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2022.11.22

シェアリングエコノミーとは?「共有」によって生まれる新たな経済

知っておきたいトレンドワード20:シェアリングエコノミー

IT技術の進展や人々の価値観の変化などにより、モノやサービスを「シェアする」、シェアリングエコノミーが急速に広がっている。シェアリングエコノミーとはどのような仕組みでどんなメリットがあるのか。身近になりつつあるシェアするサービスにはどのようなものがあるのだろうか。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、個人・組織・団体などが保有する何らかの有形・無形の資源(モノ、場所、技能、資金など)を売買、貸し出し、利用者と共有(シェア)する経済モデルのことをいいます(※1)。

多くの場合、資源の売買や貸し借りはインターネット上のマッチングプラットフォームを介して行われています。提供したい人(貸したい人、売りたい人)と、利用したい人(借りたい人、買いたい人)がマッチングプラットフォームに登録し、お互いが合意すれば、提供者は資源を提供し、利用者はそれを利用します。

代表的なものとして、空き部屋や空き家、別荘などを宿泊場所として旅行者に貸し出すサービス「Airbnb(エアービーアンドビー)」などがあります。

※1:シェアリングエコノミーの普及・促進活動を行う一般社団法人シェアリングエコノミー協会のハンドブックより抜粋。




なぜシェアリングエコノミーが
注目されているのか

シェアリングエコノミーが注目され、徐々に普及してきている背景には、大きく、「インターネットの普及」「IT技術の進展」「人々の価値観の変化」の3つが挙げられます。具体的には、次のような変化によって、シェアリングサービスへの関心が高まり、普及が進んでいます。

●スマートフォンやタブレット端末が普及したことで、人々が所有するモノや空間に関する情報を簡単に公開・共有することが可能になった
●IT技術の進展により、オンライン決済を安全かつ安価に行えるようになった
●人々の所有欲の低下(モノ消費からコト消費へ/所有から共有へ)
●景気低迷などによる、経済性を求める人の増加/環境保全や持続可能性(サステナビリティ)への意識の高まり(新しくモノを買うよりも、借りる・シェアする方が経済的/エコである、など)
●単身世帯や核家族世帯、共働きの子育て世帯などの増加による、家庭内での家事・育児・介護の担い手不足(外注ニーズの高まり)

また、市場規模の拡大も予測されています。一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で行った市場調査によると、2021年度の日本におけるシェアリングエコノミーの市場規模(資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額)は2兆4,198億円で、2018年度(1兆8,874億円)のおよそ1.3倍に伸びています。

そして、現状のペースで成長した場合、2030年には7兆6,455億円に。新型コロナウイルス感染拡大の影響でeコマース利用のすそ野が広がったことで、インターネット上のマッチングプラットフォーム利用への不安や認知度の低さなどの課題が軽減されることも見込まれており、その場合には14兆2,799億円に拡大すると予測されています。これはコンビニエンスストアの年間販売額と同程度です。




シェアリングエコノミーのメリット

シェアリングエコノミーには、利用者側、提供者側の両方にメリットがあります。

利用者側のメリット(1)所有することなく、必要なときにだけ低価格で利用できる

シェアリングサービスを活用すれば、モノを購入する必要がなく、購入後の維持や管理に必要なコストも削減することができます。また、仲介手数料がかからないサービスが多く、従来のBtoCで受けていたサービスよりも低価格で利用することができます。


利用者側のメリット(2)決済が容易

インターネット上のマッチングプラットフォームを介したシェアリングサービスの多くは、クレジットカードなどのキャッシュレス決済を採用しているため、最低限の手続きだけで決済が可能です。


提供者側のメリット(1)遊休資産を有効活用できる

遊休資産と呼ばれる、使っていないモノや空間、眠らせているスキルやすき間時間などを活用することで、資産としての新たな価値をつけることができます。そして、対価として収入を得ることもできます。


提供者側のメリット(2)初期費用がさほどかからない

すでに所有している資産を貸し出すだけで済むため、初期費用や設備投資などの費用がさほどかかりません。




シェアリングエコノミーの
5つの領域と具体的事例

シェアリングエコノミーは、主に空間、移動、モノ、スキル、お金の5つ領域に分類されます。

空間のシェア

空き家や空き部屋、空いた場所といった空間のシェアです。ホームシェアや民泊、駐車場、会議室などのシェアが代表的なものとして挙げられます。

akippa(あきっぱ)
一時的に駐車場を借りたい人と、駐車スペースを提供したい人をつなぐサービスです。個人宅やマンション、事業所などの空いているスペースを持っている人がakippaに駐車場の登録・掲載行い、駐車場を一時的に借りたい人は、予約アプリにてオンライン決済で15分単位で予約し、利用することができます。

