レポート

2018.02.19

「ファイリング」で「働き方改革」

情報の整理が生産性の高い働き方を促進

ビジネスにおける情報の取り扱いに関して「情報の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」という概念がスタンダードになりつつある。なかでも重要といわれる情報の整理・整頓に役立つのが「ファイリング」。ファイリングとは、簡単に言えば情報を適切に管理すること。ただし「どう取り組めばいいのかわからない」という声や、「やらなくてもいいのでは?」といった意見も少なくない。身近なようで意外に正解が見えづらいファイリングについて、取り組む意義や具体的なノウハウを紹介しよう。
※本記事は、「KOKUYO 2018 WORKSTYLE FAIR」(2017年11月開催)におけるショートセミナー「ファイリング(情報の5S)による業務効率アップセミナー」(講師:コクヨワークスタイルコンサルタント 古川貴美子氏)の内容をまとめたものです。

紙の資料の整理は
置き方がポイント

まずデスク上の書類は、ファイルボックスなどを活用し、左から活用頻度の高い順に並べるといったルールを決め、立てた状態で整理するのが基本です。横積みにしておくと取り出しづらいうえ、高く積んだ資料が雪崩を起こして周りの人に迷惑をかけることに。書類の並べ方は周囲のスタッフと共有し、どこに何があるかわかるようにしておくことも大切です。書類は自分が使うだけではなく、会社の資産でもあります。「自分が把握していれば大丈夫」と思っていると、欠勤したときに周囲の人が困ることも。引き出しやキャビネットの中の書類も、優先度の高いものを手前に、立てて並べましょう。

デスクや引き出しからあふれた資料を足下に置くのはNGです。足下が狭いと、デスクに向かう姿勢が悪くなって呼吸が浅くなり、脳に酸素が届きにくくなるため、集中力低下などの不具合が起こってきます。

紙の資料は、情報をきちんと共有するためにデスク上や引き出しに置いたままにせず保管スペースに移動させ、保存期限を過ぎたら廃棄していきます。保存の際には、ファイルの背表紙に廃棄年月を書いておくと、ドキュメントライフサイクルの循環に役立ちます。

「また使える機会があるかも」と感じた資料は、廃棄を保留する「迷い箱」に入れておくとよいでしょう。ただし、この箱の中身も定期的にチェックし、必要か不要かをジャッジしましょう。箱にしまったままだと、そのまま使わずに置いておくことになり、ムダなスペースを取ることになります。

なお、ペーパーレスワークスタイルを進めるにあたっては、紙の資料を電子データ化していくだけでは不十分です。いくら電子データ化を進めても、例えば会議のたびに資料をプリントアウトして配布していては、全体的な紙の分量は増えていくからです。会議資料の打ち出しをやめるなど、「そもそも紙を発生させない、ストックしない」スタイルに変えていくことが求められます。



電子データはネーミングを
ルール化する

電子データの整理整頓や管理でポイントになるのは、フォルダやファイルの名前のつけ方です。「日付を前につけるか後ろにつけるか」など名づけ方のルールが各自バラバラだと、他の人がつくった資料を探すときにどのフォルダにどのデータが入っているかがわからず、いちいちダブルクリックして開かなければならないため時間もロスしますし非効率です。ですから名前のつけ方は、周囲の人とルールを統一しておきましょう。一般的にファイル名は、時系列順に並べたいなら日づけを前、種類順に並べたいなら日づけを後ろにつけるとスムーズです。

どれが完成品でどれが作業中のものなのかも、名前か日付を見れば一目でわかるようにしておくことが必須です。なお、デスクトップ上にフォルダとファイルが混在していると、必要なデータを見つけるのに時間がかかってしまいます。格納すべき領域内に、案件ごとにフォルダにまとめるなどして、探しやすくなるような工夫を加えたいものです。

ファイリングで目標としたいのは、「1分以内に必要な情報がどこにあるか思い出せる」こと。一人ひとりが取り組んでいけばグループの作業効率が上がり、ひいては企業全体の生産性向上につながっていきます。ただ、それぞれの取り組みは決して難しくないものの、地道で手間がかかるのは事実です。『今月はデスク周りのすっきりキャンペーン』『朝礼後の5分間だけ、電子データのタイトルをルールにしたがって変更』など、すぐに手をつけられることから、達成しやすい目標を設定して始めてみてはいかがでしょうか。

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古川 貴美子(Kimiko Furukawa)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1級ファイリング・デザイナー / 電子ファイリング検定A級 営業企画部門・マーケティング部門を経てワークスタイルコンサルティング部門に所属。 主に、ファイリング(情報の5S)コンサルティング、オフィスの運用改善コンサルティングを 担当し、お客様の働き方改革をサポート。2018年発刊「コクヨ式整理術」一部監修。

文/横堀夏代 撮影/MANA-Biz編集部