レポート

2021.01.20

ビジネス会話には国民性や歴史の把握が必須?

現地で飛び交う教養としてのリアルなジョーク

ビジネスを円滑に進めるためには、スムーズなコミュニケーションが欠かせない。その潤滑油として重要な役割を果たすのが、いわゆる「ビジネス教養」だ。相手が「おっ!」と思うような話題を出すことで、興味や関心を引き、ビジネス交渉がしやすくなるといったメリットも。今回はEU圏で使える「ビジネス教養」としてジョークについてレポートする。

ジョークを理解するポイントは
EU各国の特徴や生活習慣を知っておくこと

陸続きで周遊もしやすく、ビジネス上の連携も密なEU(欧州連合)諸国では、ビジネスの場面でジョークを言い合う土壌があります。日本人にとっては意外かもしれませんが、ジョークがビジネス会話の潤滑油ともなるため、EU各国とビジネスをする場合、ジョークを理解することも重要になります。

ビジネスの場面でのジョークの役割は、会話の糸口として場を和ませたり、信頼を深めたり、円滑に会話を進めたりするためのものです。各国の国民性や民族性を極端に皮肉ったジョークを「エスニックジョーク」と呼びますが、まさにそういったネタが多く使われます。それぞれの国の歴史や文化、生活習慣を把握してこそ理解でき、笑うことができるので、国ごとの特徴はビジネス教養として身につけておきたいものです。

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ただ、EU諸国は過去の歴史の中で多くの戦争を経験し、かつては敵同士として戦っていた時代もあり、国をまたいだセッションや食事会ではジョークもややセンシティブになります。苦い歴史があることから、イギリス、フランス、ドイツなどは互いに牽制し合いながらジョークを言うこともあるようです。

ベルギーのEU本部ではEU各国の国民性を象徴するようなTシャツがかつて売られていましたが、それらのデザインや表現はエスニックジョーク的な内容のものが多かったといいます。EU圏では日本人の感覚からするとネガティブに聞こえるジョークもある程度受け入れられているのです。

ビジネスの場では、エスニックジョーク以外にも工業や農業など、それぞれの国の経済の特徴をジョークにすることもあります。また、無難なテーマとしては、やはりサッカーやラグビーといったスポーツネタが挙げられます。ときには「ドイツは大戦で2度負け、W杯でもイギリスに本土決戦で負けた」など、ジョークとは受け取れないような緊迫した会話が飛び交うことも頻繁にあります。



EU各国の特徴や国民性

ジョークが交されるビジネスシーンとしては、フランクな会話ができるランチタイムやコーヒーブレイクが多いのですが、ジョークにしやすい各国の国民性については、EU圏内で一般的な共通認識があります。

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イギリスは何度となく戦争を仕掛け、多くの国を敵に回した過去をもち、かつ、「島国」ということから、「ヨーロッパ大陸」に位置する国からは、「開放的な"大陸"と閉鎖的な"島"」というように比較されがちです。

フランスは自国の文化や歴史に強い誇りを持ち、自分たちはヨーロッパの中心と考えているとよく言われます。たとえ、英語が話せてもまずはフランス語を優先していると、イギリスでは揶揄されます。

フランスなどから見るとドイツはマジメで堅すぎる国民性で、ジョークを言っても通じない相手とされているようです。



皮肉屋のイギリス人が
よく使うジョーク

イギリス人は「ジョークの天才」と言われたウィンストン・チャーチル首相を代表に、皮肉っぽく思わずニヤリとするようなジョークが上手です。ただ、やや距離感を保ったジョークが多いため、他国の人には理解しにくいという面もあります。

イギリス人がよく使うわかりやすいジョークに、「フランス人のようにゆっくり喋れ」というものがあります。早口でよく喋る、議論好きなフランス人を揶揄したものです。また、フランス人は平日の昼食時にも平気でワインを飲むため、仕事場では「午後の"製品の品質"に気をつけて」というようにジョークのネタにされます。

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筋金入りのケチで財布の紐が堅いとされるオランダ人をもじり、イギリスでは割り勘にする際に「Go Dutch!(割り勘で)」という表現も使われます。Dutchはオランダ人のことなので、この表現にはケチなオランダの国民性への皮肉が込められています。イギリスとオランダは過去に戦争で海の覇権を競っていたため、イギリスではよく使われるようです。

何事にも慎重で時間をかけるとされるスウェーデン人を皮肉ったものでは、「スウェーデン人みたいにフレキシブルに行動しろ」というジョークがあります。「フランス人のようにゆっくり喋れ」と同様に、国民性をネガティブなネタにするパターンが多いようです。

食文化の水準が低く、味覚音痴といわれているイギリス人も、ジョークの標的になる場合があります。「イギリス人みたいに料理を上手につくれ」や「イギリスではインド料理やカレーが一番おいしい」など、かなり手厳しくからかわれるようです。

各国の国民性
閉鎖的で皮肉屋で味覚音痴なイギリス人
誇り高く議論とワインが好きなフランス人
真面目すぎてジョークが通じないドイツ人
ケチなオランダ人
何事にも慎重なスウェーデン人



日本人的感覚ではちょっと受け入れ難い気もしますが、EUではこういった国民性をネタにしたブラックジョークもビジネスの潤滑油になり、よく使われています。

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小林 磨(Kobayashi Osamu)

1989年にヤマハ発動機(株)に入社し、1995年からオランダ、ドイツ、フランスなどの欧州本部や現地代理店に駐在員として勤務。通算60以上の国と地域を訪問し、現地の販売店やユーザーに向けて主にマリン商材の取引業務に携わる。2016年からロシアのモスクワに在住してヤマハ・ロシアの社長を務め、現在に至る。EU諸国駐在時には、自動車やバイクで膨大な距離の欧州内移動を体験する。

グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。https://gl-stage.com/service/mama/