組織の力

2020.09.09

テレワークを当たり前の働き方に

東京テレワーク推進センターの取り組み

東京都と国が2017年に設置した東京テレワーク推進センターでは、テレワークに関する各種セミナーやイベント開催、企業からの導入相談受付など多様なテレワークの普及活動を行っている。センターの活動目的や、テレワークという働き方がもつ可能性について、事業責任者を務める湯田健一郎氏(株式会社パソナ・リンクワークスタイル推進統括)にお聞きした。

テレワークを通じて
生産性向上や人材確保を目指す

東京テレワーク推進センターは、東京都と国が設置した、テレワークの普及を目的に活動する施設だ。東京都や国がテレワーク推進を行っている理由を、センターの事業責任者である湯田氏は、「テレワークという手段を通じて、働き方を進化させていくためです」とまとめる。

「今後は、人口減少に伴って労働人口も減っていきます。その状況の中で、各企業が優秀な人材を確保し、生産性を上げていくには、より柔軟な働き方を取り入れる必要があります。その手段になり得るのがテレワークだと私たちは考えています」

センターのキーパーソンとして活動する湯田氏も、テレワークの働き方を実践しているという。

「私は株式会社パソナの社員ですが、それ以外に7つの組織で仕事をしています。副業・兼業を認める企業が今後増えれば、私のようなパラレルワーカーの存在は当たり前になっていくでしょう。このような柔軟な働き方の基盤になるのがテレワークだと、私は確信しています」

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センターを訪れることで
テレワーク体験・情報収集・相談ができる

推進センターが担う役割は、おもに次の3つだ。

1.テレワークの体験を提供
センターを訪れる利用者は、テレワークに必要な機器やツール、サービスを体験しながら比較・検討できる。

2.情報提供
センターにはテレワークの導入事例集や関連書籍、文献、製品・サービスのパンフレットなどが揃っており、利用者は必要な情報を効率よく収集できる。特に、業界や企業規模ごとの事例は、各企業のテレワーク担当者に好評だ。テレワーク関連のセミナーやイベントも定期的に開催している。

3.相談受付
人材確保に向けたアドバイスのほか、システムや制度設計、社員教育、助成金制度など、テレワークに関する相談に幅広く応じる。

センターは気軽に立ち寄れるワンストップ形式。湯田氏は、「ご来訪いただくことで、テレワークの基本知識や最新情報を広く得られます」と紹介する。

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郊外のモデルオフィスで
職住近接の働き方を体験できる

これらの活動に加えて、センターでは2020年7月、東京都府中市、東久留米市、国立市の3カ所に『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』としてサテライトオフィスを設立した。

「私たちはテレワークができる場所の選択肢として、サテライトオフィスをご提案しています。しかし、ベッドタウンである郊外地域には、職住近接が可能になるサテライトオフィスがまだ充実していません」

「そこで、多摩地域を中心とした郊外に、サテライトオフィスでの働き方を体験できる施設をつくりました。個人事業主を含む中小企業の方々に、仕事をしながら情報収集や新たな出会いを実現していただければと考えています」



withコロナ対応の
オフィスを知ることも

湯田氏が紹介する通り、『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』ではサテライトオフィスでの働き心地を体験するのにうってつけの場所だ。とはいえ、新型コロナウィルス感染症拡大の恐れがある中で、不特定多数のワーカーが集まって働くことに抵抗を覚える企業や働き手もいるのではないだろうか。

「コロナに関しては、席数を減らしてソーシャルディスタンスを確保したり、什器に抗菌コーティングをかけたり、換気対応や検温、消毒清掃、来訪者のトレーサビリティを確保するといった対策を講じています」

「来訪者の方々にも、コロナ対策の事例を見てもらい、ご自身の職場における対策に活かしていただくことも意図しています」

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テレワークでも生産性を落とさない
働き方を模索している

新型コロナウィルス感染症拡大への懸念から、テレワーク導入への関心を高める企業は増えている。2020年に東京テレワーク推進センターが開催したセミナーには、企業規模に関わらず多様な企業からの参加があったそうだ。「ご参加くださる方の属性が拡がってきた」と湯田氏。

「これまでは総務部や人事部の方が多かったのですが、今では経営者の方が自らお越しくださったり、プロジェクトチームのリーダーなど現場責任者が出席くださるケースが目立ちます」

「コロナ禍により多くの企業が強制的に在宅勤務を経験した中で、『生産性を落とさないためにも、テレワークを支障なく進めたい』『うちの会社は現場が主体だが、業務を切り分けて一部をテレワークで行うことはできるのか』といった企業様の切実感を感じます」



「テレワーク」という言葉がなくなるほど
社会に浸透した働き方に

このようにテレワークが主流の働き方の一つとなりつつある今、湯田氏の活動目標は「『テレワーク』という言葉がなくなること」だという。

「例えば30年ほど前は、週休2日制の勤務体系はまだ当たり前ではなかったですが、現在では当然となっており、求職活動の際に週休2日でない企業を避ける人も多いはずです」

「同じように、多くの企業がテレワークに関する業務規定などをつくって制度化し、テレワークが当たり前になり、求職の際の基本要件になっていけば、と願っています」

テレワーク推進の流れは全国に拡がり、力を入れている自治体が多い。そのロールモデルともいえる東京テレワーク推進センターの動向に、今後も注目していきたい


湯田 健一郎(Yuda Kenichiro)

東京テレワーク推進センター事業責任者。株式会社パソナで、「LINK WORK(リンクワーク)」(ICTを活用して、場所を問わず多様な人材の能力を活かす雇用のスタイル)の推進を統括。その他、株式会社パソナテックにてクラウドソーシングサービス「Job-Hub(ジョブハブ)」を立ち上げたり、経済産業省の「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めたりと、新しい働き方や雇用の分野で精力的に活動する。株式会社パソナ以外に7つの組織・企業に所属して働くパラレルワーカー。




東京テレワーク推進センター
テレワークの普及を推進するために、東京都と国が設置した施設。テレワーク関連の製品・サービス体験の提供や情報発信、テレワークの導入・拡大に伴う相談受付を行っている。2020年7月には、『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』を府中市・東久留米市・国立市に新設した。https://tokyo-telework.jp/

文/横堀夏代