組織の力

2017.12.06

健康経営推進をサポートする睡眠の「技術」〈前編〉

組織単位で睡眠改善に取り組むメリットは大きい

きちんと眠ることが大切だとわかっていても、ビジネスのさまざまな局面でスピードが求められる環境のなかで、睡眠時間を削って対応しようとする人は多い。しかし、企業に向けて睡眠改善のための研修サービスを提供する株式会社ニューロスペース代表取締役社長の小林孝徳氏は、眠りの質によって仕事の質が大きく変わることを説き、「リスクを回避するためにも、生産性を上げるためにも、組織単位で睡眠に取り組むことが重要です」と強調する。前編では睡眠のプロである小林氏に、「ビジネスパーソンにとってなぜ眠りは重要なのか」「個人としてだけではなく、組織としてよい睡眠をめざすことでどんなメリットが期待できるのか」をお聞きした。

良質な睡眠によって
社内のコミュニケーションが活性化

 では、実際にプログラムを導入した企業は、どんなメリットを実感しているのだろうか。まず睡眠研修を受けた従業員の感想を拾ってみると、「眠りが深くなった」「集中力が高まった」「すっきり起きられるようになった」という声が多数あるという。また、「寝る前はできるだけ照明を落とした部屋で過ごすようにしている」など睡眠研修の内容に沿った生活スタイルを取り入れている受講者もみられる。睡眠に対する課題意識がそれだけ強く、研修で学んだ内容の効果を実感したということだろう。

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 そして、「社内でのコミュニケーションが活発になった」という意見が多いのも興味深い。小林氏は、「睡眠不足の人は、脳のトラブル回避作用からコミュニケーションを避けようとする傾向があります。逆の見方をするなら、よい眠りが取れるようになって従業員の心に余裕が生まれれば、交流が活発になると考えられます」と小林さん。さらに、睡眠改善のメリットについて次のようにコメントする。
「ミスをしてしまう部下に対して、これまでは『気合いが足りない』と部下を責める叱り方をしていた方も多かったと聞きます。でも、睡眠の取り方によって作業効率が大きく変わることを研修でお伝えしてからは、『きちんと寝ているか?』と部下を気遣う方が増えたそうです。睡眠がビジネスパフォーマンスに大きく影響するという共通認識が社内につくられることで、休むことを大切にする雰囲気が生まれたとすれば、企業様にとっても従業員の方にとってもメリットは大きいといえるのではないでしょうか」
「ビジネスと眠りは切り離せないもの」と認識し、睡眠改善に取り組み始める企業が少しずつ増えている。一つひとつは個々の小さな生活習慣改善でも、数年後にはその企業全体にとっての大きな実りとなって現れるかもしれない。
 後編では、睡眠改善プログラムの一部として、良質な睡眠やビジネスでのハイパフォーマンスに役立つ過ごし方を紹介していこう。

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文/横堀夏代 撮影/石河正武