ライフのコツ

2015.02.16

マナーの国イギリスは学校でもマナー教育

世界の学び/日本だけではない海外しつけ事情

世界の教育情報第10回目は、イギリスからのレポートです。ロンドン近郊のセント・ジョーンズウッドで3人の男の子を育てながら、キャリアコンサルタントのお仕事をされているオダギユイさんからは、日本同様にイギリスにもあるしつけについてのお話です。

イギリスのマナー原則は3つ
マナーの国イギリスでは、小学校でも先生たちがこども達に厳しくマナー教育をしています。
海外の学校は細かいことは気にせずに自由な教育をしているイメージがあるかもしれませんが、イギリスでは、規則が色々とあって生徒たちをしっかりとしつけているという側面も、あるのです。この点に関しては、公立と私立の間での大差はさほどない印象です。
マナー教育の原則には、以下の3点があります。
『目上の人を敬う』
『必ずあいさつをする』
『お礼や謝罪はしっかりと伝える』
これらは日本の学校でも重んじられることですが、日本とイギリスで大きく違う点は、生徒たちがこれらを守らなかった時の先生の対応やこども達への罰則が細かく決められているところです。
いろいろな罰則の存在を知った時、日本人の私にはかなりなカルチャーショックでした。でも、理解していくと「なるほど」と納得できる点もあり、日本の学校との違いがなかなか面白いので、私のこども達が通う小学校のことを例としてご紹介していきたいと思います。
タイムアウト!って何?
とにかく学校の中での決まりごとが多いことがイギリスの学校の特徴だと思います。校庭で遊ぶときの遊びの種類や遊び方にいたるまで細かく規則があります。そして、規則を破ると壁ぞいに5分間立たされる"タイムアウト"という罰則があります。
例えば"中庭ではサッカー禁止"というような規則を破るとチェッカーの先生から『タイムアウト』と言われ、5分間立たされます。
日本では注意されることがあってもイギリスのように立たされることはあまりないと思いますが、イギリスではタイムアウトは、しつけの一貫ということで、誰もが知っているルールとなっています。
叱る基準が学校内で共通化されている
タイムアウト以外に、"グリーンカード""アンバーカード""レッドカード"といった先生達から出されるレベル別の罰則があります。とにかく、規則を守らなかった場合には必ず罰があります。
グリーンカード、アンバーカード、レッドカードは、それぞれのカードによって罰の内容が決められていて、グリーン(緑色)→アンバー(琥珀色)→レッド(赤色)の順に罰が重くなります。
日本では注意され叱られる場合多くは先生個人に委ねられていて、学校内で共通の認識のもとに叱られることはないと思いますが、イギリスの場合は叱りの基準が共通化されています。
グリーン、レッド、アンバーカードについてのクラス掲示。
規則は、先生の説明の邪魔をする、先生の質問に答えない、先生に口答えするなどの、授業の妨害にあたる行為や友だちを傷つける行為に対して決められています。
そして、授業中に先生が話している時にお喋りをしたというくらいの、ちょっとした注意レベルの場合には最初に注意喚起(Warning)をされます。そして3回目の注意喚起でグリーンカードが1枚出されます。
例えば、授業中に先生の話を全然聞かずに先生に注意された場合、「あと2回チャンスがある」と言われ、その後再び同じことで注意された場合には「ラストチャンス」となり、それでもまだ態度を改めなかった場合には「グリーンカード!」となるわけです。
また、1日の中で注意し続けられると、どんどんカードがレベルアップされていきます。
3Warning(注意喚起)でグリーンカード。
4Warningでアンバーカード。
5Warningでレッドカード。
グリーンカードの場合は"あと1回注意されたらアンバーカードになるよ"という注意のみで特に罰はありません。
アンバーカードの場合は、昼休みにReflection room(リフレクションルーム)という反省部屋に行き、反省文を書きます。
レッドカードの場合は、即校長室へ行き、校長先生と面談する上に、校長先生からの手紙が親に行きます。場合によっては校長先生から親が呼び出されることもあります。
アンバーカードやレッドカードは、グリーンカードからのステップアップだけで出されるわけではありません。友だちに暴力をふるう、ケガをさせる等の行為、授業中の態度があまりにもひどい場合などには即アンバーカードやレッドカードが出されることもあります。
低学年ほど沢山のステッカーを毎日もらう。先生がつけてくれる。
褒め上手なイギリス
これまで、規則違反の罰則の話ばかりしてきましたが、"褒め上手"でもあるイギリスでは生徒個々の素晴らしい点を見つけて褒めたり表彰したりすることもとても多いです。
細かなことでも褒めポイントを見つけて、"Well done!"(頑張ったね!)"Great!"(素晴らしい!)といって褒め、生徒の胸にスティッカーを貼っていきます。
下校時に幾つもスティッカーを胸につけて教室を出てきた息子に、「このスティッカーは何でもらったの?」と聞くと、「今日のワークがとっても上手にできたからだよ!」とか、「片付けが上手だったからだよ!」等、その時々によって違う理由を教えてくれます。とにかく、たくさんのことで日々褒められているようです。
この点についてはとってもステキだなと思う点であり家庭でも見習いたいことです。また、授業態度がよかったり、勉強を頑張ったりしているとポイントが溜まり、一定量のポントが溜まると"Certificate"といって、表彰状が毎週金曜日の全校集会で校長先生から渡されます。
この"Certificate"は、勉強、スポーツ、本読み、宿題、出席日数等々、あらゆるジャンルで発行されていて、生徒たちがみんな何かしらで表彰されるように先生たちが工夫しているようです。
マナーについても「これはグッドマナー」「それはバッドマナー」と、先生から褒められたり注意されたりすることが多いようで、とっても良いマナーの生徒が全校集会で表彰されることもあります。
常日頃からお友だちや先生への言葉遣いがとても丁寧で、常に感謝の意を述べていて、素晴らしい!ということで表彰された子もいたそうです。グッドマナーで表彰されるというのは、いかにもイギリスらしい感じがします。

オダギ ユイ

大学卒業後、㈱NTTドコモに入社。スマートフォン系の新規開発部所属時に、心理系の勉強を開始し、産休育休中に各種専門資格取得。自らの復職経験から、ワーキングマザーのマインド支援の必要性を感じ、キャリアコンサルタントとして個別セッションやセミナー開催するオヤコラボ、ワーキングマザーのお悩み解決を主旨としたワー育.jpを立ち上げる。2012年春に夫の転勤により、家族で渡英。ワー育.jp London支部を立ち上げ活動中。
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