仕事のプロ

2014.11.28

出産・育児の経験から新しいビジネスが誕生

Vol.15「上手に手放す」を実践中!

株式会社エコトワザ
代表取締役 大塚玲奈さん
大学卒業後、株式会社リクルートに入社。営業職を経て、2006年に株式会社エコトワザを創業。日本の自然にも人にもやさしいモノヅクリを伝える英日バイリンガルの情報誌『eco+waza』の発行を経て、2013年から、季節に合わせた自然素材の衣食住アイテムと商品と情報冊子をセットにした『TOMORROW BOX』の通信販売サービスを開始。2歳女児のワーキングマザー。

インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(4歳児のワーキングマザー)

育児で得た視点を生かして
エコに役立つ商品をセレクト
――大塚さんは25歳でエコトワザを起業なさったそうですね。20代で会社を立ち上げたのはかなりの問題意識があったからだと思いますが、設立の経緯から教えていただけますか?
幼い頃、小児ぜんそくを患っていた経験から、環境問題への関心が芽生え、高校時代には「環境問題解決のために会社をつくりたい」と考えていました。また、10歳までアメリカで生活していたこともあり、帰国子女として自分にできることを模索しました。その結果、"日本のエコと技を世界へ"をモットーに、工芸品を扱う日本の中小企業の海外見本市への出展のサポートビジネスを始めました。日本のものづくり精神にはサステナビリティ(持続可能性)と通じるものがあり、海外の人が日本の工芸品を生活に取り入れることが環境問題の解決につながればいいと考えたのです。ところがBtoBの輸出ビジネスではどうしても環境観点が後回しになってしまうことから、並行して直接生活者の方に届ける英日バイリンガルのオンラインショップと情報誌を4年間ほど発行しました。
――現在のエコトワザの事業内容とは少し違いますよね。会社としてのミッションが変化してきた、ということでしょうか。
そうですね。環境問題を改善するには、エコなアイテムを市場に送るだけでも不十分だし、情報を発信するだけでもダメだと気づいて、両方を同時に届ける手段が必要だと感じていました。そんな時期に長女を出産し、育児をするなかで、「今まで海外ばかりに目を向けてきたけど、ライフスタイルに日本らしいエコを取り入れたいと思っているのは、むしろ日本の女性ではないか」と思い始めたんです。この2つの気づきをフックに、季節の変化に沿った衣食住のアイテムと情報冊子をお届けする『TOMORROW BOX』の通信販売サービスを始めました。アイテムは"合成化学物質を使っていない""生態系を出来るだけ損なわない"といった視点で選んでいます。
――お客さまの反応はいかがですか?
『身体に負担のないモノを使いたいけれど買い集める時間がないので、毎月セットになって届くのがありがたい』『今月は何が送られてくるか楽しみ』と喜んでいただき、口コミで少しずつお客さまが増えています。私自身が育児のなかで感じたことも生かして毎月の商品をセレクトしているので、お子様のいる方からレスポンスをいただけると、とてもうれしいですね。
――育児の経験がどのようにビジネスに生かされているのか、とても興味があります。
例えば洗濯のときに、「直接こどもに触れたり口に入ることもある肌着なのに、合成界面活性剤で洗って成分が残っていたらどうしよう」と不安になったことから、「こどもに安全なモノを家事に使いたいと考えているお母さんは多いはず」と気づきました。そこで『TOMORROW BOX』でも、無添加粉石けんの洗濯用洗剤をご提案してみました。
――育児をきっかけに新しい視点がプラスされたわけですね。忙しいワーキングマザーの需要もありそうですし、今後の展開が楽しみです。
9月の『TOMORROW BOX』は、昔懐かしの洗濯セットと肌に優しいヘチマブラシやヘチマ水です。
仕事も育児も、人に任せて
うまくいくことは多い
――起業してから数年後にご出産されていますが、ワーキングマザーになってから働き方は変わりましたか?
新卒で入社した会社が「120%の力を出し切って働く!」といった社風だったこともあって、出産前は何時間でもがむしゃらに働くタイプでした。それに、私自身なんでも自分でやらないと気が済まないところもありましたね。でもそのスタイルって、こどもができると物理的に無理じゃないですか。
――そうですね。夕方になったら保育園のお迎えもあるし。
だから、今まで抱え込んでしまっていた広報や経理の仕事を、他のスタッフに任せるようにしました。もうすぐ次女が生まれるためお休みをいただくので、引き継ぎをしながら「上手に手放す」ことを実践中です。例えば私は、ラジオ番組の1コーナー(J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」内の「THINKING THE NEW STANDARD」)に毎週出演し、日本が誇る「エコな技」やアイテムをご紹介させていただいていました。でも9月からは、別のメンバーにバトンタッチしました。ラジオで発信する話題なども、その社員に任せています。
――「仕事を他人に任せる」って難しいですよね。私はつい、自分のやり方まで引き継いでしまいそうになり・・・自分でストップをかけることもしばしば。
わかります。そこは永遠の課題ですね。ただ、任せればうまく回っていくことも多いな、と最近は感じます。仕事だけでなく、夫に育児を任せるときとか、こどもを保育園に預けるときもそうですね。
――帰宅後は、お子さんとどんな時間を過ごしていますか?
娘は私にべったりですね。家事をしているときも、ずっと足元にいて、「抱っこして」とアピールしてきます(笑)。だから以前は「こどもが寝ないとお風呂掃除ができない」という悩みがあったんです。塩素系など強い洗剤を使っていると、こどもがなめたり吸い込む危険があったので。でもあるとき、「それも効率的じゃないな」と感じて、クエン酸と重曹を使って掃除をすることにしました。これなら両方とも料理にも使うようなもので危なくないので、今は娘と一緒にお掃除が日課です。
――間もなく第2子をご出産ですが、復帰はいつごろ?
できるだけ早く復職したいですね。ただ、しばらくは時短で働くことになるかもしれません。私だけでなく、社員のなかには短時間正社員という形で働いているスタッフもいるので、補完し合いながら働きやすい形をつくっていきたいと思います。
――中小企業新戦力発掘プロジェクトの受け入れ企業として、ママインターンの女性を受け入れていらっしゃいますね。それも「働きやすい形」の一つのあり方を模索する試みからでしょうか?
そうですね。弊社はたまたま女性だけの組織ですが、男性、女性に関係なく「みんなが柔軟性をもった働き方ができる会社にしたい」と考えていました。今回のプロジェクトでは「出産などで職場経験にブランクができて、いきなりフルタイムで働くのは不安」といった方が対象で、働く日数や時間もフレキシブルです。弊社でインターンシップを受けてもらっている女性は、現段階では週3回・4時間ずつの働き方を希望していたので、「週に何回か経理や商品企画のアシスタントをしてもらいたい」という私たちの要望にもぴったりでした。

