チェックワード

2018.10.24

約束や依頼を撤回するときは禍根を残さない言い方を目指す

本日のチェックワード 70「約束を反故にするとき」

申し訳ない気持ちをベースに状況や相手に応じた表現を

 約束や依頼をいったん反故にしたいときに一番注意するべきなのは、当たり前ですが相手の気持ちを十分に配慮すること。自分の方が立場が上だとしても、言い方によっては思わぬわだかまりを残す場合もあります。「申し訳ない」という気持ちを前面に出したうえで、相手との関係性や状況、経緯によって言葉を選び、最善の伝え方を心がけましょう。場の状況やその人の感覚によってベターな表現は異なりますが、ここでは例として四通りの表現を紹介します。なお、ビジネスシーンでいったん口にしたことは、極力守るのが原則です。反故にする回数が増えると、相手に迷惑をかけるだけでなく、自分の株も確実に下がることになります。
 
 

この使い方で差が出る

「一度白紙に戻して頂けませんか」
慣用句を使っているためやや事務的な印象。事態がそこまで深刻でないときにフィットしやすい表現。
 
「なかったことにしていただけないでしょうか」
「一度白紙に~」に似ていますが、より直接的な表現なので、相手に意図が伝わりやすい分、言い方によっては身勝手な印象を与えることがあります。このフレーズを言う場面では、「本当に申し訳ない」という感情を声やしぐさで精一杯伝えるよう心がけましょう。
 
「ここは泣いてもらえませんか」
立場が対等もしくは自分より低い相手に対して、不利な条件をのんでもらいたいときに使われやすい表現。「ここは」と言っていることから、何らかの埋め合わせをするとほのめかしたいときに適しています。
 
「この埋め合わせは必ずしますから」
この場合は償いをするとはっきり約束しており、次の機会がなさそうなときに使うと不信感を与えてしまう可能性も。確実に埋め合わせができるときに限って使いましょう。似た表現として「悪いようにはしないから」という言い方もあります。

監修/篠崎 晃一(Shinozaki Koichi)

東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編修代表や、テレビ番組「ワーズハウスへようこそ」(日本テレビ系)の監修など幅広い分野で活躍。『えっ?これっておかしいの!? マンガで気づく間違った日本語』(主婦の友社)など、日本語の誤用に関する著書も多い。