仕事に役立つオノマトペ

2021.08.19

苦手な人には「ふわ~」+ゆるキャラ扱い

オノマトペ7:相性が悪い人と接するとき

「ビジネスだけのおつき合いだから」とは思っても、苦手な人と接するのはおっくうなもの。2種類のオノマトペづかいで、コミュニケーションを少しだけでもスムーズに変えていきましょう。

「ふわ~」と唱えるアクションで 
自分の心も相手の心もソフトに
職場や取引先に必ず1人は、「あの人、苦手だな」という人がいるものです。だからといってコミュニケーションを避けていると、仕事に支障をきたすことになりかねません。
その解決策は、ズバリ受け容れること。相手の言葉にカチンときてもネガティブな言葉で返さず、やわらかく接するのです。柳の枝が強風を受けて、しなやかに「ふわ~ふわ~」と揺れているイメージです。難しければ、心の中で「ふわ~」と唱えてもいいでしょう。
このアクションが効果的なのは、「ふわ~」という音によって、あなたのメンタルコンディションもソフトに変わるから。すると、自然と笑顔で相手に向かうことになります。そこで勇気を出して、「いつもありがとうございます」「勉強になります」とひと言。これで相手の反応もきっと変わるはずです。
オノマトペで
苦手な人が親しみやすい存在に
また、苦手な人にひそかにニックネームをつけるのもオススメです。それも、オノマトペを使ったニックネームがよいでしょう。例えば、「これだから......」が口癖のちょっとメタボ気味な上司には「たぷたぷさん」、口の軽い後輩には「ペラ子」、いつも不機嫌なヒゲ面の同僚には「もじゃー」といった具合です。
オノマトペのニックネームをまとったとたん、苦手な人がなんとなくゆるキャラのようなイメージになって、相手と接するときの不快感が和らぐ気がしませんか? すると、ネガティブな気持ちが薄れて少しだけ親しみがわいてきます。親しみが生まれれば、その人に自然な態度が取れるようになり、相手との関係性も好転する可能性が出てきます。
オノマトペで
コミュニケーションのハードルが下がる?
気をつけないといけないのは、これらのニックネームはあくまでも自分の中の呼び名であって口にしてはいけないということです。
ただし、脳内でニックネームをつけるのは自由です。しかも、自分の苦手意識を緩和してプラスの気持ちを呼び込むための行動なので、肯定的にとらえてもよいでしょう。
オノマトペを使ったニックネームの効果を学生39人の協力を得て検証してみたところ、とっつきにくそうな人に対して、本名よりオノマトペのニックネームで認識した方が「話しかけやすい」「共同作業がしやすい」と答えた学生が明らかに多かったのです。これだけで効果が証明できたわけではありませんが、コミュニケーションを円滑にする手段として試す価値はあります。

藤野良孝
FUJINO YOSHITAKA

朝日大学保健医療学部教授、早稲田大学オープンカレッジ講師。国立大学法人総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了後、文部科学省所管独立行政法人メディア教育開発センター研究開発部助教などを経て現職。スポーツやビジネス、日常生活で使われるオノマトペの効果について多角的に研究し、テレビやラジオ、講演などを通じて普及に努めている。著書に『運動能力がアップする「声の魔法」』①~③巻(くもん出版)、『脳と体の動きが一変する秘密の「かけ声」』(青春出版社)など多数。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ イラスト/岩並明里