リサーチ

2020.10.12

データから読み解くポストコロナの企業動向

経営層に求められるアクションとは?

コクヨ株式会社では2020年5月末、大手法人114社の経営者層130人に向けて、新型コロナウイルスに伴う意識変化と今後の方向性を問うアンケートを実施した。集計結果から見えてきた全体傾向や経営課題について、アンケート実施から数か月経った現況もまじえて、同社のワークスタイルイノベーション部でワークスタイルコンサルタントを務める河内律子が分析する。

経営者が期待するのは
社員の挑戦意識

今回のアンケートでは、単なる業務のオンライン化ではない「真の新しい働き方」を実践し自社改革を行っていくうえで障害になることについても質問を投げかけています。経営者のうち5割弱が「社員の挑戦意識」という項目を挙げました。


新型コロナウイルス感染症拡大のような非常事態では、新しい挑戦に前向きになれない人もたくさんいます。その中でも経営者は、「失敗してもいいから新しいことに挑戦してほしい」という思いを従業員に対して強く持っているようです。


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「新しい働き方」の実現には
経営者から従業員への積極的な情報発信が重要

しかし従業員の意識に目を向けると、経営者の思いとは少し違った傾向が見えてきます。
従業員に向けて「ポストコロナに向けて重視するキーワード」を聞いたところ、「働き方改革」という項目だけが突出して高く、「新規事業開発・イノベーション」「ダイバーシティ」「人材育成」といった未来の働き方に関する項目への関心度は低かったのです。


従業員はこの数か月、顧客とオンラインコミュニケーションを通じて新たな関係性を築いたり、市場急変によって下がった業績を回復させるための施策を練ったりと、これまでと異なる業務に集中する必要がありました。そのため、少し先の未来を考える時間や心の余裕がなかったと考えられます。このような傾向が、今回の数値となって現れたのではないでしょうか。


そこで経営者は従業員に向けて、会社の方向性や今後の働き方の指針について積極的に情報発信していくことが求められます。


この半年ほどでビジネス環境は激変し、ワーカーの働き方も大きく変わりました。そのような状況のもとでも、今回のアンケートにご協力下さった企業の経営者様は、従業員の安心・安全に配慮しながら、先を見据えたアクションを起こしつつあります。その取り組みを従業員と共有していくことで、企業はさらに連帯感を持ちながら力強く成長していけるのではないでしょうか。



【出典】コクヨ『ポストコロナに向けた新型コロナウイルスによる経営環境への影響大手法人経営者130名 緊急レポート』


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河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

文/横堀夏代