※中小企業新戦力発掘プロジェクトとは
経済産業省中小企業庁が、育児等で一度退職している再就職希望者や就職していない方を対象に行った、中小企業の生産現場等に触れる、職場実習のプログラム。(登録は終了しています)
――お互いのニーズが合致したわけですね。
しかも、複数の職場経験がある方なので、電話の受け答えなどもしっかりしていて、安心していろいろお任せしています。
――出産や育児を経たからこそ新しい事業を生み出したり、ママに働きやすい形を取り入れたりするようになった大塚さん。今後も、ますますフレキシブルで力強い会社経営を期待しています。
取材協力:Vegetarian Cuisine & Cafe
【お知らせ】
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『TOMORROW BOX~あしたの箱~』は、あなたの大切な方に、毎月一箱(12ヶ月間)プレゼントを届けると同時に、こどもの未来をサポートしている団体への寄付ができる、ギフトの定期便です。毎日の感謝の気持ちをこめて奥様に、あるいはお友だちの結婚や出産祝いに、もちろん忙しい自分へのご褒美にも!
詳しくはこちら>>株式会社エコトワザ

大塚さんの ある1日


5:30 起床、朝食、身じたく
7:00 外出、会社近くのカフェで企画書作成
(こどもに朝食を食べさせて、保育園に送るのはご主人が担当)
8:00 出社、企画書作成の続き
9:00 出社した社員と一緒にオフィスの掃除
10:00 朝のミーティング
12:00 外出、ランチ、クライアントと打合せ
16:30 帰社、メールチェックなど
17:30 退社
18:30 保育園にお迎え、買い物、帰宅、夕食準備
19:30 夕食、こどもとお風呂
21:30 こどもと一緒に就寝
(ご主人は夜帰宅し、こどもの朝食を準備してから就寝)

取材を終えて

大塚さんのこれまでの経歴をお伺いし、その時々の課題意識に対してご自分が培ってきたスキル・知識をうまく活用して解決方法(ビジネス)を提案していることがとても印象的でした。また、その展開がとてもスピーディ! 常に「課題・解決」を考えている方なのではないでしょうか。そういった立場にあると、仕事の仕方さえも自分のやり方を押し付ける場合があるのですが、人に任したらうまくいくことも多い、という大塚さんの意見に私も大きくうなづいてしまいました。自分の考えにはないやり方を他人は持っている、という視点に立てば、自ずと人のやり方を見てみたい、という姿勢になると思います。そうしたら、目的を達成するだけでなく、上手に自分のスキルを増やすこともできて、一石二鳥ですよね。(河内)

文/横堀夏代 撮影/野村一磨