リサーチ

2021.07.05

リモート手当の理想と現実に大きなギャップ

平均額の3,683円に不満の声

オフィス以外の場所で働くリモートワークの増加にともない、個人負担の出費が課題になっている。『企業からのリモート手当に関するアンケート調査』の結果から、リモート手当の現状を探る。
※『企業からのリモート手当に関するアンケート調査』は2021年1月に株式会社PLAN-Bが運営するカジナビが、全国のリモートワーカー292人を対象に実施。

リモートワークにはコストがかかる

リモートワークには金銭的なメリットが多いイメージがある。

たとえばワーカー個人にとっては、ランチや飲み代といった外食費が減る、通勤のための服代やメイク代が浮く、場合によっては通勤交通費の負担が軽くなるなど、日々発生していた出費が抑えられる。

企業もまた、社員の通勤交通費支給やオフィスの光熱費削減などのコストカットが実現し、小規模企業では「オフィスを持たない」という選択をする企業も出てきている。

〈参考記事〉オフィスは本当に必要か?

ただ一方では、それ以上に出費が嵩むという指摘もある。

そもそも、自宅は仕事をする場ではなかったため、まずは仕事ができる環境を整える必要があり、それにはコストがかかる。また、一日じゅう仕事をすれば光熱費もかかる。仕事の合間のランチも、社食や仕出し弁当で安く抑えられていたのに対し、コンビニ弁当や宅配などを利用することでかえって食費がかさむ場合あるなど、トータルで出費が増えてしまうこともあるようだ。

新型コロナウイルス感染拡大でリモートワークを導入した企業も多く、さらにリモートワークの長期化で社員からの不満も漏れ聞こえてきた現在、リモート手当を支給する企業も増えてきている。『企業からのリモート手当に関するアンケート調査』の結果から、リモート手当の現状と課題を考察する。




7割以上がリモート手当有り
月額1,000円~5,000円未満が最多

調査では、リモート手当が支給されているかどうかと、その月額を聞いている。その結果、「なし」は24%で、7割以上はリモート手当の支給を受けていることがわかった。

新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークが急速に進んで約1年。多くの企業でリモートワークによる個人負担が考慮されている印象も受ける。しかしその一方では、4人に1人が手当てなしの状態で、リモート対応の個人負担を余儀なくされている現状も明らかとなった。

リモートワーク導入直後はリモート手当を実施していなかった企業も、リモートワークの課題が明確になったタイミングで制度を整えたり、社員からの要望に応えたりする形で手当の支給に踏み切るケースが増えてきている。今後のさらなる拡充が期待される。

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リモート手当が足りない!
理想金額とのギャップは月額約7,000円

リモート手当が支給されている人に「リモート手当は足りているか」を聞くと、「足りない」との回答が過半数にのぼった。「足りている」と回答した人はわずか16%で、企業が支給する手当以上のコストが発生している状況が伺える。

また、リモート手当の平均支給額(月額)は3,683円であったが、理想額の平均は10,676円。その差は約7,000円に達した。

調査では、リモートワークでかかるコストについて、以下のような声が寄せられている。
「新しい机や周辺機器を買って、5万くらいかかった。手当は1万5千円」
「機材の購入費や通信費は自費。暖房をつけっぱなしなので電気代が高くなった」
「ずっとパソコンとエアコンを使っているので電気代がすごい。社食が利用できず食費も上がった」

環境整備のための初期費用、電気代や通信費などのランニングコストが大きな負担になっていることがわかる。機材購入費や通信費はもちろん、業務効率や体調管理を考えると、デスク・イスの購入費や冷暖房代も必要経費であり、月3,683円で賄うのは極めて困難なことだろう。

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新しい働き方で高まる不満に
企業は本気で向き合う覚悟を

これまで、「働く環境を整える」という責任は企業が負い、企業もワーカーもそれを当たり前としてきた。だからこそ、リモートワークの環境整備に対しても、企業側の対応に期待が寄せられている。ただ今は、新型コロナウイルス影響下での急遽の対応であるため、制度の確立が追いついていない現状があるだろう。また、リモートワークを「暫定的なもの」と考えている企業が対応を躊躇していることも推察される。

リモートワークを新型コロナウイルス収束までの「暫定策」とするか、働き方改革を鑑みた「恒常的な策」とするか。企業によって判断が分かれるところだが、いずれにしても先行きの見えない現状において、思い切った判断ができない、という企業も多いのではないだろうか。

しかし、外出自粛が長引き、リモートワーク期間が約1年に及ぶワーカーも多いなかで、個々人での対処に限界を感じていることは間違いない。環境整備のための初期投資や、通信費・光熱費などの金銭的負担はもちろんのこと、不十分な環境下での労働で心身に負担を感じているワーカーも多く、不満が高まっている可能性も大いにある。

リモート手当の拡充は、実質的な金銭的負担解消につながるだけでなく、企業側の誠意として好意的に受け止められ、ワーカーの満足度向上に一定の効果が期待できるだろう。

不十分な仕事環境は、業務効率やモチベーションの低下、ひいては会社へのエンゲージメントの低下にもつながる。「コロナ禍だから今だけ耐えてほしい」という企業側の姿勢は、もう通用しない時期にきている。長引くリモートワークでワーカーの不満が高まっている今こそ、本腰を入れて向き合い、対応するべき時ではないだろうか。


【出典】株式会社PLAN-B カジナビ
『企業からのリモート手当に関するアンケート調査』
作成/MANA-Biz編集部