スペースマーケット
空きスペースを有効活用したい人と、仕事や遊び、撮影などでスペースを使いたい人をつなぐサービスです。 住宅や古民家、会議室、撮影スタジオ、映画館、廃校など、さまざまなタイプの空間が貸し出されており、撮影や会議、イベントなどに利用されています。


移動のシェア

自動車や自転車など、移動手段のシェアです。相乗り、シェアサイクル、カーシェアなどが代表的なものとして挙げられます。

Anyca(エニカ)
乗っていない車と、車に乗りたい人をつなぐカーシェアリングサービスです。個人オーナーやディーラーとカーシェアできるため、幅広いバリエーションの車を選ぶことができるのが特徴です。利用者は、カーシェア予約と連動して保険会社が提供している保険補償システムに加入します。また、オーナーも時間単位型自動車保険に加入します。

HELLO CYCLING(ハローサイクリング)
東京を中心に全国で利用できるシェアサイクリングサービスです。アプリから近くの自転車を検索・予約し、電動アシスト付き自転車やスポーツタイプの電動アシスト付き自転車を利用することができます。また、ICカードを登録しておくと、HELLO CYCLINGのステーションから予約不要で自転車を利用することもできます。返却場所は、HELLO CYCLINGのステーションであれば、借りた場所でなくても返せます。


モノのシェア

普段は使わないモノや、単発でしか使わないモノを中心に、モノをシェアします。フリーマーケット、レンタルサービスなどが代表的です。

TABETE(タベテ)
店舗で余ってしまった食品と、 余った食品を購入したい買い手をつなぐフードシェアリングサービスです。店舗は、作りすぎてしまったパンや惣菜、予約のキャンセルが出てしまった食事、食材の端材でつくったオリジナル商品などの情報をアプリに掲載し、利用者は、食べたい食事を見つけたら引取時間を設定してアプリで決済、指定の時間になったらお店に受け取りに行く仕組みです。

アイカサ
急な雨で傘がない人に向けた、傘のレンタルサービスです。飲食店、大学、小規模店舗、鉄道事業者など、全国の事業者と連携し、全国に約1000箇所の無人のアイカサスポット(傘立てスタンド)を設置。利用者はアプリでスポットのQRコードを読み取ると24時間70円で何度も傘を借りることができ、雨が止めば好きなスポットで返却することができます。スポット設置事業者にとっては、来店機会が創出されます。


スキルのシェア

個々人が得意とすることや、その人が持っている技能をシェアすることで、相手の課題を解決します。家事代行、育児、知識、料理、介護、教育、観光などの分野の技能をシェアするサービスが代表的です。

タスカジ
家事をお願いしたい人と、家事スキルを活かして働く人をつなぐ、家事代行マッチングサービスです。掃除や料理、買い物、ペットケア、整理収納、作り置き、洗濯、チャイルドケアの8つの分野から、利用者は提供者であるハウスキーパーのプロフィールとレビューを見て、ニーズに合うハウスキーパーを選び、依頼することができます。

ストアカ
教えたい人と、学びたい人をつなぐマッチングサービスです。自身の得意なことや専門的なスキルを誰かに教えたい人は「先生」として講座を開催することができ、利用者はビジネス・ITスキルから趣味の習いごとまで、約380のカテゴリーの中から1回1,000円から気軽に学ぶことができます。


お金のシェア

個人が持つ金銭を、ほかの人々や組織、プロジェクトに貸し出すのがお金のシェアです。クラウドファンディングサービスが代表的です。

READYFOR(レディフォー)
クラウドファンディングには、モノやサービス、体験などの「リターン」を販売する購入型、寄付金として資金を募り、リターンは対価性のないものに限った寄付型、株式発行やファンドの仕組みを利用した投融資資金を募る金融型の3種類があります。READYFORは、購入型と寄付型のクラウドファンディングを扱っており、社会課題を解決しようとするプロジェクトが多いという特徴があります。

Makuake(マクアケ)
実行者(作り手など)と、 実行者の挑戦を応援したいと思うサポーター(生活者)をつなぐ、「アタラシイものや体験の応援購入サービス」を銘打った、購入型のクラウドファンディングサービスです。プロジェクト実行者は企画中の新製品やサービスを掲載し、応援購入したサポーターに対してその製品やサービスを提供します。先行予約というサービスの特性を生かし、リスクを抑えて事業を始めることができるのが特徴です。


作成/MANA-Biz編集部