仕事のプロ

2014.09.30

ワークだけでなくライフのキャリアも大切に

Vol.14 意識的な時間の使い方が両立のカギ

株式会社パソナ
関東営業本部 第2営業部 副部長
佐藤友美さん
2002年に株式会社パソナに入社。営業部の統括チーフや、キャリアママチーム(ワーキングマザー社員のみで構成された営業チーム)を経て、現在は関東営業本部第2営業部の副部長として、部全体のマネジメントを担当。企業向けに女性活躍推進メニューを提案するサポートサービス「Women‘s Workstyle Service事務局」としても活躍する。3歳男児のワーキングマザー。

インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(3歳男児のワーキングマザー)

ダブル担当制と密な情報共有で
時間の制約を乗り越える
――佐藤さんは、出産前である20代に営業部統括チーフを経験しているんですね。どんなお仕事内容だったんですか?
部全体の営業成績アップに向けて研修などの施策を打ったり、それぞれのチームが抱えている案件がうまく回っていくようにフォローしたりといった、マネジメント的な内容でした。当時は20代でしたから、振り返ってみると大きなチャンスをもらったんだな、と思います。
――就任から1年ほどで妊娠がわかったそうですが、どんな気持ちでしたか?
佐藤:やっと仕事に慣れて「よしこれから!」というタイミングだったので、出産後のキャリアに対して不安や葛藤はありました。でも、今にして思えば、仕事に熱中する時期があった後にこどもを持てたことはよかったと思っています。
――御社では、出産・育児を経て復職する女性がとても多いそうですね。復職プログラムが充実していると聞きますが...。
そうですね。私がお休みをいただいたときも、休職前と休職中に人事部長と面談があり、家庭環境や復職後の希望などを聞いてもらいました。イントラネットなどで情報を受け取るだけでなく、直接お話しする機会があったので、会社への帰属意識を持ち続けることができました。
〈パソナ復職プログラム〉
  • 本人と人事部長との面談を休職前後に行う
  • 早期の復職を支援し、プロフェッショナルなスキルや経験を復職後に活かせるよう、本人の希望や家庭環境等をヒアリング
  • 休職中の不安を払拭し、早期に職場復帰・キャリア構築する意識を醸成する
  • スムーズな職場復帰を図り、仕事と育児を両立するプロフェッショナル人財が安心して働ける環境を整備する
〈育休前面談〉
復職プログラムの紹介や今後のキャリアプランの相談をする
〈産後5ケ月目面談/復帰前面談〉
育児状況のヒアリングや会社の最新情報の共有、今後のキャリアプランの相談をする
――育児休業からの復職後には、「キャリアママチーム」という部門に所属なさっていますね。
パソナグループでは女性社員が5割を超えますし、うち3割にはこどもがいるので、ワーキングマザーのさらなる戦力化はグループ全体の課題でした。私も育休中から、「社内のワーキングマザーが営業の最前線でさらに活躍するためには、どうすればいいか」ママ社員でアイデアを出すミーティングに参加していました。そこで出た様々な工夫を実践すれば、ワーキングマザーでも活躍できる!とわかり、結果として「未就学児のワーキングマザーのみで構成された営業チームをつくる」という話がまとまり、2011年12月にキャリアママチームが設立されました。私自身も、復職と同時にこのチームに配属になったんです。
――事務部門ではなく、営業部門なんですね。ワーキングマザーは就業時間が限られるし、とてもチャレンジングに感じますが...。
その通りだと思います。だからこそ、みんなで工夫はしていましたね。1企業を2名が担当するダブル担当制を敷いたり、1人が送信するメールはccで他のチームメンバーも共有したりして、こどもの体調不良などで1人が出社できなくても業務が滞らないようにしました。同時期にこどものインフルエンザで、メンバー7人中3人が休まなければならなかった時は大変でしたが、協力してなんとか乗り越えることができました。
――みなさん役職経験者とのことですが、お仕事のやり方にそれぞれ自分のやり方があり、ぶつかり合うことはなかったですか?
不思議となかったですね。というより、他の人のやり方を見て学ばせてもらうことが多かったです。例えばメールの文面で、「お客さまに伝えにくい内容でも、この言い回しならやわらかく感じられるな。盗んでしまおう」とか。
――周りのやり方を見ながら、自然に学べるのは効率的ですね。
会社のアプリを使って
時間の使い方を改善
――キャリアママチームを2年あまり経験なさって、2014年の6月からは出産前と同じセクションで副部長職を担当なさっているんですね。
異動当初は、働く時間が限られているのに副部長に就任していいのか、と迷いがありました。でも、社内の先輩ワーキングマザーに「堂々と副部長を名乗れば視界も変わるし、交友関係も拡がるし、自然と名に実がついてくるよ」と背中を押してもらいました。
――現在の役職になってから、お仕事で心がけていることは?
できるだけ社内のメンバーや派遣スタッフの方々の力になりたいので、無駄な時間はカットしたいと思っています。そこで、会社のアプリを使って時間の使い方を見直してみたんです。
――面白いですね。具体的にはどうやって?
自分がどの仕事にどれだけ時間をかけたかを、表計算ソフトで見える化してみました。「ミーティングに時間がかかりすぎているから、1時間以内にまとめよう」とか「使途不明の時間をなくし、後輩が質問や相談のできる時間をできるだけ確保しよう」など課題が見えましたね。手帳を使ったスケジュール管理は出産前から続けていたんですが...。
――手帳を見せてもらってもいいですか?...すごい!予定がびっしりですね。
会議や外出の予定のほかに、企画書などの作業をする時間帯も事前にざっくり決めて書き込んであるので、よけいにそう見えるのかもしれませんね。それと、こどもができてからは、こどもの習い事などプライベートな予定も手帳に書き込むようにしました。時間に限りがあるので、一元管理が必要だと思って。
――手帳を拝見するだけでもお忙しい毎日がわかりますが、ワークライフバランスは実現できていますか?
そうですね。現在の立場では、「研修をやってみよう」「資料を作成して配布しよう」と自分から仕事を仕掛けていくことが求められています。ですから、時間を区切ったりしてメリハリをつけるようにしています。先日、ある先輩から「ワークのキャリアだけじゃなく、家族との時間や人間的な成長などライフのキャリア、どちらも大切にした方がいいよ」とアドバイスを受けて、本当にそうだな、と感じました。とはいっても、こどもができてからはキャリアママチームで仕事ができたり、企業様向けの女性活躍推進メニューを担当したりして仕事の幅が拡がっているので、両方あるからこそ充実している面も大きいと思います。
カラフルな文字はかえって見づらいので、あえてシャープペンだけでシンプルに。会議の内容などが書き込める、フリースペースが多い手帳を選んでいるそうです。
社内報に紹介された佐藤さんの時短術。お休みの日につくりおきした"ひき肉あん"で、餃子やコロッケをパパッと作ってしまう"リメイクレシピ"。
――では、ママになったことでお仕事のプラスになったことは大きいですか?
はい。例えばお子さんのいる派遣スタッフの方で、私にこどもがいることで心を開いてくれる人も少なくないんです。これは私だけでなく、ワーキングマザーが多いパソナグループ全体の傾向でもあります。
――プライベートで大切にしていることは?
育休中に、地域の区民センターで出会ったママ友たちと、月に1回ほど集まるのが楽しみです。こどもの保育園もそれぞれ違うので、いろいろ情報交換ができて楽しいですよ。おむつトレーニングも保育園によって全然違うんだな、とか。あとは、こどもが寝る前に「今日はどんなことがあった?」と話すようにしているんですが...。
――私もやっています。でもうちの子、「わかんない」って言うんですよ(笑)。
うちもです! 「何をやった?」と聞いても、「三輪車」の一言で会話が終わったり。男の子ってこんな感じなんですかね(笑)。
取材した部屋は天井にトマトが実っている"トマト会議室"。その他、ビル内に畑があったり、キュウリ棚があったりと、とっても楽しいオフィスでした。
週末にパパと自転車で図書館に行き、色々な本を借りてきます。最近のお気に入りは『11ぴきシリーズ』です。

