組織の力

2016.06.28

「働きがいのある会社」調査から見える、成長企業の法則〈前編〉

なぜ企業にとって「働きがい」が重要なのか?

「従業員一人ひとりの働きがいを高めるための取り組みは、企業の業績に大きく影響し、ひいてはその企業が生きぬく力になり得ます」と語るのは、「働きがいのある会社」調査を手がける機関Great Place to Work® Institute Japanの今野敦子シニアコンサルタントだ。「なぜ働きがいが企業の成長や生き残りと関わってくるのか」、「『働きがいのある会社』とはどんな組織なのか」をお聞きした。

「働きがい」の向上によって
企業経営に好循環が起こる

「働きがいのある会社」調査に参加する企業は、全世界で7000社以上。特に発祥国であるアメリカでは参加企業数が多く、ランキング上位カンパニー(ベストカンパニー)選出は企業にとって大きな名誉とされている。日本では2007年から調査が実施され、現在では300社を超える企業が参加。ランキングは『日経ビジネス』誌や日経オンラインで発表され、注目度を高めている。



1_org_011_04.png

この調査が注目されつつあるということは、イコール企業が働きがいを高める取り組みに力を入れ始めていることになる。その理由を今野氏は、「一つには社員の幸福に貢献することが目的です」と説明する。アメリカや日本では、従業員は1日の多くを職場で過ごすケースが多い。長い就労時間を働きがいのある会社で充実した思いで過ごすことができれば、確かに従業員の幸福度は上がると考えられる。

しかし、企業が「働きがいのある会社」づくりに力を入れる理由はそれだけではない、と今野氏は指摘する。
「働きがいのある職場が実現すれば、社員の定着率が上がり、社外からも優秀な人材が集まってきます。社員たちの間には働きがいのある職場に貢献したい、という連帯感が生まれ、一人ひとりがベストを尽くすようになります。その結果、会社の体力が向上し、業績アップが見込めます。さらに、ランキングで上位に選出されることも従業員の誇りにつながり、やる気を引き出す要因になり得ます」

「働きがい」と業績との関連性をダイレクトに証明するのは難しい。しかし例えば、2014年に日本でベストカンパニーに選出された上場15社に注目すると、図のように「働きがい」と企業株価の間に一定の相関を見出すことができる。またアメリカにおいても、ベストカンパニー100社のうち、上場企業の株価のリターンをみると、2000年以降は米国株価主要指標を大きく上回っている。他にも判断材料は必要だが、いずれにしても働きがいは企業の成長を考えるうえで見逃せないトピックといえそうだ。


1_org_011_05.png

後編では、ベストカンパニーに選出される会社の特徴や、働きがいを高めるために企業が取り組むべきことなどをお聞きする。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