仕事のプロ

2013.10.25

楽しく働いてこどもに明るい未来を見せたい

Vol.5 広い視野を持ってキャリアを醸成

UR都市機構(都市再生機構) 東日本都市再生本部
総合戦略部 戦略第2チーム
中山裕子さん
都市再生における異分野連携を模索し、企業と共に「開発のその後」を考えたまちづくりを推進するチームで活動中。「子育て支援のまちづくり」のプロジェクトにも携わっている。10歳と6歳の男児、3歳女児のいるワーキングマザー。

インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(2歳児のワーキングマザー)

ランチタイムを仕事の情報交換に有効活用

――中山さんは組織内で、「ママランチ会」というイベントをなさっているんですね。
そんな大がかりなものじゃないんですが...。こどもがいると、他のセクションにいるメンバーとカジュアルに情報交換する機会がなかなかありません。飲み会とかって情報交換の場だと思うんですが、そんな機会をなんとか持てないかな、となるべく自分のチーム外の人を誘ってランチに行くようにしました。その発展形として、社内のワーキングマザーに広く声をかけて「ママランチ会」が実現しました。1時間、みんなワーッとしゃべり続けて、まとまりのない会でした(笑)。

――楽しそうですね! どんな話題が出たんですか?
こどもの話も出ましたが、案外多かったのは仕事の話題でしたね。ランチの場で「今、こんな仕事に関わっている」とざっくばらんに情報交換をして、「これは自分が携わっている仕事につながりそうかな」と感じたら、改めて就業時間にミーティングを設定することもあります。こういうコミュニケーションって、喫煙ルームのネットワークのようなものかもしれないな、と思っています。

――ランチタイムを事前ヒアリングの場として有効活用しているわけですね。ワーキングマザーの会だと、仕事の悩みも共有しやすいのでは?
そうですね。働き方のバランスで悩んでいる人の意見も耳にします。私も育児休暇から復帰するたびに、「どこまでアクセルを踏み込んでいいんだろう?」と戸惑う部分がありました。

働き方や体調の変化で悩んだこともあるけれど...

――面白い表現ですが、それはどういう...。
時短勤務だし、こどもが小さくて体調が不安定だと急な休みをとることもあるし、どれくらいの仕事量をこなせるか自分自身が把握できなかったんです。だから、「これをやりましょう!」って新しい提案も自分からはしづらいと感じていました。
――私もそれは感じます。解決策ってあるんでしょうか。
時間...ですかね。復帰して日数が経つにつれて、子育てと仕事のバランスがわかってきますし、こどもも大きくなって条件も変わってきます。それに、子育て中だからこそ可能なキャリア育成もあると考えたら、少しは気休めになるでしょうか。子育て経験そのものも仕事に生かせるでしょうし、私は2人目のこどもの育休中に、保育士の資格を取得しました。

――それはすごいですね!
UR都市機構では「子育てを支援するまち」というコンセプトのまちづくりを行うこともあるので、保育士の資格があれば今後の仕事に役立つかもしれないと思って。 それに、こどもを預けている保育園で保育士のサポートをしている方がいらっしゃるのを見て、会社をリタイアした後にも、地元でそういうサポートができる可能性もあるかも、と思って。

――子育て中って「キャリアがストップしてしまう」と考えがちですけど、そういう経験値の上げ方もあったんですね。人生スパンのキャリアを積むというか...。とてもステキな考え方だと思います。
ただ、そういうことも、私一人ではなく周囲のサポートがあってこそ、なので偉そうなことは言えないのですが。















UR都市機構の子育て支援として、最近では2013年5月からUR賃貸の一部で託児や学童クラブのサービスを試験的に導入。また以前より公共・公益施設を活用した様々な子育て支援サービス、住戸内のリフォームなど、多角的に子育てをサポートしている。【参考:専用ホームページ「コソダテUR」
中山さんの所属する都市再生部門でも、様々な生活やビジネスのサポート視点をまちづくりに組み込んでいる。【ホームページ「都市再生のプロデュース」

――中山さんご自身が、他に悩んだことはありますか?
育休から復帰するたびに、「言葉が出てこない!」と愕然とするんです。ビジネス用語や敬語もそうなんですが、とにかく適切な言葉が思い浮かばないんですよね。