佐藤さんの ある1日


5:00 起床→仕事(メールチェック、資料作成など)
6:30 息子を起こす
7:00 朝食、身じたくなど
8:00 家族3人で外出、保育園へ送る(ご主人が担当)
8:45 出社、朝礼
9:00 メールチェック、稟議書確認、決裁チェック
12:00 社内の先輩ワーキングマザーとランチ
13:00 部内のチーム長数名とミーティング、他ミーティング2本
18:00 退社
19:00 保育園にお迎え
19:30 帰宅、夕食など(土・日につくりおきした料理を様々なメニューにアレンジ)
20:30 お風呂など
22:00 息子と一緒に就寝

取材を終えて

女性が働きやすい制度が整っていてうらやましい限りですが、その制度に頼るだけでなく、より生産性を上げるために様々な努力されている佐藤さんとは、こどもの年齢が同じということもあり、プライベートの話もとても盛り上がりました。現業の棚卸しは時間がかかる作業ですが、どの仕事にどれだけ時間をかけているのかが一目瞭然。手帳に仕事もプライベートも一元化しておけば、時間管理がしやすいですね。時間や仕事量をひと目で把握できる方法は、仕事に限らず様々なシーンで活用でき、なおかつ第3者が見てもすぐに理解できるとても有益なやり方ですね。(河内)

文/横堀夏代 撮影/石河正武