仕事のプロ

2015.11.10

女性ビジネスリーダーという働き方

ワークスタイル情報/「学ぶ」と「働く」を両輪で

もっと自分らしく、自信を持って働きたいワーキングマザーに向けて、様々なワークスタイルを紹介するワークスタイル情報編。
今回は、女性ビジネスリーダーの育成を目的とした「日本女子経営大学院」の代表理事を務める河北隆子さんに、女性リーダーという働き方から拡がる可能性について、お話を聞きました。

バランス感覚に優れた女性リーダーを
増やすことが社会のイノベーションに
――河北さんは日本女子経営大学院を設立し、女性リーダーの育成に取り組んでいらっしゃいます。まずは設立の背景をお教えください。
一つには、「外側からも内側からも既成概念にとらわれている女性を解放したい」と感じたことがきっかけになっています。近年は、社会全体に「女性を管理職やリーダーに引き上げていこう」という気運が高まっていますよね。にもかかわらず、日本の企業では、女性の登用がまだまだ進んでいません。その原因は、企業文化や男性の意識だけでなく、女性の意識そのものにもあるのではないかと思ったのです。「職場で男性をサポートするもの」という固定観念にとらわれているのか、議論の場などで一歩引いてしまう傾向が女性側にもありました。以前の私自身にも、そういうところがあった気がします。
――管理職に抜擢されても、「今のままで十分」「こどももいるし私には無理」と辞退する女性は多いと聞きます。
管理職として活躍する姿を想像できず、自分を限定してしまうわけですね。でも、女性が今まで置かれてきた職場環境を考えれば、無理もありません。ロールモデルとなる女性管理職が周りに少ないため、イメージがもちにくいですね。そもそも、女性リーダーに対する期待が薄く、全体として管理職不足は否めません。 自分の裁量でできることが増えればもっと楽しい世界が拡がるかもしれないのに、知識や情報、視点が低く、自分の可能性を自ら狭めてしまっているんです。「大きな強みをもつ女性を社会資源として活用しないのはもったいない」という問題意識が、大学院設立のきっかけになりました。
――河北さんが考える「女性の強み」とはどんなところですか?
女性は「マルチタスクが得意」「調和させるのが上手」という大きな強みをもっていると思います。仕事をしながら子育てをして、自分が楽しみながら企業に利益を与えて、二者択一な考え方をしがちの男性にはないバランスの良さが、女性にはあります。これまで男性が中心になって動かしてきた日本社会は、経済や生産性にフォーカスしがちでした。でも今の時代、一つの価値観だけでよりよい社会をつくることはできません。そんななかで、女性リーダーが増えることが、会社をイノベーションする触媒になるのではないでしょうか。そこで私たちは、よりよい社会づくりに貢献するため、女性リーダー育成の場を立ち上げました。
授業で学んだことは
仕事の場で実践して気づきを得る
――女性が経営を学べる場は増えていますが、日本女子経営大学院ならではの特徴は?
特に評判がいいのは、「パワーメンターサポート」というシステムです。当学院では、企業で活躍する現役女性トップリーダーに、「エグゼクティブメンター」としてご協力いただいています。入学式では、この女性たちがパネルディスカッションを行い、自分のライフストーリーや失敗談、ワーキングマザーとして悩んできたことなどを率直に語ります。雲の上の存在だと思っていた女性たちが自分と同じ悩みを抱えてきたことを知って、涙ぐむ受講生もいますよ。
――キャリアに関する悩みは、一人で抱え込んでしまいがちですよね。自分の力で道筋をつくってきた女性たちの話を聞けたら、勇気がわきそうです。
そのほかに、受講生の少し先を行く存在として、「フロンティアメンター」という多様な業界で活躍する先輩女性リーダーもいます。カリキュラムの中には、フロンティアメンターに個別の悩みを相談できる場もあります。メンターとのやりとりでこれまでもっていた認識を揺さぶられ、一皮むける受講生がたくさんいます。
――カリキュラムや授業内容にはどんな特徴がありますか?
次世代リーダー育成のためのプログラムですから、組織・人材マネジメントやロジカルシンキング、ファイナンスや経営戦略まで、偏りのない内容を心がけた構成になっています。講師陣も、大学教授から企業人、個人のコンサルタントなど多彩な方々にお願いしているため、6か月の受講期間で、大きく視野を広げることができるはずです。そして大きな特徴といえるのが、多くの科目は「学んで終わり」ではないこと。学びを深めたり、統合したり、職場や家庭に持ち帰って実践してもらい、活用・応用するところまでがワンセットになっているので、受講生は現実社会で学びを生かすスキルを身につけることができます。
ダイバーシティーのある環境が
自分を客観視する手がかりに
――受講生はどんな人が多いですか?
企業から管理職候補として派遣されてくる女性もいますし、キャリアアップを考えている方、企業のための明確な問題意識をもった方や、漠然と自分を変えたいという方など様々ですね。社員を当学院に送り込む企業様の意図としては、「メンター制度や共創コミュニティーを活用など、社外の人脈から視野を拡げてほしい」という期待もあるようです。年齢も二十代から五十代まで幅広く集まります。ワーキングマザーも多く、こどもを預けて地方から参加されている人もいました。「遠慮せず自分を解放できる」という意味で女性だけの学びの場をつくったわけですが、立場や年齢、職業はさまざまで、ダイバーシティに満ちています。
