ライフのコツ

2013.10.30

こども本位にする3つの大切なこと

関わり方を変えればこどもは変わる

出産後、職場に復帰をすると、とたんにこどもと接する時間が短くなり、「やっぱり、もっとこどもといたほうがいい?」「仕事を変えるべきなのかしら……」と、不安な気持ちになるワーキングマザーは多いはず。そこで、『忙しいビジネスマンのための3分間育児』の著者であり心理カウンセラーでもあるおおたとしまさ氏に、働きながら、こどもと有意義な時間を過ごすコツを伺って来ました。

何かをやってあげる3分間よりも、 集中して"いい聞き役"になる3分へ。
「親って、こどもには何でもしてあげたいでしょ。やってあげたい気持ちを優先して、親がどれだけ出来たか?が育児の達成感になりがちなんです。でも、こどもからみると、親が"してあげたいこと"=自分が"したいこと"ではないんですよね」とは、おおたとしまさ氏。
とくに、こどもと四六時中一緒にいられないワーキングマザーは"こどものために"と、やってあげたい気持ちが溢れてしまい、こどもの気持ちを置き去りにしがち。

「短い時間の中で何をしてあげようではなく、まずは、いい聞き役になることです」。

今日一日あったこと、友だちと遊んで楽しかったこと、悲しかったこと、嫌だったこと......。大人だって、一日の中での出来事を誰かに聞いてもらえると、気持ちが穏やかになる。こどもだって同じだ。「"何をいってもママが全部受け止めてくれている"ママはほっとできる存在なんだ"と感じるような、温かい時間を過ごすことが、第一歩だと思っています」と話す。そのためにも必要なのが「その場に3分でもいいから集中すること」

こどもが話している最中に、つい携帯メールをチェックしたり、仕事のことを考えてしまう人も多いはず。「最初は1分でもいいから、この時間は"こどもの話を聞く"と決めて集中してあげてほしい。短い時間でも集中して聞くことで、自己肯定感も高まるから、親が集中することは大事なんです」。
「3分って集中すると案外長いですよ。こどもの満足感も十分得られる時間です」。 と語るおおた氏。
ずっと一緒じゃないからこそ、 こどもの自発性を育める。
本当はずっと一緒にいて 話も聞いてあげたい、なにを考えているのかすべて理解してあげたい、一緒に遊んで感動も共有したい......。働き始めると子育てと仕事、家事のバランスがとれず、悩んでいる女性も多い。

「でも、離れているからこそ、愛おしさも増すんですね。それはこどもも同じなので、離れている時間にあったことを聞く、お母さんも自分のことを話すなどして、一緒にいなかった時間を共有していきましょう」。

また、限られた時間での育児なら、一から十まで教えるのではなく、こどもの自発性を促すような育児に自然になるというメリットも。

忙しいからこそ、こどもにヒントや環境を与えて、自分でがんばらせるようにする。すると、一から十まで教わるよりもこどもは自分で考えて工夫するようになる。そのことをおおた氏は著書『忙しいビジネスマンの3分間育児』の中で「魚を与えず、釣りを教える」と表現している。

「忙しい」「時間がない」状況だからこそ、理想的な距離感が保てるのだそう。
モデリング・カウンセリング・ティーチング これが、自発性を促す育児の3種の神器。
「無駄にしかる機会を減らすには、3つほど親に実践してもらいことがあります。 1つ目は、自分が見本になること。 2つ目が叱るときもこどもの話をよく聞くこと。 3つめは怒るのではなく、やり方を教えてあげることです」。

こどもが自分のマネをする姿に「あちゃ~」と思った経験はないだろうか?こどもは親の行動をよく見て、真似ていくもの。まずは親がいい見本になり「モデリング」してもらうのだ。

「自分が近所の人に挨拶をしないのに、こどもには挨拶しなさい!といってもダメなんですね。こどもは親の姿をよく見ていますから(笑)」と、おおた氏は話す。

次にこどもがいうことを聞かないときは、「カウンセリング」が必要です。

「こどもにはこどもなりの理屈があるんですね。それを聞かずに、頭ごなしに"ダメ!"といわれれば、こどもは"自分の話を聞いてくれない"ことに対して怒ってしまい、泣きはじめます。親の立場になると自分の要求が通らない(例えば「買って貰えない」)から泣くなんて!"と、さらに怒りたくなってしまいますね。実は話がかみ合っていないんですよ。だから、こどもの話をよく話を聞いた上で、少し先に約束するのがベスト。 たとえば"この前買ったお菓子がなくなったら、次はこのチョコレートを買おうね"など、少し先の約束をすることで、約束の日まで我慢する訓練にもなるんです」。

"そんなことで上手くいくの?""それでいうことを聞くなら怒っていません!"という声も聞こえてきそうだが、おおた氏曰く「騙されたと思って、一度やってみてください!」と。

最後は、怒る前に正しいやり方を教える「ティーチング」。

おおた氏自身も、友人のご母親の姿を見て、これか!と思った瞬間があったという。  「こどもを連れて、友人のご実家に遊びに行ったんです。猫を飼っているお家で、うちの子が、餌をやろうとして皿をひっくり返したんですよ。僕が"コラッ!"と怒ったら、友人のお母さんが"そんな怒ってもダメでしょ(笑)"って。餌のやり方をこどもに教えはじめたんですね。そうしたら、いうことを聞いたんです、うちの子が!」。

そんな経験から、間違ったときは、何がしたかったのかを聞き、正しい方法を伝えてあげることに。「この3つを心がけていると、無駄に怒ることもなくなりますよ」。

「この3つを心がけていると、無駄に怒ることもなくなりますよ」。と心強いことばをかけてくれるおおた氏。
お子さんが小さなころにおおた氏がつくった手作りおもちゃ。お父さんにつくってほしい!
こどもの心に届く "I"メッセージの伝え方。
とはいえ、実際には親の考えを伝えなければいけないシーンだってたくさんある。そんなときは、伝え方も少し工夫してみては? と、おおた氏は提案する 。

「"I"メッセージと呼んでいるんですが、"そんなことしたら、お母さん、悲しいな"とか"お母さんは辛いよ"とか、まずは自分を主語にして伝えてみる。そうすると、こどもも命令とか強制されたように感じにくい。だから素直に言うことを聞いてくれやすくなります」。

意外とこどもはシンプル。いうことを聞く回数も増え、無駄に叱ることもなくなるという。「大人も一緒ですよね。人が悲しむことは自然とやらなくなります」。ただ、決して叱らない教育がすべてではないとも。

「叱らない教育がいいと話す人もいますが、どうしたって叱るときはありますよね。なので"また叱ってしまった"と落ち込む必要はないと思います。親自身の自己肯定感が薄れてしまうのは、子育てにもいいことはない。 母親自身が、いろんな価値観やいろんな考え方を受け入れて、それでいいんだよって、大きな気持ちでいなければ、子どもも"ママは受け入れてくれる人"と思えないんですね。なので、親自身も頑張っている自分を受け入れる、抱きしめてあげることも、子育てには大事なんです」


参考:おおたとしまささんの第2弾インタビュー記事『夫に協力してもらう。ちょっとしたコツ。』

おおた としまさ

育児・教育ジャーナリスト。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。著書は『忙しいビジネスマンのための3分間育児』『パパのトリセツ』、『ガミガミ母さん、ダメダメ父さんから抜け出す68の方法』など。

  文/坂本真理 撮影/ヤマグチイッキ