仕事のプロ

2013.09.17

笑顔で働くワーキングマザーを増やしたい

Vol.2 気持ちをラクにして働くことを楽しむ

フードエディター小竹貴子さん
株式会社クックパッドで編集長、執行役を務め、2012年に独立。2010年に「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」受賞。現在、ホクト株式会社、社外取締役を務める傍ら、料理関連のwebサイト構築や編集ディレクションを手がける。講演会などでも活躍し、働く女性を取り巻く環境や世論を変えるために奮闘中。4歳・0歳女児の母。

インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(2歳児のワーキングマザー)

仕事と子育てのバランスは「常に50:50」でなくていい
――第一子を出産された2009年は、クックパッドが東証マザーズに上場した時期と重なりますね。小竹さん自身も執行役もなさることになって、慌しい毎日だったのでは?
そうなんです。3か月半の育児休暇から復帰した後は、毎日いっぱいいっぱいでした。子育てはもちろん初めてですし、今までとは違う立場から会社の成長に関わっていかなければならないわけですから。

――それまでに、育休から復職した人が会社にいましたか?
それが・・・全く前例がなくて、どんなふうに両立したらいいかわかりませんでした。だから、出産前と同じように長時間かけてアウトプットを出す働き方しかできなかったんです。とはいっても、夕方5時にはこどもを迎えに行かなければならない。帰宅してこどもを寝かしつけてから、深夜までメールのやりとりなどの仕事をしていました。

――私も今は時短勤務なのですが、出産前より働ける時間が減った分、アウトプットの質も下がってしまうんじゃないか、という焦りがあります。
私は結局、時間に頼る働き方をするやり方にとらわれすぎて成果がなかなかでず、苦しい思いを何度もしました。
今になって考えてみると、効率的に仕事をしたり、自分にしかできない働き方を探したりするべきだったな、と反省しています。確かに、周りにはロールモデルになる人がいなかったけれど、だったら社外の人に話を聞いたりすることもできたんですよね。

――あ、それはアリですね!
今は、子育てで迷ったら、年上のワーキングマザーに話を聞きに行きます。いろいろな方に話を伺い、複数方をロールモデルにして、自分の状態に合わせてそれぞれのいいところを参考にしています。でも、こんなふうに気持ちの余裕ができたのも、クックパッドを卒業して、ゆったり仕事ができる環境になったおかげだと思います。

――独立なさったのは2012年で、2人目のお子様が生まれた頃ですね。
次女が0歳児のうちは、自分のキャパシティーから考えると緩やかに仕事をしていく予定です。あるワーキングマザーの先輩から「仕事をがむしゃらにする時期と、こどもにしっかり向き合う時期があっていい。60歳まで働くんだから、人生という単位でワーク・ライフ・バランスを実現すればいい」とアドバイスをいただいたことがあって...。

――ワーク・ライフ・バランスって、1日とか1週間単位で考えがちですよね。
そう。でも、その方と話して「いつも50:50じゃなくていいんだ」と気づいたら、スッと心が楽になりました。

忙しいワーキングマザーだから家事にもメリハリが肝心
――バランスを取らなくてもいい、というのは、育児や家事でもいえることでしょうか?
ワーキングマザーは、こどもと過ごせる時間が少ないですからね。日々の生活でやらなければいけないことを、こどもと共有するのが一番ではないかと思います。いわゆるお手伝いになるかと思いますが。 私の場合はやはり料理。離乳食も大人向けの食事と同時につくるので、段取りを頭の中で考えるのも楽しいんです。長女には包丁の使い方を教えたり。
料理以外に関しては、洗濯は主人に任せたりして、きっちり分担しています。
――ご主人の家事を見ていて、口出ししたくなることってないですか? 「干す時はきちんと伸ばして」とか・・・。
あーそれは、言っちゃダメでしょ(笑)。主人も本当は言いたいことはたくさんあるでしょうし。
――何もかも完璧にやる必要はない、と考えると楽になれますね。
メリハリを意識すると、両立はしやすくなりますね。ただ、最大の敵と闘わなければならないんですけど。
――最大の敵?
自分自身の母性本能です。こどもの泣き顔を見たりすると、もう切なくなって「1日中一緒にいたい!」と思ってしまうんです。そんなこどもを保育園や幼稚園に預けて働くわけですから、本当に好きな仕事じゃないと続かないと思います。
初めての姉妹での夏。上の娘が姉っぽく成長していること嬉しく思いました。
料理が大好きだから、鍋やお皿にもこだわって使っています。


――しかし全部が全部、楽しい仕事ばかりではないと思いますが・・・。
そうですね。楽しくないときもあると思います。そんなときは、その仕事全体の成功イメージをもってムフムフするのが一番ですが、私はお給料日をイメージしたりしていますね(笑)。
――最後に、ワーキングマザーにエールをお願いします。
私もそうだったのですが、「先に帰らなくちゃいけなくて申し訳ない」みたいな感じで、周りに遠慮してしまう人が多いと思うんです。もっと図々しく、とにかく楽しく働いてほしいですね。遠慮していると自分だけでなく、一緒に仕事している仲間にも迷惑がかかってしまうと思ってほしいです。
笑顔で働ける女性が増えるよう、私も講演会で発言したりすることで、社会の認識を変えるお手伝いをしていければと思っています。

小竹さんの1日

5:00 起床
朝食&お弁当づくり
7:00 家族そろって朝食
(ご主人が娘さんたちを保育園&幼稚園に送り届ける)
8:30 仕事
企画書はオフィスや都心のカフェ、料理エッセイの執筆は自宅...など仕事の内容に合わせて場所を変えることも。
18:30 保育園&幼稚園のお迎え
19:30 夕食
20:30 入浴
21:15 こどもたちといっしょに就寝
〆切などがあればその後も起きて仕事。それでも「0:00までに就寝」をルール化。

取材を終えて

小竹さんのようにこどもが生まれるまでバリバリ仕事をされていた方は特に、それまでの仕事スタイルに無理に合わせるのではなく、ワーキングマザーとしてベストな働き方を自分なりに見つけていくことが重要だと実感しました。人生単位でのワーク・ライフ・バランス、遠慮は誰にとってもよいことではない、というお話はワーキングマザーとして仕事をしている私の心にもスッと入ってきて、気持ちが楽になる言葉でした。(河内)

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