このような環境のなかで、グループワークなどを通して自分と相手の違いを客観的に見ながら学べるところも特徴ではないかと思っています。受講生同士は、「共創コミュニティー」というコミュニティーシステムをつくっています。Facebookを活用して相互の気づきや問題意識を共有・解決したり、チームで卒業制作を行ったりして、コミュニティーシップを高めながら学び合っています。
――学ぶカリキュラムもサポート体制も、環境も魅力的ですね。でも、卒業後に学ぶ場を離れてしまうと、モチベーションが下がるのではないかと気になります。
卒業後には、ウーマンズイノベーションクラブ(WIC)というOGコミュニティという場があり、交流の場やオープン講座、実践事例のアワードなどを用意しています。コース期間中は女性だけの環境で学びますが、卒業後の講座には男性も参加し、より多様な個性や意見を生かし合って学びます。そのほかにも、卒業生同士で声をかけあって勉強会なども行っているようです。働くことでいっぱいいっぱいにならず、積極的に学ぶ姿勢を身につけてくれたんだな、とうれしい限りです。
――最後に、女性の働き方と学院の役割について、今後の展望をお教え下さい。
職業能力開発促進法が改正され、働く人が自律的に学んでキャリアをつくる時代が到来しています。日本ではどちらかというと、働くことと学ぶことを分けて考える傾向がありましたが、今後は働き続けるために学び続けることが大切になってきます。そこに当学院の役割があります。家庭と仕事以外に学びの場をもつことで、女性は学んだことを仕事や家庭に活かし、生き生きとキャリアをつくっていけるのではないでしょうか。私たちはそんな女性を今後も応援し、5年間で500人の女性リーダーを養成する目標を抱いています。
ビジネススキルの講義風景。ペアワークなどの演習もあり、現場ですぐに使える実践的な内容に、受講生も熱心に取り組みます。
卒業生の声
「トライできる自分」になった
株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部 システム方式技術事業部 課長代理 岡田百世さん
職場の上司から日本女子経営大学院のリーダーシップ養成総合コースを紹介され、参加の打診を受けました。こどもが2人いることもあり、社内で自分にとって挑戦的な仕事や資格取得を薦められても前向きになれなかった私。でも、そんな働き方に停滞感を感じてもいたので、自分を変えるきっかけにしたくて、受講に手を挙げ、会社から派遣されました。
学んだ一番の収穫は、「言い訳をせずどんなことにでもトライしよう」という気持ちになれたこと。「ストレングス・リーダーシップ」という科目を通して自分の強みを客観視したり、起業した女性から話を聞いたりするうちに、自分で限界を決める必要はないんだ、と認識を変えることができたのです。
卒業後も、元同級生たちと交流する機会をつくっています。切磋琢磨し合ってきた仲間に会うたびに、コース受講中に芽生えた前向きな気持ちが呼び覚まされ、すっと背筋が伸びる思いです。
真剣に学ぶ仲間たちの存在が刺激に
株式会社AppBroadCast 取締役 佐伯英恵さん
2013年に、スマホゲームの集客支援事業を行う会社を起業しました。その翌年に第一子を出産したのですが、復職してから仕事に悩む場面が増えました。私は取締役として株主とのやりとりや経営企画に携わっているのですが、経営者側の視点を持ちきれず、自信がないまま事業を推進していました。そこで、「会社と共に成長していくために、経営の勉強をしなければ」と考え、日本女子経営大学院で学ぶことに決めました。
授業で学んだ内容は、職場に持ち帰って実践しました。例えば「マネジメント基礎力強化」という科目ではスタッフとの接し方を学んだので、会社で試して「いったん相手の意見を受け止めた方がうまくいくんだな」などと自分なりの気づきを深めました。
最大の成果は「働く覚悟」ができたこと。実をいうと受講前は、「私は経営側の器じゃない」と2週間に1度は落ち込んでいました。でも、講義を聴いてインプットし、課題を通じてアウトプットする繰り返しのなかで、自分のなかでじわじわとマインドの変革が起こってきたのです。真剣にビジネスを学ぶ仲間たちの存在も、覚悟を後押ししてくれました。今でもたまに弱音を吐いてしまうことはありますが、そのたびに、学校で出会った仲間の活躍を想い、「自分もまだまだできる」と奮い立たせるようにしています。

日本女子経営大学院

女性リーダーを育成するための専門プログラムを提供するビジネススクール。多彩な管理職・起業家の先輩女性によるサポート体制や、実践的なリーダーシップ教育コンテンツが充実している。組織や業界を超えた受講生が集まり、フラットに学び合えるのも大きな魅力。

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文/横堀夏代 撮影/石河正武