域に貢献したい」という思いを仕事のモチベーションに、新規事業を貪欲に手がけている。多くのビジネスパーソンが悩みがちな命題に対する、野島氏の回答とは?


――自分の使命VS会社の利益


6_rep_005_08.png野島:「僕は、自分の使命と会社の利益が相反するものだとはまったく思っていません。確かにこれまで日本では、大企業においては特に『会社の利益を上げることが使命』という考え方が主流だったため、自分の本当の想いと会社の利益の間にギャップを感じることが多かったかもしれません」

「しかしこれからの時代は、まず自分の使命が先にあるという形をつくっていかなければなりません。僕は『旅を通じた関係人口の拡大』を自分の使命と考えて新規ビジネスをつくっていますが、それは会社の利益ともシナジー効果があると考えています」

「短期的な利益は生まなくても、事業を興したことが大きな宣伝効果になり、未来の利益につながる場合も少なくありません。それに、自分が共感して入社した企業ですから、自分の使命と企業理念は必ず共通する部分があるはずです」




混乱やモヤモヤを 持ち続けることにも意味がある

パネルトーク後は、参加者全員が少人数のグループに分かれて行うブレイクアウトセッションが行われた。イベントのオープニングで提示された4つの問いについて、ZOOMのブレイクアウト機能でグループに分かれ、考えを深める。

セッションを終えた参加者からは、「企業は個人の自己実現を支援していくべきだけれど、社員の使命をすべて受け容れて支援するのは難しい」「使命をかなえる組織と、利益を追求する組織は分けた方がよいのではないか」「個人の自己実現をどれだけ支援したかも、マネージャーの評価軸に加えた方がよいのでは?」などさまざまな意見が上がった。

最後にピョートル氏が「みなさんの心には混乱やモヤモヤが残ったかもしれないけれど、今日自分の心に刺さった問いを、これからの生活や仕事の中で考え続けてください」とまとめの言葉を述べ、イベントは盛況のうちに終了した。

私たちにとって「価値あること」「生きる意味」とは何だろう? コロナ禍をきっかけに、多くの人がこれまでの価値観や生き方、働き方を見つめ直し始めた。答えが出ることはないかもしれないが、このようなイベントで異なる職種や環境、価値観の人と語り合いながら、日々問い直すことに意味があるのだろう。



ピョートル・フェリクス・グジバチ

ポーランド生まれ。2000年に来日後、モルガン・スタンレーなどを経て、グーグルのアジア・パシフィック地域における人材開発と組織開発、リーダーシップ開発分野で活躍。2015年に株式会社プロノイア・グループを設立し、企業がイノベーションを起こすための組織文化変革に向けてコンサルティングを行う。『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)や『日本人の知らない会議の鉄則』(ダイヤモンド社)、『パラダイムシフト』(かんき出版)など著書多数。

林 直孝

株式会社パルコ 執行役員CRM推進部兼デジタル推進部担当 株式会社パルコ デジタルマーケティング 取締役 株式会社アパレルウェブ 取締役

秋山 瞬

株式会社ネットプロテクションズ 執行役員 人事総務グループ兼ビジネスディベロップメントグループ

野島 祐樹

ANAホールディングス株式会社 デジタル・デザイン・ラボ 次世代ツーリズム推進ディレクター

文/横堀夏代