――すごく共感できます! ブランクがあるから、という理由以上の何かがありますよね。
3人目のこどものときは、授乳中に仕事に復帰したのですが、なぜか集中力が切れがちで...。でも、断乳したらだいぶ元通りになったんですよ。それで「集中力低下や言葉が出てこないことって、ホルモンバランスと関係あるかも」と自分で結論づけました。

――「これが原因かな」という落としどころがあると、安心できるかも(笑)。
本当に「ホルモンバランスが関係しているかどうか」はわからないですよ(笑)。でも納得したら落ち着くというか...。 特に初めての子だと、妊娠から出産、育児と今までにない経験をするわけですから、体調も気持ちも揺れ動くのは当然ですよね。今、「出産前と違う」と悩んでいるワーキングマザーがいたら、「必ず落ち着くから」とアドバイスしたいです。



粘土遊びは片付けが面倒なので、代わりにクッキー作りを。年の差があっても一緒に楽しめる、休日の人気遊びメニューの一つです。
仕事も子育ても周囲のサポートがないと成り立ちません。状況によってできる人が家事・育児をしています。


仕事も子育ても
ほどよい余裕を求めたい
――お子さんが3人いらっしゃると、1人1人とコミュニケーションをとる時間も限られてきそうですが...。
そうなんです。できるだけ話をしようと思っているんですが、なかなか...。ただ、長男は小学校高学年になり難しい話題にもついてこれるようになってきたので、私の仕事について話をするようにはなりました。

――ステキですね。お子さんもうれしいでしょう。
こどもに明るい未来を見せたいというか...。「大人になって仕事をするのは楽しいことなんだよ」というのを、身をもって示せたらいいな、と思うんです。そのために、自分自身が仕事を楽しむことが大事だと思います。私にとって、仕事の楽しい部分は、まちづくりのためのアイディアを考えるところですが、悩みや発見を仲間と共有することも大事ですね。ランチもその一環です。

――下の2人のお子さんとはどんな機会にお話しているんですか?
余裕がある時は、一緒に食事の準備をしながら話します。こどもたちに手伝わせると正直、面倒ですよね。こどもが寝てる間にやるのが一番効率的。でも最近、「効率性を求めすぎない方がいいかな」と思うようになって。

――ワーキングマザーって「効率命!」になりがちですが...。
私も、今もそういう部分は大きいです。でも、家事をしている姿を見せないと、こどもたちが生活の知恵を身近に感じられなくなるんじゃないかと焦りが...。

――そこまで考えていらっしゃるんですか?!(笑)。でも、「効率性を求めすぎない」という姿勢は、仕事でも重要かもしれませんね。
そうですね。あえて雑談を挟んだりすることでアイデアが生まれたり、一つの案件をじっくり考えることでよりよい内容になったりする気がします。ただ現実には、仕事も子育ても余裕を持ってできているわけでは全然ないので、毎日が手探りです。

中山さんの1日

7:00 起床
朝食づくり、自分の身じたく
(次男と長女の身じたく、保育園への送りはご主人が担当)
8:00 出勤
9:15~
17:40
仕事
(日によって残業を行うこともある)
18:45 保育園へお迎え
(日によってご主人や祖父母に依頼)
帰宅
19:45 夕食
20:30 入浴(長女と)
21:00 こどもたちとコミュニケーション
(長女や次男に添い寝、長男の勉強をみる...など)
22:30 プライベート(仕事の下調べ、DVD観賞など)
(洗濯はご主人が担当)
25:00 就寝

取材を終えて

取材の後に、中山さん主催の「ママランチ会」に私も参加させてもらいました。そのときの話題に上った社内制度のことは、なかなか一人では正しく理解しづらい内容だったようで、皆さんで共有・確認されていました。また、執務スペースではなかなか話題にしづらいこどもの事も、遠慮なく話し合える「ママランチ会」は、とても有意義な時間と感じました。 中山さんがお話してくださった「お子様にお仕事の話をされる」ということ、ワーキングマザーならではの子育て法だと実感しました。(河内)

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